【神戸ソーシャルセミナーwith 認定NPO法人テラ・ルネッサンス 栗田佳典氏(2019.4.10)】

神戸ソーシャルセミナー、2019年4月のテーマは「平和と公正」

4月10日には、「小さな一歩が世界を動かす~紛争に巻きこまれた世界の現場から~」と題して、認定NPO法人テラ・ルネッサンスの栗田佳典さんよりお話を頂きました。

中二の多感な時期に先天的な心臓の病気で入院した栗田さん。その時にさまざまな人に支えられた経験から「福祉」に関心を持ち、大学で福祉を学ばれていました。大学3回生でテラ・ルネッサンスでのインターンを経験し、就職され、現在に至ります。

今回はご自身の体験も踏まえながら、テラ・ルネッサンスの活動内容、紛争地域の実情などをお話しいただきました。

〇「レリジエンス」という考え方

はじめに、栗田さんはあるキーワードを出されました。それは「レリジエンス」という考え方です。この言葉は、一般的には「回復力」「復元力」「弾力性」という意味ですが、テラ・ルネッサンスでは「困難な状況に直面しても、自らに内在する多様なチカラと、周囲との関係性のなかでそれを乗り越えていく適応能力」という意味で用いられています。

 

〇平和の一歩としての三つの「カンシン」

また、平和への一歩として三つの「カンシン」を挙げられました。

「知る」という意味の「観心」、「感じる、考える」という意味の「感心」、「関わってみる」という意味での「関心」。この三つを平和への大きな一歩として大切な考え方として紹介されました。

 

〇テラ・ルネッサンスの活動

テラ・ルネッサンスでは日本、コンゴ、ウガンダ、ブルンジ、カンボジア、ラオスといった地域を対象に「地雷」「小型武器」「こども兵」「平和教育」という4つの課題に対して、現場での国際協力と同時に、国内での啓発・提言活動を行うことによって、課題の解決を目指しています。

特に紛争地域の支援の際には「一人ひとりに未来をつくる力がある」という考えのもとで、ただお金を渡すなどの目の前の支援だけでなく、元こども兵を対象した溶接技術の訓練や、性的暴力を受けた女性や孤児を対象とした洋裁技術訓練を行い、収入を得るためのサポートなどを行っておられます。

ここでも「レリジエンス」の考え方は重要で、助けてあげようという気持ちではなく、彼らの中にある力を一つでも引き出して困難を乗り越えていこうとするエンパワメントのための支援を心がけておられています。

 

〇コンゴについて

栗田さんの関わっておられた、「コンゴ民主共和国」は別名「平和以外何でもある国」。

2度にわたる内戦がおこり、さらに現在でも武装勢力がたくさん存在しています。

自然豊かで、熱帯雨林が広がっており、少し移動しようとするだけでも「四輪駆動」の大切さを実感するような沼地のような道を渡ったり、木を切って橋をかけ、川を渡る必要があるために、国内に支援の届きにくい場所が多くあります。

最近では、2018年にデニス・ムクウェゲさんが、「女性として生まれるには最悪の国」と呼ばれるコンゴ国内での性暴力被害の治療が評価され、ノーベル平和賞を受賞されました。また、2019年には、選挙によって野党のチセケディ大統領が誕生し、1960年の独立以来初めて平和的に指導者交代が行われるなどといった明るい話題もありました。

 

〇紛争鉱物について

兵士が小型武器を買うためのお金として使用されているものとして紹介されたのが電子機器などに使用されている「レアメタル」です。その中でも、スズ、タンタル、タングステンなど、「紛争」の原因となるものは「紛争鉱物」と呼ばれています。そのため、現在アメリカでは、電子機器などの紛争鉱物の使用量を報告する必要のある「ドット・フランク法」の制定や、日本では都市鉱山で2020年東京オリンピックのメダルを作る「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」という活動などをはじめとする、政府・企業の努力や、トレーサビリティによって紛争鉱物の使用は緩和されるようになったそうです。

「紛争鉱物」という存在を知ると、「紛争鉱物が使われていないものを使った方がいいのではないか?」という思考に陥ることもありますが、そうではなく「今持っているものを最後まで使い切ることが大切である」とおっしゃっていました。

 

〇栗田さんの体験談

また、栗田さんの紛争地域での体験談もたくさんお聞きすることができました。

栗田さんが武力勢力に襲われた地域を訪れたときのこと。そこにいる子どもたちは「ニーゴ」と栗田さんたちを呼びました。その意味は「国連平和維持軍の兵士」という意味だったそうです。その時の栗田さんの恰好はTシャツに短パン。そこの地域の子どもたちにとって外国人は全員兵士に見えるそうでした。そこの子どもたちに将来の夢を聞くと、「大人になることが将来の夢」という答えが返ってきたそうです。

 

また、コンゴ人は9時集合でも、13時に遅れてくることもしばしば。理由は「昔の友達に会ったんだ。」日本では、「また今度」があると思いがちですが、コンゴでは寿命が短く、次もう会えないかもしれない。一期一会を大切にするコンゴ人の国民性を表すエピソードとして印象に残りました。

 

最後に、栗田さんの約10年前のウガンダでの印象的なお話を聞かせていただきました。

子どものころに誘拐され、子ども兵として闘わされた女性に話を聞きに行った時のこと。その女性の腕には赤ちゃんが抱えられていたそうです。その赤ちゃんのことについて尋ねると、その子はなんとその女性が昨日出産したばかりの赤ちゃん!さらにその女性は栗田さんに「この子に名前を付けて」と言ったそうです。栗田さんは驚きながらも、女の子だったため、ご自身の妹さんの名前を付けたそう。こども兵から技術を身につけ、社会に出て、結婚し、子どもに恵まれたことに女性のことがいることが栗田さんは本当にうれしそうでした。

栗田さんはしばらくその女の子とは会えずにいたものの、昨年久しぶりに再会を果たしました。その時にその女の子に「平和とは?」と尋ねると、「ハーベスト」だと答えたそうです。食べ物があること、おなかがすかないこと、それが平和において大切なことだと認識させられました。

 

 

 

平和について考えたとき、真っ先に思い出されたのが私の祖父の話です。第二次世界大戦を経験した祖父の生きがいは「世界平和」であるといいます。「戦争はあかんということは十分に思たさかい世界平和。」私が祖父に生きがいについて尋ね、そう答えられた時、私はその答えが壮大すぎて、思わず笑ってしまうほどにピンとはきませんでした。しかし今回改めて平和について考えてみると、平和は私たちが自分の命を大切にし、勉強し、バイトし、友だちを遊ぶといった、人間の何気ない生活を営む上で、最も大切な基盤であると改めて気づかされました。

私たちが願わずとも手に入れ、気付かずにいるものを、こんなにも願っている人がいる。その人たちに何かしたい。私は今回紛争鉱物について知ったことで「電子機器を最後まで使い切る」といった行動ができる。このような行動を起こすためには、世界の現状について知らなければならない。考えなければならない。関わらなければならない。

「ひとり一人の力は微力かもしれないが、無力ではない」栗田さんの優しい口調の裏には平和への熱い思いがこもっていたように思います。この言葉を信じて、世界平和という壮大な未来の夢のために、世界を知り、考え、何気ない行動を変えることから始めていきたいものです。