【神戸ソーシャルセミナーwith 神戸ダルクヴィレッジ 梅田靖規氏(2019.11.06)】

11月の神戸ソーシャルセミナーは、SDG3「健康と福祉」をテーマに、政令指定都市のなかでも最後にできた薬物等の依存者支援を行う「神戸ダルクヴィレッジ」。こちらの梅田さんにお越しいただきました。

「さみしい」「孤独」「人の目を気にしている」「バカにされたくない」「忘れたいことがある」・・・こんな言葉を聞いて皆さんはどんな人を想像するでしょうか。

誰もが感じたことのあるこのような感情。これはすべて薬物依存になったか方々から漏れた言葉だそうです。

薬物依存症とは、薬物を「使う病気」ではなく、薬物使用をやめたくても「自分の力ではやめられなくなっている病気」、と精神保健福祉士でもあり、アジア太平洋地域での薬物依存症施設研究のご経験もある梅田さんは話されます。人とのつながりをなくし、孤独や不安を強く感じる際につながりを持とうとするときに、不健康なつながりとして薬物に依存することが多い。ただ「だらしない」とか「いい加減な人」ではなく「つながりが切れてしまった人」「人に話したり相談したりできなくなってしまった人」が、一時的な解決として薬物を始め、やめられなくなってしまうそうです。また、特に女性の依存者が多い背景には、彼氏から誘われて、拒めずに辞められなくなってしまうこともあるそうです。

 

◎Addiction(依存症)の反対はConnection(つながり)

薬物関係で捕まると刑務所に連れていかれます。当然ですが厳しい状況に置かれ、多くの人はどんどん自分自身を追い込み、自尊心が落ちていく。そして、出所できても、友達も仕事も失っていて、最悪の状態からのスタート。社会のスティグマ(烙印)を背負っての社会復帰はいまの日本ではかなり難しい・・・また、アルコールやギャンブル依存は莫大な借金があるときは難しいですが、他人に相談することはまだできそうですが、薬物関係に関しては相談することも難しい。そこで受け皿になるのがダルク(Drug(ドラッグ)Addiction(依存症)Rehabilitation(リハビリ)Center(施設)の頭文字をとったDARC)。日本では1985年近藤恒夫氏が東京・日暮里で始めたのが日本での始まりだそうです。そして現在各地(今は全国に約80か所)にあるダルクはそれぞれが独立しており、神戸ダルクヴィレッジも3年前に設立されました。ダルクは依存症となった人たちが、安全で安心できる居場所として、依存症から回復した仲間が回復モデルとなり、寄り添うことで生き方を変え、一生を歩むプロセスが始まる場所でもあります。病院や行政と違い、24時間体制で共同生活を行う場所でもあるので、仲間同士で支え合う仕組みになっています。

◎日本の依存症者の社会復帰に必要なもの

依存症の方々は本当に苦しいときは「わかってほしい」「助けてほしい」「愛してほしい」という言葉が言えずに生きています。そしてこれらの人たちが社会復帰するのに最も大きな要因は名医の診察でも、刑務所での矯正教育でも、ダルクの力でもないと梅田さん。本当に必要なのは地域社会の理解と思いやりであり、失敗をチャンスに変える、それを受け入れてくれる世の中だそうです。

◎ライターツボの目

実は10数年前はご本人も絶対薬物をやめられないと悩み、苦しんでおられた梅田さん。3回の自殺未遂の末、ダルクに出会い、薬物を辞めることができ、施設におられるうちに精神保健福祉士の資格も取られ、JICAの仕事でフィリピンの貧困層の薬物依存回復施設で活躍もされました。自分とは遠い存在だと思っていた薬物依存症ですが、人とのつながりが切れること、人間関係が切れることに恐れることがきっかけではじまる話を聞いて、他人事ではないなと感じました。また講演の際に紹介いただいた動画(※)も観る中で、回復には人とのつながりがやはり重要なのだと改めて感じ、他の社会課題との共通点も感じる回でした。

 

https://www.youtube.com/watch?v=C8AHODc6phg&feature=emb_title
英語ではありますが、薬物依存についてわかりやすく紹介されています