【神戸ソーシャルセミナーwith 社会福祉法人すいせい 岸田耕二氏(2019.5.29)】

神戸ソーシャルセミナー、5月のテーマは「働きがいも、経済成長も」

今回は「社会福祉法人すいせい」の岸田耕二さんから主にすいせいさんの取り組みについて、お話をお聞きしました。

 

◎通所事業(ひきこもり~働き続ける)

すいせいさんは、ストレスマネジメントの技術を精神病者の支援から、そして適職マッチングの技術を発達障害の認知特性から得て、様々なプロジェクトを行っておられます。

すいせいさんの支援の方法の一つである、「Suisei Step Style」では、一人一人に合わせた、オーダーメードの支援が行われており、様々な経験を積み、成長、前進を実感できるようなプログラムが用意されています。

まず、地域活動支援センターで生活訓練を行い、次に社会訓練、自立訓練、そして実習を通して、就労に移行していきます。このように、まずは居場所を作り、生活、仕事へと段階を踏んで支援を行っておられます。

このようなすいせいさんの就労支援を受けた方の90%は1年間、70%は3年間、就労しし続けておられます。

 

◎脳には癖がある?

以下の写真を見てください。

写真のワンピースとスニーカーは何色に見えるでしょうか?私は、ワンピースは青と黒、スニーカーはピンクと白に見えます。しかし、その一方で、金と白、グレーと緑に見える方もいるそうです。

このように、人それぞれ認知情報処理の方法が異なるのです。人の脳には癖があり、特に幼少期に好んでいた遊びによって脳の癖がわかり、適職がわかることも教えていただきました。

 

◎すいせいさんの取り組まれているプロジェクトについて

すいせいさんの現在、取り組まれているプロジェクトを7つ紹介されました。

 

Project1 超短時間就労 働き方改革

これは、今まで行われてこなかった超短時間就労を支援するサービスです。

現在の日本の障害者法定雇用率制度で定められている算定基準は週20時間以上であるため、企業が20時間より少ない時間で人を雇うことはそれまでなかなかありませんでした。しかし、障がい者の方には、週に20時間も働けなくても、超短時間であれば働ける人もおられます。

その一方で、現在、中小企業をはじめとした企業の多くは人手不足です。

このような障がい者の方、企業の互いのニーズをマッチングするのが、この取り組みです。

その方法は、事業者の仕事を細かく洗い出し、本人しかできない仕事、他の人手も可能である仕事に分類し、障がい者の方のできること、向いていることに合わせて、障がい者の方を雇用します。

例えば、タイピングが得意な人とデータ入力に手が回らない企業、手作業とスピードに自信がある働きたい人と出荷作業をしてほしいなどのニーズを持った人手が欲しい企業をマッチングします。

また、業務が完全に終了すれば、それ以上雇用する必要はなく、決められたこと以外はやらなくてもよい、というシステムになっています。

しかしここで、障がい者のやれる仕事と、やれそうな仕事には乖離があります。障がい者の中にはTOEICで800点をとられるなど、私たちの想像もしないような能力を持っている方もおられるのです。そのため、障がい者の方の職域を広げることは今後の課題でもあります。

 

Project2 大学生支援

現状・将来を悩んでいる学生が多いという社会的な問題に目をつけ、すいせいさんの持っておられる就労支援のノウハウを生かした取り組みが行われています。そのためすいせいさんのオフィスは大学生が来やすいように、おしゃれであるそう。

現在では、県や市から委託を受けて大学ネットワークづくりや社会の中で暮らしていくためのスキルを身につける訓練である、SST(ソーシャルスキルトレーニング)を行っておられます。

 

Project3 生活困窮者支援

生活困窮者の支援、就労支援準備の事業も行っておられます。

この事業の目的は、生活保護にならないように予防をすることと、社会復帰ができるようにフォローすることです。

活動としては、これまでの就労支援ノウハウと事務所を活用して就労を目指しておられます。

 

Project4 ひきこもり支援

ひきこもりの方と社会との接点を作る活動を行われています。

ひきこもりの方は、将来について聞かれるのが苦しい、このままじゃいけない、自分が子どもであるのが親に申し訳ないと思いながら、ひきこもっておられる方が多数います。

その一方で、ひきこもりの家族の方は、ひきこもりの方との接し方がわかりません。そのため、両者の思いを翻訳する、家族以外の介入が求められているというニーズがありました。

あるひきこもりの方は、自分の希望と適職を診断した後、すいせいさんでのアルバイトを週に2日から始め、現在は週5日勤務を目指しておられます。

 

Project5 企業×教育

企業と、主に特別支援学校のお互いのニーズをマッチングさせる取り組みもあります。

特別支援学校では、生徒にいろんな体験を積ませたい、生徒の雇用先を確保したいなどといったニーズがあります。また企業の側には、学校の実習先がない、地域貢献をしたい、人材が不足しているというニーズがあります。

実際に2つの学校に50社以上の会社が訪問されており、現在では教育委員会と話し合いが行われている最中であるそうです。

 

Project6 ほっとかへんネットたるみ

ほっとかへんネットたるみにも関わっておられます。

ほっとかへんネットたるみとは、垂水区内にある社会福祉法人(保育園・こども園・高齢者施設・障がい者施設・児童施設)が集まり、垂水区民の方がいつまでも安心して暮らせるよう、住みよい「垂水」を創っていこうという連絡協議会のことです。

ここでは、高齢者の集う場を作る、子どもが高齢者の方と遊べるイベントを行う、障がい者の方とつながりの再構築するなどといった活動を行っておられます。

地域の福祉活動のそれぞれの担う領域を拡大させ、混ざり合わせることで、誰も取りこぼさない支援、地域貢献を行っておられます。

Project7 社長の知能検査

社長の知能検査を行うプロジェクトにも取り組まれています。

社長には個性的な人が多いと気づかれたすいせいさんは、社長に発達障害の診断を受ける時に使うテストであるWAISテストをするとどうなるのか、について検証されました。

その結果、経営者の中には、発達障害の方と同じような結果が出る方もある程度おられることがわかりました。ある経営者の方は、学校教育の「勉強」「人間関係」「同調圧力」がはまらない結果が得られました。しかし、ひきこもりになったりせずに社会で活躍されているのは、幼少期に「違い」を認めてくれる、応援してくれる大人がいた、からだそうです。

このことから、大切なことは能力だけではなく、「違い」を本人や周りの人が理解し、認め、褒められ、「自分でいいんだ」という自信を持たせることが大切であると述べられました。

 

◎なぜ違いが生まれるのか

では、なぜこのように人間には違いが生まれるのでしょうか。アリの生存戦略から、その答えについて教えていただきました。

アリはお尻からにおいを出して、行列を作ります。しかし、一部のアリにおいがかげないために列を作りません。それは、すべてのアリが同じ能力を持ち、同じところに行列を作ると、絶滅をしてしまうためです。そう、すべての能力には意味があるのです。

 

◎A society where all people function

「ちがう自分」を「いいね」できる、社会もちがいを理解し活用できる。みんながギアとなり、みんなが機能する仕組みづくり、「A society where all people function」がこれから大切になっていくでしょう。

 

 

所感

「福祉」と聞くと、学生の私にはどこか固いイメージが浮かび、「福祉」はなじみの薄い単語でした。しかし、今回のお話を通じて私の「福祉」のイメージが大きな音を立てて崩れ去っていきました。

誰もがありのままでよくて、誰もがありのままで素晴らしくて、誰もがありのままで活躍できる世界がここにはある。人との違いが社会の歯車となって、社会を動かす大きな力になる。

そんなことを、身をもって教えてくれる存在が「福祉」であることを知りました。今まで堅苦しい「福祉」が柔らかくて、カラフルな印象に変わりました。

この社会ではこれからも必ず、この社会の持続のためににおいがかげない多くのアリが社会に生きづらさを感じてしまうに違いありません。そんな時に、「福祉」は必ずそのアリたちに寄り添ってくれることでしょう。

そんな優しく柔らかな福祉は、いつでも私たちの拠り所としてあり続けてほしい。そしてもっとたくさんの人に触れてほしいと感じました。一緒に触れてみませんか?