【神戸ソーシャルセミナーwithシン・エナジー 乾正博氏(2019.6.12)】

神戸ソーシャルセミナー、2019年6月のテーマは「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」

今回はシン・エナジー株式会社社長の乾さんから、「エネルギーと人類」と題して、再生エネルギーの可能性についてお話を伺いました。

参加者からも次々と質問がなされ、さらに参加者同士のやりとりも行われるなど、終始和やかな雰囲気で、密度の濃い時間が流れていました。

◎会社概要

シン・エナジーさんでは、「未来の子どもたちからの『ありがとう』のため生きとし生けるものと自然が共生できる社会を創造します」を経営理念とされています。社名の「SymEnergy」は「Symbiosis(共生)」と「Energy(エネルギー)」の組み合わせによるものです。エネルギーを基軸に、自然との共生を目指す思いが込められています。

事業領域としては、エネルギーを基軸に、持続可能な地域社会をデザインすることです。地域ごとに最適なエネルギーの活用方法を提案するなどといった、地域ごとのエネルギーのプロデュースとエンジニアリングを主にされています。

 

◎エネルギーの歴史と問題

産業革命以前では、主なエネルギーは熱でした。その後の産業革命以降では、蒸気機関などエネルギーの大型化が起こり、石炭が資源として使用されるようになります。

そして、1879年エジソンが白熱電球を実用化したのをきっかけに、電気が都市のインフラとなり、火力発電が開始され、そして1970年代以降、電力の大量消費時代へと突入していきました。1973年のオイルショック以降、原発開発も加速しましたが、安心安全のリスクなどが現在でも懸念されています。

そして、2012年、固定買い取り制度(FIT制度)がスタートしたと同時に、再生可能エネルギーの時代へと突入していきました。パリ協定や、SDGsなどをはじめとして、政府も企業も環境目標を立て、その環境目標を開示する時代となりました。再生エネルギーについては、第5次エネルギー基本計画で2010年度では約10%であった再生可能エネルギーを2030年度には22%から24%にするといった、再生可能エネルギーを将来の主力電力の一つにする目標がたてられました。

産業革命・電気社会が始まってからの200~150年で産業はこれまで経験したことのないスピードで発展してきました。それに伴って、自然・資源・環境のキャパオーバーが生じ、生態系が崩壊し始めているのです。

 

◎カーボンニュートラルについて

カーボンバジェットとは、2℃上昇までに残されているCO2排出量のことです。1861年~1880年からの気温上昇を66%以上の確率で2℃に抑えるには、2011年以降の人為起源の累積CO2排出量を約1兆トンに抑える必要があります。もともと2℃上昇させるために必要なCO2排出量は3兆トンですが、現在2兆トンは使われてしまいました。

また、カーボンプライシングとは、CO2の排出に対して炭素価格と呼ばれる価格を付与することで、化石燃料消費などのCO2を排出する行為を抑制する施策の総称のことです。これにより、日本でも、脱酸素を目指す動きが起こっています。その中の一つが、再生可能エネルギーというわけです。

 

◎エネルギーを考える

再生可能エネルギーには、太陽光発電、水力発電、地熱発電、風力発電、バイオマス発電があります。これらすべてに共通するのは、発生するカーボンが0であるという点です。特にバイオマス発電は、木材や家畜排せつ物などの再生可能な生物由来の有機資源によるもので、焼却などしても大気中のCO2を増加させない、カーボンニュートラルな発電方法です。その点でバイオマス発電は、エネルギー問題、地球温暖化の解決に加え、山林の活性化、廃棄物問題の解決、資源循環型社会の実現を可能にするエネルギーであると言えます。また、風力発電、地熱発電は、行うことができる地域が限られていますが、水力、太陽光発電、バイオマス発電はどこでも行うことのできる可能性があります。そのため、これらをいかに地方の国土をつかってバランスよく増やし、エネルギーを作っていくのかがこれからの課題であると伺いました。

 

◎未来設計をご一緒に!事例をまじえ

未来設計をするためのポイントとして、次の二点を挙げられました。

ひとつは、国産エネルギー開発によるエネルギー自給率の向上、もう一つは、地域循環型社会の設計です。

日本は2012年以降、エネルギー自給率が10%未満で推移しています。また、日本全国の1724市町村の約9割でエネルギー収支が赤字となっています。それはなぜかというと、日本は化石燃料に国家予算の30%に匹敵する年間27兆円を海外に支払っているからです。

バイオマス発電計画も例外ではありません。なぜなら、燃料となるPKS(パームヤシ殻)、パーム油、木材を国外からの輸入に頼る、バイオマス発電計画が非常に多いからです。このバイオマス発電計画は、国民負担による賦課金は海外流出し、運搬には船の燃料となる石油が必要となります。そのため、結局お金は海外に流出し、地域経済に貢献せず、バイオマス産業都市構想に反します。

また、世界の森林は減少していますが、日本の森林は増えています。それは日本で一次産業が発達していないためです。昭和30年代は0.8億㎥の伐採実績がありましたが、現在では成長率が1億㎥/年に対して伐採量は0.3㎥/年(平成24年)になっており、日本の森林の十分な量が利用可能なのです。

地元の間伐材などを使用した場合、地元への経済効果としては(1MW規模の発電の場合)木材1万t、約7000万円分が、売電する際には約3億円になります。

 

◎シン・エナジーさんが取り組んでおられる事例

飛騨高山しぶきの湯バイオマス発電所では、近隣のペレット工場と連携をして、バイオマス発電を行い、しぶきの湯へ熱を販売、さらに中部電力に電気を売るというモデルができています。このことにより、排熱を温浴施設で加温することで、灯油を削減する効果があります。このような小さな発電所を全国各地にちりばめることによって、雇用経済を回す効果もあります。

内子バイオマス発電では、材木市場、ペレット工場、バイオマス発電所を一か所に集め、運搬の効率化をはかられています。さらに、地元のパートナーが主体で行われているため、地元に利益が還元され、また燃料供給事業者も事業に参加することで、長期安定的な燃料供給が実現されています。さらに、熱の有効活用も行われています。

 

このように大型発電所からバイオマス発電をはじめとして、太陽光、地熱、風力などが地域ごとに導入されることによって、国内循環経済が大きくなります。海外の化石燃料を国内資源に代替することで、地域活性化を行うことができるのです。

シン・エナジーさんでは、活用できていない再生可能エネルギーを使い切るエネルギーの自立分散型コミュニティが形成され、さらに、域内再生可能エネルギーを他地域へ供給する「再生エネルギーリッチ」なエネルギー社会となることが目指されています。

再生エネルギーを取り入れた生活を地域ごとに創ることが持続可能な共生社会を実現し、地域ごとの自立と永続性を達成できるのです。

 

学生所見

私は、今回の神戸ソーシャルセミナーを恐れていました。「エネルギー」の話なんて、ゴリゴリの文系、文学部の私にはまったくわからない、そう思っていました。しかし、今回のソーシャルセミナーは思わぬところで私の興味関心につながっており、一瞬でシン・エナジーさんのファンになりました。

私は、地方創生にとても関心を持っています。今、少子高齢化のあおりを受け、各地で過疎化が進み、元気のない地域が多く出てくる中、そんな地域が自立し発展していくためには、いかに地域内で経済を回し、地域内で持続的な発展をするかが大切であると語られるようになってきています。いかに、地域独自の商売を生み出すのか、雇用を生み出すのか、そのような視点で、私は地方創生を追っていました。

しかし、今回のお話では「エネルギー」を地域で生み出すことによって、地域の経済を潤し、地域ごとの自立と永続性を達成する、というものでした。地域活性化の一つのアプローチとして、エネルギーが用いることができるという視点が私には大変に驚きで、感銘を受けました。

私たちが日ごろ当たり前すぎて気づかないほどに使用しているエネルギーは、確かに海外に依存しきっているものです。電気を使うこと、車に乗ること、料理をすること。その行為ひとつひとつが、海外にお金を払っている、ということを意識して生活したことがありませんでした。しかし、シン・エナジーさんの手にかかれば、電気を使い、車に乗り、料理をするなど、私たちが生きていく上でせざるを得ない行為が、地域の経済を潤し、地域を自立させ、永続的な発展をさせることができる。なんて素敵なんだろう。

このシステムが全国各地に広がり、環境問題の解決、地域の持続的発展、山の問題など、様々な問題を私たちが「生きる」ことで解決し、日本社会が大きく変わっていくことがとても楽しみです。