【神戸ソーシャルセミナーwith 学生BYCS 登里祥伍(のぼりしょうご)氏 (2020.01.22)】

2020年最初の神戸ソーシャルセミナーのスピーカーは、認定NPO法人FUTURE CODEの学生部BYCS(バイクス)に所属する登里祥伍さんです。SDGs17「パートナーシップ」に関わる海外支援活動についてお話していただきました。また後半には、来場された方と今後の活動に対しての悩みの共有と解決のためのアイデアを募るワークショップを開催されました。

 

会場にはBYCSメンバーが多く集まる神戸市外国語大学の学生スタッフが集まり、セミナー参加者とともに活発な意見交換が行われ、参加者の中にはブルキナファソからの留学生がいて、貴重な現地情報を伝えてくれました。

 

*団体の紹介から
わたしたちは認定NPO法人FUTURE CODEの学生部BYCS(バイクス)と申します。 団体名であるFUTURE CODEという名前の由来ですが、「世界中の医療に未来への鍵を」という思いが込められています。代表の大類は、外科医としてハイチ大地震の際に緊急医療支援チームとして現地に赴任したことがきっかけで、この団体を立ち上げることになったのです。

そしてわたしたち学生部BYCSですが、医学生の集まりではありません。外国語学部や社会学といった文系学生も多く、医療をテーマにしたNPOの中でソーシャルビジネスに取り組んでいます。

どういう活動かといいますと、西アフリカにあるブルキナファソという国で採れるシアバター。シアの実から採れる植物油脂で、現地では昔から保湿成分として使われていました。そのシアバターを輸入してハンドクリームにして日本で販売することで、その利益をFUTURE CODEの医療支援活動の資金に充てようとするものです。

 

*なぜブルキナファソだった?
ブルキナファソでの活動のきっかけは、地域の子どもたちに教育を届けられるようにと活動している地元NPOとFUTURE CODEが出会い、その医療部門をFUTURE CODEが担当する事になったことから始まります。最初行っていた活動は、マラリア予防の蚊帳の管理や井戸の状態確認、幼児院施設の運営などを行いながら、現地の人たちに手の洗い方やトイレの使い方などの公衆衛生面の指導、教育を担当していました。

ブルキナファソにはシアの木が多くあり、高品質なシアバターが採れます。フランスの化粧品会社ロクシタンはハンドクリームで有名ですが、その原料のシアバターもブルキナファソの畑から採られています。

 

*ブルキナファソからの留学生の情報
「シアの木は田舎に行くと畑のなかあちこちにあります。ただ木を植えてからシアの実が収穫できるようになるまで20年くらいかかるのが大変。実の収穫時期は雨期に入るすこし前の5、6月ぐらい。現地ではシアの果実を食べて、その種を集めます。」

 

*ハンドクリームhadanisheaについて
「しっとり、さらさら、肌おもい」と銘打ってこの製品を展開しています。

hadanisheaという名前の由来ですが、「あなたのお肌にシアバターを」ということで、肌にシアー=hadanisheaとわたしたちで名付けました。ちょっと小林製薬さんのブルーレットおくだけ、みたいなネーミングの感じになってます(笑)

20代後半からの女性をターゲットとして価格は1,200円。いくつもの企業から化粧品の製造委託を受けておられる大阪の企業に製造をお願いしています。

 

ポイント(1)国際認証を受けたシアバターを使用しています。

フランスのオーガニック認証であるエコサート認証(注)をこのシアバターは獲得しています。ロクシタンのハンドクリームに負けない品質だと自負しています。

※エコサート(ECOCERT):フランスの国際有機認定機関。オーガニック認証団体の世界基準とも言われ、高い評判と信頼を得ている世界最大規模の認証団体

未精製シアバターを使用しています。精製したほうが長持ちするといわれているのですが、未精製シアバターのほうが肌になじみやすいのです。

ポイント(2)さらさらしたぬりごこちは、肌になじんでべたつきません。

ポイント(3)肌思いであること。5つの化学成分(パラベン、シリコン、鉱物油、合成着色料、合成香料)を使用していません。

ポイント(4)神戸セレクション2020に選定されました。

神戸セレクションとは、神戸らしい、おしゃれで質の高い商品を公募し選定しPRしていく事業です。神戸市の協力のもと、神戸経済の活性化と、新たに神戸ブランドを創出しようという目的で推進されています。

hadanisheaは2020年の選定商品としてこれから全国いろいろなところで販売していこうとしています。

 

ハンドクリームのつけ心地を体験した参加者の声

「ニオイがきついのが苦手だったのですが、これはニオイがしないのでいいですね」(女性)

「本物のシアバターのニオイがしているね」(ブルキナファソからの留学生)

 

*もうひとつのセールスポイント。
わたしたちが売ったhadanisheaが医療支援の活動資金となり、公衆衛生の改善プロジェクトにつながっていく点が大きなポイントです。現地でシアの実を摘む作業は伝統的に女性の作業なのですね。材料のシアの実を購入する段階で、女性に賃金を払っています。こうして雇用の機会を創出することで、より医療にアクセスしやすくなったり、地位向上につながったりすることが狙いでもあります。そこに貢献できればと思っています。

また学生がこのプロジェクトをメインで動かしているということをアピールしたいと思っています。

 

*学生部BYCSが直面している悩み
hadanisheaは2019年3月から発売開始して約1,500本ほど売れたことになります。当初クラウドファンディングで支援を募ったので、実質の売上本数は1,000本ほどです。広報手段としては、BYCSとブランドの2つのSNSでの告知。ほかラジオ、新聞にも取りあげてもらい反響を得た。

学生部の先輩たちが名付け、デザインして製品化したhadanisheaも1年がたち、これからはいつまでにどれくらい売っていくのか、ブルキナファソに次の商品分をいつ発注するか、などを計画していく段階になります。

 

*売上の伸び悩み
ところが現在思ったように売上が伸びていません。去年秋から今の時期は、ハンドクリームが売れる時期だと思うのですが、なかなか売上が伸びない。メンバーではこう分析をしています。

 

*伸び悩みの原因分析
ネットショップの印象:殺風景で面白みに欠けるのではないか。スマホで見てもらう上ではキレイにできていると思うのですが、パソコン画面で見るといびつに見える。それを直したいのですが、ホームページを編集するのに特化した人材がいない。

イベントに参加して販売することが多いのですが、国際協力に関心がある、あるいは福祉・ボランティア活動に関心があるという人が集まる場所ばかりへの出店となり、結果ハンドクリームがほしいと思っている人に全然到達していないのではないか。大学内での販売も同じで、もともと20代後半の女性をターゲットにしてつくった商品なのに、キャンパスにいる学生は年齢がそれよりも若くなってしまう。それに学生は1回買ったらそんなに買い足したりしないと思われる。リーチしていく層が狭い。

神戸市内の店舗で販売できているのは、ほぼNPO法人FUTURE CODEのコネクションやその知り合いの方とのつながりで実現できたところ。学生が店に出向き、製品の説明をして、販売してもらえるようになった実績がまだひとつもない。

最初に計画したビジネスモデルを持続可能にしていくためにどうしたらいいかわからない状態です。それを今日あつまったみなさんにご相談したいと思います。

 

*学生部はこれからどうしていくのか
今主要なメンバーは大学1、2年生が中心です。授業のコマも多く興味は他にもあるだろうしバイトの時間もある。これが3年、4年生になると就職活動もしなければなりません。学生としていろんなことをしたい中でなるべく負担のかかりすぎないようにこの活動をやっていきたいなと思っている。

具体的なこれからのビジョンは描けていないのですが、このサイクルを回すためにもなるべく早く売り切ってブルキナファソの現地へ還元したいと思っています。その時期に次の製品を発注できるようになればいいと考えています。最終的にこのプロジェクトの行き着くところとしては、このハンドクリームをつくる事業そのものを会社として独立させ、日本の企業とブルキナファソの人たちをつなぐことができたらいいなと考えていたりします。ハンドクリームの生産も原材料の購入も継続し、製品も使ってもらえるからです。ただ、それが実現するのは10年もっと先かもしれません。

 

<全員でのワークショップへ>

学生部BYCSが直面している売上の伸び悩みをうけて、販路拡大のアイデア出しをセミナー参加者とメンバーが一緒になって検討する、プロボノ活動を行うことになった。その結果2つにわかれたグループから下記のような発表があった。

発表Aグループ
売り方の悩み、伸び悩みについて相談させてもらったところ、売ることばかり考えているけど、売れない理由について考えてみたらどうかと提案された。学生だからできないことも多いけど、逆にまだ経験の少ない「学生だから」を魅力にしてみるのも方法と聞いた。これは新しい気づきだった。

 

発表Bグループ
何を武器に売っていくかについて話し合った。
自分たちが何を背景に、どんな思いで何のためにつくっているかを知ってもらう事が必要で、そのためにはサイトのなかに自分たちのストーリーがいるのではないか。それを掲載することで新しく買ってもらう人とのつながりができる。買ってくれたひとが周りの人にその良さを伝えてくれる際にもストーリーがあれば伝えやすい。その先の販売促進につながるのではないか。

若さを武器にすること。小売店鋪にhadanisheaを紹介するときも、自分たちのことばかり話すのではなくて、相手のお店がどんな商品をおいていて、どんな商売をしようとしているかを教えてもらい勉強させてもらう。そこから話をはじめ、最終的に自分たちの商品をどう売っていけばいいかのヒントをもらうようにしたらいいのではないか。それも一つの方法だとなった。

 

セミナーに参加したブルキナファソからの留学生からはこんなメッセージがあった。

「興味がありセミナーにきた。悩みに対して考えたのはストーリー、バックグラウンドを伝えること。そしてお客様だけでなくステークホルダー全体のことを考えていかないといけないと思った。」

代表の登里さんは、集まったすべての意見を持ち帰ってこれからの活動に生かしていきたい。そう締めくくった。(登里さんのセミナーここまで)

 

<ネーミングライターは何を感じたか>
前回12月にWHOの茅野さんのセミナーがありました。ある種の予言だったかのようにいま新型コロナウイルスが世界の喫緊課題となっています。ウイルスの封じ込めが非常に難しい時代に、世界中の国が連携することで善処していってもらいたいと切に願います。さてSDGsを担う若い世代が担当する今回のセミナーです。ソーシャルビジネスに代々取り組んでいる学生たちのまっすぐな姿勢に圧倒されました。人前で悩みを正直に打ち明けることの難しさ、その勇気は必ず解決の方向に導いてくれることでしょう。

BYCSとは、Bridge Youth Challenge Smileの頭文字から。若者らしく、がむしゃらに挑戦しつづけて、笑顔を届けようという意味が込められているとのことです。ワークショップで2つに分かれたグループから図らずも同じ意見が出ていました。それは若さを武器に「できないこと」を逆手に、チャレンジすること。

活動を持続可能にしていくためには、できないことから目をそらさずにいること。その勇気をもつこと。学生たちからそう教えられた気がしました。BYCSの活動がブルキナファソとのグローバル・パートナーシップをより強くしてくれる一助になることを願っています。