【神戸ソーシャルセミナーwith神戸市水道局 児玉成二(こだませいじ)氏 (2020.01.29)】

1月二人目の神戸ソーシャルセミナーのスピーカーとして、神戸市水道局から児玉さんにお越しいただきました。SDGs6「安全な水とトイレを世界中に」のテーマで、知られざる水道についてのあれこれ。さらには持続可能な水の管理や衛生についての神戸市の取組みについて詳しくお話を伺うことができました。

 

児玉さんはこれまで街づくり、交通事業、病院事業などの公益事業に携わってきた経験があり、現在勤める水道局での事業も税金で賄っているのではなく、料金だけで成り立っていると自己紹介を始めました。

自身が担当してきたこれまでの業務内容と水道事業を比較して1)地域独占、2)資産共有(住民の敷地内に給水施設を敷いていて資産を共有している)、3)水源や水の配り方は全国の水道事業によってさまざまで比較できないことが違いだと挙げています。そんな水道事業についてセミナー参加者にクイズが出されました。

 

ではここで問題です。神戸の水道料金は全国的にみて高いか安いか。

正解は「安い」です。

水道の使用量はご家庭で使われる平均がおよそ15m3(立米)といわれています。この数値は昔より減っています。理由としては一世帯あたりの人口が減ってきているということと節水機器の進歩。水道料金が一番高い新潟で3,800円、神戸は1,700円です。神戸では平均的な家庭が使われる量で算出した基本料金を安く抑えています。また神戸は震災がありましたので20年間料金改定をしていません。他の地域は10年程度で改定しているので、その点も違います。

ちなみに月に1,700円というのは、一日にして5,60円です。買えば100円ほどの500mlのペットボトルの水も水道水なら0.06円。1円もしません。毎日1本1年間ペットボトルで水を飲んだとして、買えば36,000円ほどするのが、水道水なら20円ほどで済みます。生活用水で使うだけでなくて、飲み水として考えても安全で安いという事です。

 

次の問題です。水道水を配る配水管ですが、これを全部つなげるとどれぐらいの長さになるでしょう?

600km、1,800km、4,800kmのどれか。

正解は4,800kmです。

配水本管といわれる直径200mm以上の管が1,800kmあります。これが人間の身体で言う動脈にあたります。そこから毛細血管のように各家庭につながっている配水管があり、それをあわせて4,800kmとなります。神戸の場合大きな河川がないのでどうしてもダムが水源になります。千苅(せんがり)ダムが神戸市北区と宝塚市、三田市の境界に位置する場所にあります。そこから水を引いているのですが、それでも足らないので琵琶湖・淀川水系を水源とする阪神水道企業団から水を買ったりしています。

貯水池ポンプ場の数は、51カ所。配水池も127。大阪市の10倍ほど。水源も遠く、また六甲山脈があり高いところに住む地域の方へ水を上げていく必要もある神戸市ですが、それでも大阪市と大きく料金が変わらないという点で、がんばってきたと言わせてください。

 

*神戸市水道局の現状と課題

これはどの町でも言われることですが、水道施設の多くは高度成長期に整備されたものです。神戸は1868年に開港。町に人やモノ、文化が集まり、そこに伝染病も入ってきて,1890年にはコレラが大量発生。チフス天然痘とあわせ約1,100人の方が亡くなりました。当時の神戸区は10万人ぐらいいたとされますので約1パーセントの人に相当します。現在に換算するとなんと1万5千人。阪神淡路大震災で亡くなった方総数の約2倍。神戸だけで3倍にあたる人が亡くなられたことになるのです。そこで衛生的な近代水道が必要だとイギリスのバルトンさんという技師の指導のもと、1900年神戸水道ができました。今年はそこから120年になります。その記念と啓発の思いからロゴマークをつくりました。

 

120年も経っているということからもわかるように、古くなって交換しないといけない水道管の数が非常に多くなってきています。現在、年間40km分の管の交換を目指していますが、全長にして4,800kmありますので全部交換するのに120年かかってしまいます。管の傷みぐあいもそれぞれ。水道管は一律に傷みません。土壌や使われ方、水圧で変わります。その辺りを見極める必要があります。ではもう一つクイズです。

 

水道管1km更新するのに費用がいくらぐらいかかるでしょうか。

1000万、5000万、1億円どれでしょう。

正解は1km1億円になります

なぜ1億もかかるか。もちろん管の大きさや工事の場所にもよります。夜間の工事ならさらに割り増しになる。新設管なら入れるだけですが、既存の管は昼間なかなか工事できず、断水の問題もあります。昼間に断水して工事ができれば良いのですが、断水できない場合はその管の横に仮配管をして水を止めないように作業し、本管を取り替えてからまた仮配管を撤去する。こんな工程になり長い間道路を占有することにもなる。時間もお金もかかるのです。

 

*SDGsに関する取り組みについて

まず世界の水道の状況について。
世界で水道の恩恵を受けられていない(基本的な給水サービスをうけていない)人の割合は、12パーセント、約6.6億人に相当します。さらに安全な水を入手できない人までを含めるとさらに17パーセント増えます。
地域でみるとアフリカと東南アジアになります。
だいたいこの地域で水を運んでいるのは女性と子どもですね。もしここに水道を敷くことができたら、女性や子どもたちの水運びの時間を学びや仕事の時間に変える事ができるのではないか。そういった意味ではSDGsの教育の機会やジェンダーフリーといったテーマにも関係してくると思います。

SDGs6のテーマでいえば「安全な水を敷地内でいつでも使える状態にする」。これを実現することで、健康と福祉=命をつなぐゴールにもつながります。

 

日本は今でこそ水道の普及率は高い水準にありますが、100年前は途上国と同じような状況だった。ならばその経験を生かして国際貢献していく必要があるのではないか。そこで神戸市では、平成22年に指針をつくり、国外に出かけて直接支援する活動を行なっています。最近の主な活動としては、ベトナム ロンアン省で工業団地をつくる計画段階から参画。職員を派遣しています。同じくベトナムのキエンザン省フーコック島という観光地ではホテル建設が進み水の需要が急に増えたことで起こる問題への対処です。イギリスの植民地だったスリランカにも行っています。当時イギリスが敷設していた水道管が老朽化し、悪化した水質を改善すべく、わたしたちが貢献しています。ルワンダのキガリ市とはIoT分野で提携することになり、水質問題、漏水検査のために職員を派遣しました、現地は山も多く神戸と地形が似ているので我々の技術や経験が役立てるのではないかと思っています。

 

2つめの例です。JICAが行なっている途上国向けの研修を3年契約で神戸市が受託しています。

昨年度の事業では、1ヶ月間6カ国6名の方に水質水源に関わる講義をして、漏水計画の立案あるいは国の課題に対するアクションプラン作りをしました。

このようにして、水質分析、応急給水、漏水調査の実践などといった研修内容で、これまで24カ国210人の受講生を受け入れてきました。

 

*そのほか水に関するSDGsに関連する日本での取り組み

*防災拠点になる学校や病院を優先して行なっている水道施設の耐震化工事。これはSDGs9のインフラや11のくらしにも繋がっていると言えます。

*関西電力のVPP(バーチャルパワーポイント)事業への参画。余った電力を使い計画的にポンプで水を汲み上げるなど、電力の需要調整弁として水道事業を生かす試み。

*スマートメーターの開発。現在検針は人の手で行なっていますが、デジタル情報にして無線で飛ばすことで、瞬時に日々のデータを集めることができるようになります。もし漏水が発生してもすぐに見つけることができる。将来的には水の使用有無で高齢者の独り住まいの見守りができるなど、様々な社会課題の解決にもつながると考えられます。

*AI技術の活用。毎日のデータをモニタリングしていくことで、AIが交換すべき水道管の場所を判別しスポットで付け替えるようにできるのではないかと研究を進めています。

 

わたしたち水道局はこのように取り組んできていますが、みなさんにもこれから一緒に取り組んでほしいと呼びかけていることが2つあります。

 

1災害時の応急給水への市民参加

このマークをご覧になったことがありますか?

 

災害時に使用できる貯水機能のある場所を示すマークです。

災害発生後、水を運搬できる距離がおおむね2kmと考え、市内62カ所に貯水機能のある水を溜めたタンクを整備し、いざという時の給水拠点にしているものです。

ホームページで公表していますのでみなさんの家の近くにある場所を見つけてみてください。

https://www.city.kobe.lg.jp/a75879/bosai/prevention/water/disasterpoint/10/index.html

あと貯水機能のない災害時の給水拠点についても紹介します。

「いつでもじゃぐち」

配水池から拠点まで強度の高い耐震管でつなげている給水拠点です。小学校などに設置して平常時は子どもたちが蛇口から水に親しみ、災害時は給水栓になるものです。

「ふっQすいせん」

防災コミュニティってご存知ですか?だいたい小学校区に1カ所あります。そこに給水点を整備しています。200カ所つくり、できるだけ生活に近い場所で水を汲んでもらうようにしています。

みなさんにおねがいしているのは、地域で給水訓練をしていただきたいということです。災害で水道に問題が起こったとき、少しでも早く市民の方が自力で給水作業ができるようになってほしいと思っています。そこで装置のある倉庫の鍵を地域の方にお渡ししています。

 

2水道水の有効利用

水道局の広報活動です。LOVE&WATERというテーマでパンフレットや専用サイトを作っています。水や空気というものは当たり前にあるように思われますが、未来に向けて安全な水の存在についてもっと関心をもっていただこうと、様々な形の広報活動をしています。

例えば水をテーマにした写真展の開催や、オリジナルグラスとかコースターも作りました。賛同いただいたお店に入ると神戸市水道局と書かれたグラスで水道水の水が出てきます。そこで「この水は水道水なんだ、美味しい水だな」と思ってもらいたいと考えたアクションです。市内18店舗に協力いただき評価をいただきました。最近の取り組みはマイボトル給水。ペットボトルの水を持ち歩くのではなく、より環境にやさしいマイボトルを持ち歩いていただいて、そこに無料で水道水を給水できるようにしようと、給水ポイントをマップで紹介しています。

そのほか産官学共同で「おふろ部」というユニークな取り組みをしています。「おふろのキュレーションメディア」と称したホームページがありますので、ぜひご覧になってください。

https://ofurobu.com/

 

*メッセージ

みなさんとの共有財産である水道施設です。将来にわたり水道水の安全性を保つために、市民の方々と一緒に未来につないでいきたいという願いがあります。広報するわたしたちだけでなくみなさんのSNSなどでも発信していただき、いろんなアイデアやこれまでにない発想を集めてこれからに活かしていきたいと思います。本日はありがとうございました。(児玉さんのセミナーここまで)

 

<ネーミングライターは何を感じたか>

神戸という町は本当に海と山が近く、高低差のある様々な地域に人の住まいがあります。遠く離れた水源から全ての家庭に水を24時間365日安全に届けることの大変さを学ぶ機会になりました。セミナー参加者からは水道の民営化に対する不安、一律料金について、浄水、排水、下水のコストなど多くの質問が寄せられました。公務員である児玉さんからはこれまで一貫して公益事業に携わってきたと紹介がありました。水道は共有財産である。そう話す児玉さんの声を聞きながら「公共善」という言葉が脳裏に浮かんできました。ついつい自分の利益ばかりが優先される現代社会において、あまねく便益を行き渡らせるためにどうすればいいかを考え実行されてきた人なのだと思い至ったのです。持続可能な社会の実現にはこうした多角的な視点を持つことが必要です。効率の良い水道事業がここ神戸で実践され、そのノウハウが全国に、そして世界に広がっていくことを願っています。(洛林舎)