【神戸ソーシャルセミナーwith ウィメンズネット 正井禮子氏、ひょうごコミュニティ財団 実吉威氏(2019.3.27)】

神戸ソーシャルセミナー、今月のテーマは「ジェンダー平等」。今回は正井さんと実吉さんお二人から暴力とジェンダー、またその支援団体についてお話していただきました。

 

*正井禮子さん

NPO法人女性と子ども支援センターウィメンズネット・こうべの代表正井禮子さん。阪神淡路大震災の際に「女性支援ネットワーク」をつくり女性のための電話相談で6割が震災のさなかに夫や恋人からの暴力に悩んでいるという内容であったため、疲弊した電話の向こうの声に「ここへおいでよ」と言える場所をと、2004年に設立。2007年には正式にNPO法人として認証されました。男女共同参画ではなく、男女平等社会を築きたいと活動しています。

今回正井さんには中学校や高校での講演でも使っているという資料を用いてDVの現状について教えてくださいました。

 

〇DVについて

現在国の法律でDVとは「配偶者からの暴力」と定められています。正井さんはそれに加え恋人からの暴力もDVであるといいます。アンケートの結果から日本では女性の3人に1人がDV被害を受けたことがある事がわかっており、その中でも15%の人たちが命の危険を感じる程の被害を受けたことがあると回答しているそうです。またDVの被害を受けた女性の40%が誰にも相談せず、多くのひとが「相談することでもないと思った」と回答していることからも問題の根深さが分かります。

 

〇パワーとコントロール

暴力をふるう人は暴力の対象となる人物に対して「自分の所有物」だと思っていることが根底にあると正井さんは言います。更に「自分の方が偉い」という主従関係を勝手につくり、それが「相手をコントロールするための暴力」という行動に出るそうです。DVは「力による支配」「パワーとコントロール」のことであると教えていただきました。また暴力は自分が見下している相手にしかしないため、加害者は社会的に評判もよく、きちんとした人が多いそうです。「誰にも相談できない」という被害者が多い理由のひとつだといいます。

 

〇言葉の暴力もDV

DVと聞くと殴られたり蹴られたりするなどの、直接的な暴力を連想する人が多いと思いますが、正井さんは「相手の言動に恐怖を感じたらそれは暴力、DVである」という事実の危険性をおしゃっていました。自身が相手からの言動や行動によって「自由がない」「窮屈」と感じることは全て暴力に繋がることであり、恋人や配偶者からの「束縛」、言葉の暴力はDVにあたるといいます。

 

〇暴力のある環境で育つ子どもたち

DV「家庭内暴力」はそのまま児童虐待になることも忘れてはいけないと正井さんは強くおっしゃいます。お母さんが、お父さんが、殴られている、酷い言葉を浴びせられている。そのような環境で育つ子どもは本来心身ともに休息できる場所でなければならない家庭で安心できません。直接的な影響の例として自尊感情の低下、多動・学習困難、暴力でものごとを解決しようとするなどの問題行動があげられます。更にDV環境で育った子どもたちは「自分もお父さん/お母さんのようになるんだ」「だから、自分は家庭を持てない。持ってはいけない」と思いこんでいる事が多いといいます。正井さんはそんな子どもたちに学校での講演会などを通して「自分の意思で温かい家庭は築くことはできる」と、その呪縛を解くきっかけになるように、真っすぐな言葉で伝えています。

 

〇子どもを救うには

DVで植え付けられてしまった価値観(他者に暴力を与えてもいい、大人は信頼できないなど)を変える、自分の苦しみに寄り添ってくれる大人が、その子どもの傍にたった一人でもいたらいいといいます。「世の中には恐ろしい事をする大人もいるけど、それが全てではない」と教えてくれるような、自分を気遣って見てくれる大人の必要性をおっしゃっていました。

 

*実吉威さん

ひょうごコミュニティ財団、実吉威さん。ひょうごコミュニティ財団は阪神・淡路大震災をきっかけに始めた活動が前身で、市民の多様な自発的な活動を支える「資金的な基盤」と「社会に貢献したい寄付者」を繋ぐ活動を行っています。今回のセミナーでは主に「有園博子基金」についてお話していただきました。

〇有園博子基金

2017年に逝去された有園博子さんは生前、臨床心理士、精神保健福祉士として性暴力やDVなどの虐待を受けた、深い傷を負った方々にカウンセラーとして支援をし続けた方です。「遺贈」とは「自分が亡くなった後、資産を〇〇へ寄付します」と遺言書で贈与する仕組みのことです。有園さんは病の中、亡くなる三日前に実吉さんを病室に呼び、弁護士数人を介して知った「ひょうごコミュニティ財団」に寄付を任せたそうです。

対象となる助成分野は「DV被害者への支援」「虐待を受けた子どもへの支援」「性暴力による被害者への支援」「JR福知山線脱線事故ご遺族への支援」です。基本は現場で活動しているNPOへの支援となっています。有園さんはその団体がなくなったら多くのひとが困るような、現場でかけがいのない活動をしている団体を支援したい。また組織の活動の専門性を高めたり、もっと厚みを持った成熟した団体になるようにと、そんな想いから寄付をされたそうです。

この基金はお金を提供するだけではなく、共通での人材育成や横のつながりをつくり、一つの団体ではできないことができるようになるきっかけになればと活動を進めているといいます。これから十年弱続く予定の「有園博子基金」。団体同士のネットワークを築き、より良い社会の基盤になったらと、そんな基金を目指しているそうです。

 

 

〇イチ学生の所感。

「言葉の暴力もDVになる」これはDVという問題がかなり身近であることを認識させられた話でした。言葉での暴力は目で見える形の傷にならないため、そのひとにしか痛みは分かりません。だからこそ「自分が弱いから」「自分でなんとかできる」と思いがちだと感じます。直接的な暴力を含めて、「自分」がどう感じたか、感情の基準は常に自分であってほしいと思います。

家庭のことは本人にしかわかりません。変に相談をして、自分の両親や配偶者が悪者扱いされるのは違うし、でも自分が傷ついた気持ちを誰かに伝えたい。そんな思いを吐露できる場所が社会にあるのは、非常に心強く思います。正井さんのように現場で働くひとがいて、実吉さんのようにその活動を支えるひとたちがいる。この事実がDVによる被害で孤独を感じている人たちに届き救いになればと思います。(学生ライター関口)