【神戸ソーシャルセミナーwith 株式会社NOTICE 布谷由美子氏、灘中学校・高等学校教諭 片田孫朝日氏(2019.3.6)】

【神戸ソーシャルセミナー】『ジェンダー平等』(2018. 03. 06) 

 

毎月1回、そのテーマのゲストを迎え、セミナー参加者が地域社会の問題発見・解決について考える「神戸ソーシャルセミナー」、3月のテーマは『ジェンダー平等』です。

 

「ジェンダー平等ってなんだろう?」

「ワークライフバランスって聞くけど、ジェンダーとどう関係があるの?」

という疑問をもたれている方はいらっしゃるのではないでしょうか。

 

今回のゲストは、株式会社NOTICE 布谷 由美子氏

灘中学校・高等学校 教諭 片田 孫 朝日 氏

このお二人をゲスト講師として迎え、

前半は布谷さんがジェンダーとワーク・ライフ・バランスの関係について、

後半は片田さんが男性学の視点からジェンダーを語っていただきました。

更にセミナー後、お二人にインタビューし、「実社会とのギャップ」などを中心にお話をお聞きしました。

 

□ワーク・ライフ・バランスとジェンダー

“宝塚市男女平等共同参画センターにて女性の就労支援をしていたという経歴の布谷さん。2012年には会社を設立し、ワーク・ライフ・バランスや女性活躍推進の観点から女子限定の「中小企業合同説明会」も主催されています。”

 

――“女性”に力を入れて活動されていますね。

布谷)女性が働くことが疑問視された前の時代。今では、多くの女性も働いています。にもかかわらず、就活などで女性差別が行われています。また、「育児・家庭は女の仕事」といった社会通念が女性に対して残っています。

 

――社会は変わりつつあるが、価値観が変わらないという現実。

布谷)大介護時代に突入し、介護離職など時間制約を抱えた男性社員も増えている日本社会で、男性も女性も働きやすい社会をつくることが重要です。少子高齢化社会が抱える課題に「人口・労働力バランスが崩れる」ことが挙げられます。ノルウェーでは、女性が働きやすい社会環境を実現させ、出生率の向上・女性の継続就業を実現しました。

 

――なんのために女性が働きやすい社会をつくるのか、ということですね。今後求められる社会の形とは?

布谷)時間制限があっても誰もが活躍できる社会が求められています。日本は労働生産性がなんと21位です。女性登用などの*アファーマティブアクションが必要です。評価の基準を「時間当たり生産性」にしなければなりません。成果制だと、際限なく働ける人だけが評価されてしまいます。今後は、男女ともに働きやすい社会にしなければなりません。

*アファーマティブアクションとは、人種・性別などによる社会的差別を改善し雇用や教育などにおいて優遇処置をとること。

 

――社会が変われば、人々もそれに合わせた働き方に変えなければならない。

布谷)労働力人口として外国人労働を拡大していますが、これは男性型の働き方を助長してしまい、長期的な視点で考えると「誰もが活躍できる社会」への根本的な解決策ではありません。これらを背景に、「なぜ女性が働きやすい社会が必要なのか」を社会全体で考える必要があります。

 

――ありがとうございました。

 

 

「男らしさのアップデート」 灘中学校・高等学校 教諭 片田 孫 朝日 氏

 

□男性のワーク・ライフ・バランス

男性学とは、もともと女性学をベースにしていると言われています。「(女性への)社会の抑圧」が同じように男性にもあてはまることから、「男性の解放/自由」を研究する分野です。抑圧され方は違っても、社会から抑圧されることは男性も女性も共通するということです。

 

――なぜ男性学だったのでしょうか?

活動家の父と、移民の母に育てられました。主に家計を支えていたのは教師である母でした。

 

――幼いころから、「男は仕事、女は家庭」という一般的な概念がなく、「働く父の姿」を見ずに育った家庭環境だったんですね。

学部生時代に田中美津さんの著書を読み、『個人的なことは政治的なことだ!』ということに感銘を受けました。

 

□アンビヴァレントな(相反する感情をもつ)男たち

男性のライフステージ(就職・仕事・結婚・家庭)が一般化され、大衆にもそれが受け入られ、「男性の生き方」が規定されてすぎている日本では、“仕事”を引き受けることが男性の役割と考えられ、男性自身もそのことを内面化しています。そうした男性の生き方を規定する「男性モデル」は危険性を抱えています。

 

――男性学を研究するキッカケはなんでしたか?

わたしの仕事観は「仕事は労働。労働だけが人生ではない。短い時間で済むなら、その方がいい。仕事だけで人生を終えず、人生を自由に生きたい。」と考えています。

 

――「仕事=人生」仕事が人生の全てではなく、「人生≠仕事」人生の一部が“仕事”と考えられているのですね。

 

――型にはまらない家庭で育った幼少期。子供のころから「型にはまらない父親像(=男性像)」を見てきた一方で、自分が社会の男らしさ像にギャップを感じたことはありませんでしたか?

子供の頃から身体が細く、男らしさに何らかのコンプレックスは感じていた。ただ、自分には勉強ができた。「ある・ない」論ではなく、自分の個性として考えるかどうかが大事。

 

――「しなければいけない」を男性が背負いすぎている。

今は人も物も十分なほどあふれている。男性だけの労働は必要ではなくなってきている。

「男はつらい」(もちろん男性だけが働いている訳ではないので、男もつらいですが)ということを話せる社会が必要である。

 

――「男らしさ」の危険性とは何でしょうか?

男性同士はお互い話さないことが多い。交際していた彼女がとても話すので驚いた。男性の場合、話すことは弱さをみせることだと考える。

自らの男らしさに縛られ身動きがとれないのが今の現状であり、若い世代の価値観ではもうない。

 

――話したいのに話せない、アンビヴァレントな男たちということですね。30代男性の自殺率が上がっているのも、「男は〇〇であるべき。」ということが男性の首を絞めているということですね。

なぜ男ばかりがここまで働くのか。日本とドイツを比較すると、ドイツ人が仕事に効率性を求めるのに対して、日本人は“時間をかけてより良いものを作る国民性”があるからです。

 

ドイツでは「仕事は楽しいが、家族が一番大切。」と考えます。そういった仕事観に対しては日本とドイツでは大きく異なります。

 

――日本の法律は男性を世帯主として作られています。家事代行・育児代行が十分ではない社会では男性が労働に専念し、女性が家事労働に専念するため性別分業が発生しやすいそうですが。

男性には自立が求められます。それは家族を養うためです。なので、道を外すことができない男性が増える、というコンプレックスを抱えています。

 

 

 

講演終了後、セミナーに参加していた学生にインタビューしました。

 

――登壇者のお二人に質問されていた内容について少しお聞かせください。

高松)“生産性”という能力に評価基準が置かれていることに疑問を感じ、生産性だけではない、その他の評価基準があってもいいのではと感じお二人に質問しました。片田さんが言うように、そこは公平性であると認める。それよりも、会社以外にコミュニティをもつことが大事だと。会社の評価は生産性のみ。生産性以外で承認(評価)を得ることが大事。

 

――評価基準と承認の関係性はとても大事ですね。ありがとうございました。

 

□セミナーに参加してみて

学生ライターのカタノです。今回のテーマはジェンダーということで、この記事を読んで初めて知ったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。ジェンダーとは、「男女の関係性」と定義されていますが、最近では、男女に限定せず「社会的・文化的な性別のあり方」と考えられるようになっています。登壇者お二人も、ジェンダーを通じて、「社会と男性/女性のあり方」を再提示されたのではないでしょうか。私も日本人の男女を対象に卒論のテーマを「就労価値観に反映されたジェンダー観の調査」にしました。今回は、貴重な話を聞けてよかったです。