【神戸ソーシャルセミナーwith WHO神戸センター 茅野龍馬氏(2019.12.11)】

12月二人目のスピーカーとしてお迎えしたのは、WHO神戸センターで健康危機管理担当医官として働く茅野龍馬さんです。SDG3「すべての人に健康と福祉を」をテーマに、参加者との間でWHOの仕事とSDGsについてインターアクティブに話し合う場となりました。

茅野さんは、国際保健という観点から「なんでSDGsが生まれたのか」「その前にあったMDGsから世界がどう変わって、今我々はSDGsをどうして目指しているのか」についてわかりやすい言葉で解説を始めていきます。

 

*世界保健デー(WHOの設立日である4月7日にグローバルヘルスの重要課題を取り上げる)の2018,2019年のテーマはUHC(ユニバーサルヘルスカバレッジ)

これはすべての人に適切な質の医療を適切な価格で届ける、という概念です。

これを世界中の全ての国の全ての人に届けることがSDGsのキモになると我々は考えています。

 

*WHOが掲げている3つの目標。

1)10億人のUHC 、2)健康危機から守る(感染症のアウトブレイク、災害などから人々を守る)、3)健康増進(高齢者、障害者など)

 

*WHOの組織について

各国に保健省を支援する形で存在している組織が世界中で150箇所くらい。ただ、日本やアメリカ、西ヨーロッパ諸国等にはその組織はありません。なぜかというとそれらの国はWHOの助けが途上国ほど必要ではないからです。それらの組織を6つの地域に分けて束ねて、全体を統括しているのがスイス・ジュネーブにあるヘッドクォーター(本部)です。

ではここ神戸センターはどんな役割をするかと言えばちょっと特殊な組織でして、世界で唯一のWHO本部直轄の政策研究をするセンターです。UHC/高齢化/健康危機管理についての政策を作っていくための研究をするところになります。

 

*SDGsを考える上でのキーワード「グローバルとインターナショナルの違い」

グローバルとはglobe、地球のこと、そこに国境は関係ありません。インターナショナルというのは国 (nation)と国 (nation)との間柄(inter)を考える。国際はいい翻訳ですね。国があって国境があってそれぞれの利害関係を調整しながらその「際(きわ)」を考える。このグローバルという言葉の意味を考える必要があります。

 

*グローバル化している「経済」、していない「保健」

経済は今ほぼ世界中で繋がっていると言えます。どの国にいっても経済活動をある程度同じルールでできるようになっていて、日本人が外国で会社を作ることもできる。その意味で経済はグローバル化しています。でも保健領域は比較的グローバル化していません。国どうしの間に貧富の差があり、貧しい国に対して富んでいる国が保健の問題で補填する仕組みはまだまだ整備ができていません。

 

2000年はMDGs が生まれた、大きな意味を持つ年です。経済成長で国家間に大きな格差が生まれた中で、先進国を中心とした世界のリーダーが、世界の問題は自分たちの問題として考えて底上げしていこうとサミットで話し合いました。その結果、開発分野における国際社会共通の目標(ミレニアム開発目標)ができたのです。

そうして掲げられたMDGs目標8つのうち、3つが保健領域です。「幼児死亡率の削減」「妊産婦の健康改善」「HIVマラリア結核などの蔓延防止」

 

国際社会はこの取り組みの中で、GAVI(ワクチンと予防接種のための世界同盟)を作りました。ワクチンが高くて買えずにそのせいで死んでいく子どもたちがたくさんいることから考えられたシステムです。お金を持っている国や人からたくさんお金を集めてワクチンを買って、配る。シンプルな仕組みですが、その効果は極めて大きく、GAVIは21世紀の大きな進歩のひとつです。

 

また世界エイズ・ 結核・ マラリア対策基金(グローバルファンド)もこの時創出されました。

これらの取り組みの結果として2002年に30万人ほどしか行き渡らなかったエイズの薬は、たった6年で400万人に届くようになりました。これが公衆衛生の力です。政策を変えることによって社会を変えることができるのです。それは、エイズ・結核・マラリアという3大感染症から2000万人の人を救ってきたのです。

 

格差があっても、そこに富を再分配する仕組みがあれば、食べ物や水や薬がなくたくさんの人が死んでいた状況を変えることができる。それがこれらの領域で可能になったのが、MDGsの生まれた21世紀初めのこと。MDGsは結構がんばって達成してきたのだと思います。

 

 

*MDGsからSDGsへ

今はどうでしょう。保健の問題が全部解決したのかというとそうではありません。新たな問題が出てきました。「グローバル化と高齢化」です。ここで世界がグローバル化している、という問題と関係してくるのです。

 

*感染症という脅威

2016年にはMERSという病気が流行りました。もともとサウジアラビアにあったラクダの病気です。ラクダとその側にいる人しか伝染らない病気だったのですが、観光客が訪れラクダに乗ったり肉を食べたりして感染するようになりました。そして一人の韓国人がサウジアラビアで感染しました。彼が自国に戻ったあと発症したことで韓国内で100人以上の人が伝染して、30人以上が死亡したということがあったのです。ショッキングな出来事でした。

 

*世界中の空を飛ぶ無数の飛行機のLIVE映像

この動画何を意味しているかわかりますか?

この小さな黄色く移動する点は飛行機です。24時間365日こうして人や物があらゆる移動を繰り返しているという動画です。

https://ja.flightaware.com/live/

 

これがグローバル化した社会です。感染症を考えるときに潜伏期間ということがあります。大体2日間から1週間ぐらい。昔船とか陸路でしか人が移動できなかった頃は、港や国境で危ない病気を防ぐことができたのですが、今飛行機に乗れば菌を保有したままわずか2日間ぐらいで国境を簡単に超えてしまうのです。そして国境を突破してから発症してしまう。これに関してどう対処できるか?これが難しいのです。皆さんいいアイデアないですか?

 

*IHR国際保健規則

国境を超えて入ってきてしまうのは仕方ない。そこで病気が見つかったらみんな同じルールで対策を立てようという規則です。危ない病気がコントロール効かないくらいに流行りそうな時は、緊急事態宣言を出して、すべての国が同じようにルールに従って行動する。ちゃんとWHOに報告して情報共有し、それに従っていろんな対策を講じていこうとするものです。

 

たとえばエボラ出血熱。非常に危ない病気です。ギニア、シエラレオネなどで発生しました。でも封じ込められずに国中に広がった。非常事態を宣言したけどすぐには事態が収拾しなかった。なぜか?規則を実践するキャパシティが不足していたことが大きな要因と考えられています。ルールがあってもそれを実践する国や組織がないと意味をなさない、それが今のもう一つの課題です。

 

*都市化と健康格差という問題。

今世界の多数派は都市部に住んでいます。1960年ごろは若者は都市部に出るけれど人口の70%ぐらいが田舎に住んでいました。それが2010年に逆転しました。多くの人が都市部に住み、密集して暮らしているのです。

*どれくらい世界は高齢化しているか

2015年の時点で人口の30%が60歳以上という国は世界で一つだけ。日本です。それが2020年になると、ドイツとイタリアが追いつき、2025年フィンランド、スペイン、ポルトガルもそうなると言われています。昔は高齢化になるのは長生きできる国=お金持ちの国だけと思われてきたが今は違います。すべての国で高齢化は起こっています。

結果として平均寿命は全ての国で右肩上がりに伸びています。バングラデシュの平均寿命は30年前はまだ50代でした。それが今はもう70歳超えています。世界全体の平均年齢も70歳を超えています。

 

*世界の人が長生きできるようになるとどうなるか

不健康な食生活で生まれる生活習慣病。これが今世界中で起きているのです。今世界の主要な死因はガン、脳卒中、心臓病です。

 

2015年WHOはこれが世界の課題だと言って、高齢化と世界の健康についてのワールドレポートを出しました。WHOはこのレポートの中で非常に大事なことを言っています。それは何かというと、「高齢化に対してどう向き合うか」ということです。

 

歳をとると病気になってお金がかかる、そんなことを耳にしたことがありませんか?高齢化のせいで医療費がかさみ経済が破綻する。だから高齢者や認知症患者はお荷物だという言い分です。でもWHOはそれは大きな間違いだと言っています。

 

加齢に対する意識を変革しましょう。「高齢者に対する出資は投資であってコストではない。」これは非常に強いメッセージです。

2011年英国の研究で、高齢者にかかる年金、福利、医療費などのコストを算出し、そこに高齢者がどれくらい個人消費し、税金を納めているのかを比べてみると、6兆円プラスであることがわかった。これが2030年には12兆円になることが予想されました。高齢化対策には確かにお金がかかる。でもそれによってもっと大きな富を生み出しているのだということです。

 

*「全ての人に健康と福祉を」

全ての年齢の人に優しい社会を作っていきましょうというのがWHOのメッセージです。MDGsの時は世界は今よりシンプルでした。貧乏とお金持ちの格差がありその間をつなぐものが足りなかった。そのリソースをどうやって動かすかが大きなテーマでした。たくさんの努力の結果、世界は大きく進歩し、そして複雑になりました。みんながある程度長生きするようになりましたが、環境汚染も高齢化も進みました。対策も色々難しくなりました。グローバル化は進みます。その複雑な社会を複雑に解決しましょうというのがSDGsなのです。17個もテーマがあります。それは大変です。

 

そうした中でWHOは「健康な生活を保障し、全ての年齢層の全ての人々の良い暮らしを推進していく」ということを目指しています。私の話が皆さんにとって何かしら参考になればと思います。ありがとうございました。(茅野さんのセミナーここまで)

<ネーミングライターは何を感じたか>

今回のレポートも担当しています。SDGsの前身MDGsが生まれたのが2000年、わずか20年前の状況が、今と比べると単純だったとはかなり驚きました。複雑化する時代の複雑な課題を他人事にせずに受け止めること。それは国連でありWHOの仕事だとして、私たちが考えることを止めてしまうわけにはいかない。伝染病が蔓延してしまうのは困るけど、心身ともに健康であるために世界中が迅速に支え合う社会に変革することは歓迎したいと思った。医師でもある茅野さんは、いわば地球の健康を守るための医療を施している人なのだ。セミナー後参加者からは様々な意見が寄せられた。茅野さんは一人一人の言葉に耳を傾け「その通りです」と受け止めている。それは白衣姿で患者にまっすぐ向き合い、問診しながら治療法を考えている医師のようであり、その言葉と姿がとても印象に残っている。(洛林舎)

【神戸ソーシャルセミナーwith まなびと 中山迅一氏(2019.12.04)】

12月最初のスピーカーは、まなびと理事長中山迅一さんです。SDG4「質の高い教育をみんなに」をテーマにお話を伺いました。

 

「まなびと」は神戸を拠点に地域の学び場づくりに取り組んでいる団体です。これまでどんな「学び」が生み出せたのか、どんな思いで活動されてきたのかを知りたいと会場に集まった参加者の視線にすこし気圧された様子の中山さんは、静かに話を始めていきます。

教育と地域の関係性

 

教育には携わろうと思っていたが教師になりたかったわけではありません。この道に進むきっかけはひとりの中学生との出会いです。塾にやってくるこの中3の生徒はいつまでたっても中学1年の英語のレベルを超えることができなくて、毎回同じ内容を数ヶ月教えることになり困惑しました。そのときの気づき。塾で教える1時間。それは1週間を時間に換算した1/168でしかない。問題は残りの167時間にあるのではないか。つまり授業を受ける1時間以外の残りの時間にその子を変えるきっかけがある筈。それを考えた時に頭に浮かんだ言葉が「地域」だった。地域をうまく回すことができると世の中も変わっていく、そんな予感がしました。

 

日本語が話せない在日外国人「せんせい さみちい」

 

ベトナム人の女性がいました。実はわたしが3年前に日本語を教えていた女性でしたが、再会した時Facebookで送ってきたメッセージが「せんせい さみちい」だったのです。3年経ってもひらがなでこれだけ。そして友だちもいない状況にこれまで教えてきたことはなんだったのかと考え込んでしまいました。彼女の抱える問題は、うまく日本語が話せないから日本人の友だちができない。そうなると日本語を話す機会に恵まれず上達もしないという悪循環に陥っていたこと。もしここで教師の立場なら日本語を勉強させることを考えるのだろうけど、地域で活動している自分は違う方法を思いついたのです。「日本語なんか話せなくても友だちはできる」そう彼女に声をかけて、外国人と話してみたい日本人の学生たちを集めて一緒に勉強する場をつくったところ、自己紹介を互いにできる機会が増えてとても楽しそうな時間を過ごしてくれたのです。そこで気づいた事は「教育は新しい可能性を与えてくれる。今の自分にはない可能性を開いてくれるものだ」。そして「地域の役割は、その人にしかない可能性を大切にしてくれる場」ではないか。だから「地域の役割はその人を受け入れることにある」と考えるに至ったのです。

 

*地域という場づくり、まなびとの誕生

 

そこでわたしは勉強で行き詰まった子どもが何につまずいているのか今興味をもっていることはなんだろうと、抱えている問題点に出会える場所を、コミュニケーションができる場をつくりたいと思ったのです。塾ならば先生と1対1だけれど、地域ならそこでいろんな人と関わらせることができるので、その人の中に眠っている可能性を開かせるチャンスがあると思い活動をスタートしました。教育機関の外側で地域に住む人が自分のこと、地域や社会のことを学べる場をつくろうと思い、そうしてNPOを立ち上げたのが29才の時です。

 

まなびとの理念

自ら学び、ともに学びあい、豊かな社会づくり

 

やりたいことをやって、いろんな人と関わっていけば、自然といい社会につながるはず。これが言いたかった。だから、まなびとはどんな人でもやりたいことが見つけられるという地域のまなび場なのです。

 

なぜやりたいことにスポットを当てているか、というとやりたいことが見つからないと人はその場から出ていくことができずに世界を閉じていく。孤立していく。そうするとやりたいことも見つからなくなってしまう。逆にやりたいことが見つかるとそれを通じて人と関わるチャンスが生まれる。いろんな人と関わることで、自分に対するいろんな言葉をもらうことができる。自分に対する評価などから自身を見つめ直すことで、社会に対する自分の役割というものが見えてくるのだと思います。だからやりたいことが大事なのだと、スタッフにはいつも言っています。

 

*「居場所」と「多様性」という相反する事柄を掛け合わせる

 

この2つは実は相反する価値観だと思っています。自分が安心できる場所は、単一になりがち。一方で多様性には自分の知らないことがたくさん含まれるものです。そこでいかに安心感のある多様性という場所で、自分と違うものに触れることができるかが大切で、そこに価値があると思っています。なぜこのようにやりたいことが大切だという思いに至ったか、それはわたし自身のこれまでの人生が大きく影響しています。

 

*有名大学、有名企業という人生のレールから途中下車して得たもの

 

わたしは京都大学に入学し、その後大手生保会社に入社が内定していながらも、自分がやりたいことが何か見つけられずに停滞した時期がありました。別居していた父の家で閉じこもり悶々とする生活。それでも久しぶりに同居する父は何も言わずにその時の自分を受け入れてくれました。そのままでいいと思ってくれている存在を感じて、誰かに認められるために人生を送るのではなく自分が本当にやりたいことをすることで自分も周りの人も幸せを感じることができるのだと思ったのです。

 

もう一つの出来事はその頃に行った海外でのエピソード。タイについて早々体調を壊してしまい、現地の友だちが働く店の一角でしばらく休ませてもらっていた時のことです。皆が働いている側で日本人がただ休んでいてもそのままにしてくれる。その店のボスがやってきても自然な言葉で私に声をかけて労ってくれた。なにか日本で働くことと違う概念がそこにあるように思えました。これまで有名大学を出て一流企業で働くという限られた価値観に自分も囚われていたから苦しい思いをしていたのだと気づくことができたのです。自分の幸せはいろんな人の価値観に出会うことで見つけてみたい。教育をこれからの自分の生きる道にしようとそこで思いを新たにしました。

 

*まなびとでの様々な活動内容

 

2014年任意団体として「まなびと」を設立。同年、NPO法人格に。2017年特例認定NPOとして認定団体としての試用をいただき、認定を受けるべく今に至っています。構成要員は有給スタッフが3名。スタッフが約50名。内8割強が大学生です。

事業内容は子ども向け事業と日本に住む外国人向け事業があります。現在では大学生スタッフが50名、関わっている子どもたちも週に50名くらい。外国人の方も50名くらいが活動しています。

 

 

「放課後学びスペース アシスト」

塾・学校・家庭といった既存の場所だけでは居場所を見いだせない子どもたちが安心して通うことができ、学校の勉強に限らず、人との関りの中から自分自身や社会について学べる場。

 

そこでは勉強よりもその子が何をしたいかを見つけることに価値を置いています。そこは安心して悩みを相談できるところでありたいと思っています。

 

「日本語教室だんらん」

日本に住む外国人のための日本語教室。

 

そこに集まる外国人の8割近くは日本語を話せるレベルは高いのです。でも文法はわかっているけれど日本語を使ったことがないという人たちです。ここにはもっと日本語を話す機会を得て、日本のことをもっと知りたい。文化を知りたいという人がいます。

 

「神戸こども探険隊」

神戸三宮エリアで、放課後に遊べる場所や学べる場所に困っている子どもたちが自由に遊び、学べる場所

 

ある時、「子どもたちを地域で育てることができていない。」「学習支援も大事だけど遊ぶ場所がないから楽しそうじゃない。」「礼儀も知らない」という声を聞き、週1回でもいいから遊ぶ場所をつくってみようと思い始めました。この活動は神戸市の「子どもの居場所作り事業」に認定されています。

ここでは学年が違う子どもたちが一堂に集まるので、みんなが一緒に遊べるように大学生スタッフが苦心したり、そもそも一緒に遊ばせるべきかどうかを議論したりしています。

 

「民間学童保育施設 北野くん家」

両親が共働きであるなどで、放課後一人で過ごしている子どもたちのために神戸三宮エリアで行っている学童保育事業。

 

こども探険隊の実績があって、神戸市からの要請を受けて始めた学童保育です。

 

*まなびとは何を目指しているか

 

まなびとが目指すことは、単に学童保育がやりたいわけでも日本語教室をやりたいわけでもありません。これを通じて出会える人たちと関わることで互いに学び合って、支え合うコミュニティをつくりたいのです。

 

それぞれの事業はいわば入り口。そこに入ってきた人がまなびとを知り、人と関わり混ざり合う中で、それぞれのやりたいことを見つけてもらえばいい。そんな場づくりをやっています。

 

そのほかにも単発で行なっている事業もあります。最近では日本にやってきたばかりの外国人向けに日本語学校の出張授業をおこなったり、外国人のボランティア部をつくり地域での役割を見つけようとしたりしています。一例を挙げると、これから日本に住もうとしている外国人の後輩に生活情報を届けようと、コンビニのポットの操作、どのボタンを押せばお湯が出るかを情報提供したりしています。

 

*まなびとのこれから

 

この秋に外国人と大学生でキャンプに行きました。みんなと重ねられる時間が長いし、遊んだり料理をしたりして一緒に時間を過ごすことで成果を共有できる。同じ体験をすることで絆を深めることに価値があります。これからは、いろんな人と一緒にキャンプすることができたらいいなと思っています。

 

わたしたちの活動はすごくいいプログラムを持っているわけでもありません。ごくごく当たり前のことをしているだけで、多分どこでもできることです。日本中どこでもできるような当たり前のことですが、ここからでないとやりたいということが生まれてこないと思っています。(中山さんのセミナーここまで)

 

 

<ネーミングライターは何を感じたか>

今回のレポートを担当しています。日頃は企業を相手に新規事業や新商品のネーミングをしたりする立場ですが、NPOとして地域に貢献する方々のお話を聞くのは私の脳の新たな部位を刺激してくれました

中山さんのトークに一番多く出てきた単語は「地域」。その言葉は時に「教育」と二軸で相関する意味合いで語られています。中山さんが語る地域という言葉には、二本足で歩行する人格を与えているような感覚を受けました。確かに教育現場という限られたスペースから180度体をひねり外を見れば無限の可能性があるのかもしれない。地域という様々な人を惹きつける磁場があれば、あまねく人はより成長することができるのだろう。セミナー終了後に参加者から質問が集まった。中山さんのゴールイメージは?という問いかけに、ひたすら入り口づくりに徹するというような答えがかえってきた。事業を大きくして全国に広げる、というような予想された回答を見事に裏切ってくれた。これまで日本が抱えてきた成長志向に乗り損ねている多くの人の存在に焦点をあて、中山さんは大きな丸い磁場をつくろうとしているのだ。でもそれはおそらく「地域」という言葉で言い尽くすことができない。いつかもっとふさわしい言葉がこのような集まりの中のどこからか生み出される、そんな予感がした。(洛林舎)

【神戸ソーシャルセミナーwith 神戸ダルクヴィレッジ 梅田靖規氏(2019.11.06)】

11月の神戸ソーシャルセミナーは、SDG3「健康と福祉」をテーマに、政令指定都市のなかでも最後にできた薬物等の依存者支援を行う「神戸ダルクヴィレッジ」。こちらの梅田さんにお越しいただきました。

「さみしい」「孤独」「人の目を気にしている」「バカにされたくない」「忘れたいことがある」・・・こんな言葉を聞いて皆さんはどんな人を想像するでしょうか。

誰もが感じたことのあるこのような感情。これはすべて薬物依存になったか方々から漏れた言葉だそうです。

薬物依存症とは、薬物を「使う病気」ではなく、薬物使用をやめたくても「自分の力ではやめられなくなっている病気」、と精神保健福祉士でもあり、アジア太平洋地域での薬物依存症施設研究のご経験もある梅田さんは話されます。人とのつながりをなくし、孤独や不安を強く感じる際につながりを持とうとするときに、不健康なつながりとして薬物に依存することが多い。ただ「だらしない」とか「いい加減な人」ではなく「つながりが切れてしまった人」「人に話したり相談したりできなくなってしまった人」が、一時的な解決として薬物を始め、やめられなくなってしまうそうです。また、特に女性の依存者が多い背景には、彼氏から誘われて、拒めずに辞められなくなってしまうこともあるそうです。

 

◎Addiction(依存症)の反対はConnection(つながり)

薬物関係で捕まると刑務所に連れていかれます。当然ですが厳しい状況に置かれ、多くの人はどんどん自分自身を追い込み、自尊心が落ちていく。そして、出所できても、友達も仕事も失っていて、最悪の状態からのスタート。社会のスティグマ(烙印)を背負っての社会復帰はいまの日本ではかなり難しい・・・また、アルコールやギャンブル依存は莫大な借金があるときは難しいですが、他人に相談することはまだできそうですが、薬物関係に関しては相談することも難しい。そこで受け皿になるのがダルク(Drug(ドラッグ)Addiction(依存症)Rehabilitation(リハビリ)Center(施設)の頭文字をとったDARC)。日本では1985年近藤恒夫氏が東京・日暮里で始めたのが日本での始まりだそうです。そして現在各地(今は全国に約80か所)にあるダルクはそれぞれが独立しており、神戸ダルクヴィレッジも3年前に設立されました。ダルクは依存症となった人たちが、安全で安心できる居場所として、依存症から回復した仲間が回復モデルとなり、寄り添うことで生き方を変え、一生を歩むプロセスが始まる場所でもあります。病院や行政と違い、24時間体制で共同生活を行う場所でもあるので、仲間同士で支え合う仕組みになっています。

◎日本の依存症者の社会復帰に必要なもの

依存症の方々は本当に苦しいときは「わかってほしい」「助けてほしい」「愛してほしい」という言葉が言えずに生きています。そしてこれらの人たちが社会復帰するのに最も大きな要因は名医の診察でも、刑務所での矯正教育でも、ダルクの力でもないと梅田さん。本当に必要なのは地域社会の理解と思いやりであり、失敗をチャンスに変える、それを受け入れてくれる世の中だそうです。

◎ライターツボの目

実は10数年前はご本人も絶対薬物をやめられないと悩み、苦しんでおられた梅田さん。3回の自殺未遂の末、ダルクに出会い、薬物を辞めることができ、施設におられるうちに精神保健福祉士の資格も取られ、JICAの仕事でフィリピンの貧困層の薬物依存回復施設で活躍もされました。自分とは遠い存在だと思っていた薬物依存症ですが、人とのつながりが切れること、人間関係が切れることに恐れることがきっかけではじまる話を聞いて、他人事ではないなと感じました。また講演の際に紹介いただいた動画(※)も観る中で、回復には人とのつながりがやはり重要なのだと改めて感じ、他の社会課題との共通点も感じる回でした。

 

https://www.youtube.com/watch?v=C8AHODc6phg&feature=emb_title
英語ではありますが、薬物依存についてわかりやすく紹介されています

【神戸ソーシャルセミナーwith WARAKATA 野口愛氏(2019.10.26)】

10月のフューチャーセッションは「自助グループ(※)」をキーワードにまだまだ日本には少ない、精神障害を持つ親の「子ども向け自助グループ」WARAKATA(ワラカタ)の野口さんにお越しいただき、お話とともに参加者同士で何ができるかを考える、対話型ワークショップフューチャーセッションを行いました。

※共通の問題や悩みを抱えた人が集まり、自主的に運営しているグループ。

神戸初、おそらく兵庫県でも初の精神障害・精神疾患の親を持つ子ども向け自助グループ立ち上げ人である野口さん。昨年から、同じ立場の人同士の交流会を定期的に開催、最近はこれらの活動に関するご講演もされているとのことです。なかなか親が精神障害ということが自己開示できないという子どもの立場ゆえの孤独がありますが、そもそも親が病気だという認識がなくそれが当たり前と思っている人も多いそうです。そして、周囲に適切な助けを求めることができずに、親の人生に巻き込まれることを「ヤングケアラー問題」ともいい、野口さんも親が入院し、そして遠く他県に同じような悩みを持つ人と出会ったことで、子ども同士だからこそ感じ、通じるものがあると気づき活動を始められたそうです。

自助グループは例えば精神障害を持つ当事者、その親、そして配偶者など、さまざまにありますが、立場によって感じること・課題や解決に向けたアプローチが異なるため、あえて「子ども同士」のグループを設立されました。

◎「あるある」を共感

同じような親を持つ子どもという状況の者同士で話し合うことで、共感できる人やことがあることの安心感や、過去、未来の自分に出会える機会があると野口さん。参加者や今までにない、不安や不満を吐き出せる場としても安全な場所になっているそうです。まだまだ活動は始まったばかりですが、ゆるく、細く、でも長く続くような活動ができればというところをお話しいただきました。

 

◎見て、聞いて、感じて、話して、創る。

野口さんのお話の後は、参加者同士でどんなことを「感じたか」「今このメンバーで何ができそうか」などを話し合いました。そして、その場にいる人たちの特技や経験、つながりなどを生かしてできそうなことをさらに実現性のあるアイデアにブラッシュアップしていきました。

 

<参加者の声>

・自助グループという存在、NHKドキュメントルのようなリアルなお話しを聞かせていただきありがとうございました。

・話すことでスッキリする。これは本当に大切なことだと感じました。ありがとうございました。

・自分に何ができるかを考えるキッカケになった。

 

◎ライター ツボの目

野口さんのお話を聞いて、個人的に自分にも思い当たるところがあるのではと感じるところが多々ありました。特に自分が置かれている状況になかなか気づけない、気づいてもどこに相談していいかわからない状況は例えばDV被害を受けている状況など他の社会課題にも通じることがあるなと感じました。同じ悩みを抱える・理解のある人たちによって安心して、自己開示できる場づくり、そしてそのような場が求める人にうまく届くことが本当に必要だと改めて思います。

【神戸ソーシャルセミナーwithフードバンク関西 浅葉めぐみ氏(2019.10.2)】

10月初めのゲストは、余った食べ物を預かって、必要なところに届けるフードバンク関西の浅葉さんにお話をいただきました。

まず初めに、80名ほどおられるというボランティアさんの中でも映像関係のお仕事をされている方が作られたという活動紹介を見て、フードバンク関西の取り組みについてご紹介いただきました。

 

毎月30人前後のボランティアさんが交代で、企業との交渉から、食料品の受け取り、検品、仕分けなどを拠点となる神戸市東灘区の倉庫で行い、阪神間の福祉施設を中心に月のべ100回ほど食料の無償配布を行っておられるそうです。

さらに別のNPOと協働した食のセーフティーネット事業「子ども元気ネットワーク」では母子家庭の特に困窮したご家庭に月に1回食料を宅配されたり、「ひょうご子ども食堂ネットワーク」の事務局として、兵庫県沿岸地域で活動する子ども食堂を中心に食料配達もおこなってられます。

 

・食べ物は「命の糧」。なのに、、、

日本の食料自給率はここ2年でさらに落ちカロリーベースで37%。しかも日本の食料輸入額は中国に次ぐ2位(2013年582億ドル)。人口が急増している中国ならその輸入額に納得いくのですが、その人口差にもかかわらずこれだけ輸入しているのは、それだけ大量廃棄が生じていると考えられます。平成22年と少し前のデータではありますが、約9000万トンの食資源のうち、廃棄物は約35%の3000万トン。そのうち約4分の1にあたる500~800万トンはまだ食べられる食品、いわゆる「食品ロス」だと言われています。

この約3000万トンうち事業系廃棄物は2000万トン。食品リサイクル法により、半分は飼料になるなど再活用が進んでいますが、残り約1000万トン家庭系廃棄物はゴミ箱に入ってしまえばそのまま焼却・埋め立て処分となってしまいます。その量はなんと94%!国連が毎年難民支援を行っている食料量は360万トン、日本のお米の総収量が800万トンだといわれているそうで、それ以上とは、、、

 

○2019年5月には食品ロスの削減推進に関する法律が成立したばかり。これからどうなるかは未知数とのことです。

 

・日本の常識は世界の非常識!?「3分の1ルール」という商習慣

皆さんは買い物をするとき賞味期限をどこまで気にしますか?実はこの賞味期限、メーカーが任意で決めることができるのです。そして最近あまり見なくなった消費期限、これは5日以内に品質劣化が起こる期限で、これを超えるとおなかを壊す可能性があるのですが、賞味期限を超えてもまだまだ食べられるものはほとんどだそうです。実際日本の缶詰の賞味期限は3年と業界的に決まっているそうですが、調味液に漬けて缶詰められた魚介類は、3~5年ほどしてからの方が味が馴染んででおいしいそうです。

そして、メーカー、卸売業者は賞味期限の3分の1を超えると小売業に買ってもらえず、廃棄、小売業者も賞味期限期間の3分の2が過ぎると、店頭からおろしてしまうという「3分の1ルール」という商習慣が日本にはあるそうです。また、賞味期限直前の商品に割引ラベルを付けて販売しているお店も見かけますが、ラベルを貼り付けるアルバイトを雇うコストと廃棄コストを比べると後者の方が割安であることを理由に賞味期限前でも破棄されてしまうことも多いそうです。

ちなみに「3分の1ルール」は日本独特のようで、アメリカ・カナダでは2分の1、イギリスでは4分の3の時点でメーカー・卸売業者が廃棄するそうで、他国と比べとても短いことがわかりました。

さらに京都大学の研究によると、一般家庭では手付かず賞味期限以前で廃棄した食料品の割合は廃棄量の2割を超えるというデータもあり、これは一世帯で年6万円、全世帯で年10兆円分も廃棄されている計算になるそうです。日本人の過敏な食の安全性へのこだわりは食品ロスが増える一因になっているのかもしれません。

 

○神戸市では、利用しなくなった賞味期限前の食料品をスーパーなどの店頭などで回収する「フードドライブ」の取り組みがここ最近増えている

 

・食品ロスを減らせば、みんなが「お得」?

現在の食品の価格には廃棄する分のコストまで乗ってしまっています。また現在先進国では大量生産大量消費が当たり前となっており、その調達コストが減ることは、途上国も自国分の食料を確保することにつながります。食糧事情の改善、無理な大規模耕作を控える、自給率を挙げ自国で生産された農作物や食料を消費することは、輸送による環境負荷なども抑えることにもつながるといわれています。

しかし、過剰生産・販売を抑制することは、企業側では利益確保の視点から難しいといわれており、消費者としての我々が過剰に食料品を買わない、できる限り捨てない、できるだけ国内産の農作物を選択することがカギとなってくるそうです。

 

・「食品ロス」と食べ物に困っている人たちをつなぐ「フードバンク」

昨今非正規就労人口が増加し、経済格差が広がっている日本。特に母子家庭の世帯の半分が非正規就労で生活し、平均年収は130万円。これは月12万円の生活保護レベル以下で子育てもしている世帯がいるということで、相対的貧困状態に陥ている子どもたちが7人に一人にもなっていることの一因。一方フードバンク関西に集まる食料は、例えばラベル印字ミスや配送用の外箱が壊れたカレー、皮の破れた豚まん、検疫で開けられて流通に乗らない焼き鳥などまだまだ賞味期限すら十分にあるのに破棄が決まったもの。これらを子ども食堂へ配布するほか、社会福祉協議会と連携し生活保護申請に来られた方に1週間分の食事として提供もされています。

 

○生活保護申請はどんなに急いでも支給されるまでに2週間かかる。申請に来る人は今日食べるお金もなくぎりぎりの人も多いそうです。

 

<ツボの目>

今月のテーマはSDG2「飢餓をゼロに」。普段は食品ロスをなくすということでSDG12「つくる責任 使う責任」の中でも特にターゲット12.3「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食品廃棄物を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品の損失を減少させる」というテーマを中心にお話しいただくことが多いフードバンクの取り組みですが、フードバンク関西では子ども食堂への支援やDVを受けた母子家庭への支援などにも力を入れておられるということで、今回ご登壇いただきました。

それにしても、フードバンクの仕組み自体は素晴らしい取り組みにもかかわらず、まだまだ日本では公的支援がまだまだ乏しく、その運営は厳しいそうです。全員がボランティアで行っても、倉庫代や流通させるためのガソリン代などの経費は掛かり、その金額は年間1000万円超!さらに収益性のない事業であることから、寄付に頼る経営はとてもスリリングとお話しされていました。食品ロスを減らしていくことももちろん重要ですが、食のセーフティーネットとして続けていくために、例えば企業活動の中で配送後空になった配送車の帰路を活用するなど資金以外の連携も仕組みによって進めることもできるのではと考えています。食、貧困、企業活動など複雑に絡み合った社会課題を解決するためにフードバンクの持続可能なモデルを作ることはSDGsをキーワードに連携し、「だれ一人取り残さない」持続可能な社会をつくる一つのケースになる可能性を感じます。

 

【神戸ソーシャルセミナーwith 森林保全 黒田慶子氏(2019.9.25)】

9月2人目のゲストは、日本の国土の約7割を占める「森林」を主なテーマに、神戸大学の黒田慶子先生にお話しいただきました。

・「里山」とは?

豊かな「森林」や「自然」と聞いて皆さんはどんなイメージを持たれるでしょうか?

原生林、田園風景、日本庭園・・・?そんな質問から、もともと森林総合研究所におられた黒田先生のお話は始まりました。

時と場合によりその意味が異なり、混乱のもとにもなる理由として、例えば欧米の「自然」とは「wilderness」という原野や荒野のイメージがあり、「自然保護」とはその状態をそのまま保つという意識が強いとのこと。また、「森林」の種の多様性についても日本より高緯度のヨーロッパにはその種の多様性も日本と大きく異なり、例えばドイツは日本の3分の2程度しか木々の種類がないそうです。一方、日本にはこのような原生林をイメージする場所はほとんどないそうで、千年以上前から山林を資源としての「里山」を利用しつつ持続させている歴史もあるそうです。このように一口に「自然」や「森林」といっても国や地域、時代などが違うとそのイメージも様々のようです。

「里山」とは「農用林」とよばれ、日本の森林面積の3割ほどにもなるそうで、伐採し熱源となる薪や炭、枝や落ち葉を肥料などに長年利用されてきたアカマツ林のこと。また、いわゆる「ドングリ」などが採れるコナラやカシ、シイ類の広葉樹林は「天然林」と呼ばれていますが、「自然に生えた天然の林」ではなく、人の手で植えたものだそうです。

そして、これとは別に、スギ、ヒノキなどの針葉樹林は全国平均で森林面積の4割にあたり、里山とは別の育林手法が定まった「人工林」と呼ばれるものとのこと。

○パッと見では同じ緑の山の木々も厳密にみると異なるもので、それがまた混乱を生んでいるようです…ちなみに「WOOD JOB~神去なあなあ日常~」という映画はオススメだそうです。

 

・持続可能な里山保全に欠かせない「林業」という生業

林業が劣っているわけではなく、管理しないようになっていることが近年土砂災害や倒木などの災害につながっていると黒田先生。林業は木を育てて切って、売るというまさに農作物と同じサイクルで進めていきます。そして、本来の里山は15年~30年周期で伐採・収穫しているのですが、社会の変化により1950年代からエネルギー革命により山の資源がどんどん使われなくなり、一見緑豊かな山林も良く見るとヤブ状態。効率的で、循環する資源活用の知識や経験を持っている職人は現在80代、90代の方だけになってしまっていることも日本の林業、森林保全の大きな問題だそうです。

 

・季節外れの紅葉?

一見赤茶色に紅葉しているように見える山々も良く見るとそれは松くい虫による「松枯れ」が起こっている状態かもしれません。いまから100年ほど前、日露戦争の物資輸送の梱包で使われた松の木により北米から長崎日本に入ってきたマツノマダラカミキリと呼ばれる「松くい虫」は、30~40年近く切られずに育ってしまった木々で繁殖しやすいそうです。ですので、里山を利用されなくなった1950年代から50年ほどたち、ちょうど松くい虫が繁殖しやすい太さに育った近年、2000年ごろから全国的に松枯れによる倒木問題などが顕著に出てきた、その時期と重なります。

○江戸時代の絵図を見るとその山々に生えた木々はほとんどが幹が細めのアカマツ。(その描き込みでわかるそうです)つまり人の手が入って管理された「里山」だった証拠だそうです。

 

・「木を切る=自然破壊」「木を植える=自然回復」??誤解の多い「森林保全」

本来の里山林は、植林不要。アカマツは幹を伐った後の切り株から「萌芽更新(ほうがこうしん)」と呼ばれ、芽が生え、再生するを繰り返すことができる、とても効率的な資源だそうです。一方スギやヒノキは植林が必要なのですが、これも植林ばかりではなく、きちんと間伐も行い伐って利用していかないと、森の生態系を崩してしまうことになるそうです。そうなると、イノシシやシカなどが人の住むエリアへ出てくることで獣害被害も増えてきます。木を育てて、伐って、きちんと活用することが「健康な森林」の第一歩となるそうです。また、森林に対する誤解や無知を解消するため、黒田先生は単に教育を行うだけではなく、自治体、地域、活動団体と連携しながら最近はグリーンツーリズムやジビエ等での食とつなげる活動、伐った木の加工利用など様々な取り組みも進められています。

 

<ツボの目>

実家が仏像修復をしているもので、松やヒノキには親しみがあったのですが、確かに江戸後期の仏像は松材が、しかも細かく刻まれたものが多く、その時代は木々が不足していたと聞いていました。また逆に戦国時代や江戸初期などは木材も豊富だったようで、輿石のパーツが大きなものが多いことを思い出しました。

日本の彫刻技術は仏像彫刻を中心に木彫が発展しており、そこからも木々とのつながりが深い印象です。日本の伝統工芸を持続可能にしていくためにも、森林保全の正確な取り組みが必要と感じます。

それにしても、江戸時代の寺社仏閣周りの絵図から生えている木々が見分けられるその精巧さにビックリでした!

【神戸ソーシャルセミナーwith Climate Youth Japan 今井絵里菜氏(2019.9.18)】

今年も暑い夏が続きましたが、まだまだ暑い9月初めの神戸ソーシャルセミナーはSDG13

「気候変動」をテーマに、Climate Youth Japanの共同代表の現役神大生、そして最近Fridays For Future Kobeの活動を始め、第1回の「気候マーチ」を企画中の今井さんからお話を伺いました。

○当日は、これまで数十年環境関連の活動をされてこられたベテランの方もご参加いただきました

 

・「気候変動問題」とは

「気候変動」というと一般的には「地球温暖化」といわれる問題で、20年間様々な手立てが取り組まれていきましたが、その状況はますます進んでいるといわれています。

この要因は大きく太陽活動の変化や海洋の変動などの「自然要因」と温室効果ガスの増大や森林破壊などの「人為的要因」に分かれています。国際的には懐疑論も議論されていますが、主に後者の影響が大きいことを前提にお話しいただきました。

国際的な専門家でつくるIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change/気候変動に関する政府間パネル)の報告によると、気候変動によって引き起こされる問題は主に8つ「海面上昇・高潮」「洪水・豪雨」「インフラ(電機、医療などのサービス)機能停止」「熱中症」「食料不足」「水不足(飲料水、かんがい用水)」「海洋生態系損失(漁業への打撃)」「陸上生態系損失」があるといわれています。そして、このままの状態で2050年まで進むと2050年9月中旬には、東京で真夏日連続50日、熱帯夜は連続60日、最高気温は8月に40.8度にはなると予想されているそうです。

 

・気候変動への関心の高まりの歴史

1980年代から砂漠化や酸性雨の影響、またオゾン層の破壊の現実化、温暖化の影響が顕著になってきたことから、1992年環境と開発に関する国際連協会議(一般的には「地球サミット」「リオ・サミット」)から始まり、1997年京都議定書では先進国が温室効果ガスの削減義務を負う形になりました。しかし、その他の国の削減義務はなく、2015年COP21(第21回気候変動枠組条約締約国会議)のパリ協定はこの京都議定書に代わる取り組みとして、すべての締結国が産業革命以前から平均気温を2度以上上げないことを目指すこととなりました。

○国際会議にも参加されてきた今井さん。京都議定書が採択されたのはなんと1歳の時!

 

COP23,24にユースのオブザーバーとして参加された際、特に海面上昇などで一番に温暖化の影響を受けるフィジーなどの島嶼(とうしょ)諸国の呼びかけが印象的だったそうです。またCOP24では特に脱炭素の実現等実施指針が採択され、ちょうどセミナー開催の翌週に開催される「国連機構行動サミット」では核国に今後10年間で温室効果ガス排出量を45%削減、2050年までに正味ゼロ排出を達成する、具体的現実的計画を持ってくるように呼びかけられました。

○「メタン・ハイドレードによる影響は?」「日本の場合人口急減することは加味されているのか」「脱炭素社会に向けたダイインベストメントは世界的には進んでいる」など、様々な知見から熱い議論が交わされました。

 

・立ち上がる若者たち

そしてこの一年で欧州を中心にFridays For Future(未来のための金曜日)と呼ばれる学生たちを中心とした活動が注目されています。スウェーデンの高校生グレタ・トゥーンベリさんが2018年8月から始めたこの学校ストライキは、世界的な広がりを見せ、教育現場の中には、校外学習の一環として参加するところも出てきているそうです。日本では2019年2月25日に東京で始まったそうで、その時は20名ほど。2回目には中学生を含む300人ほどが参加したそうです。もともと青年環境NGOネットワークClimate Youth Japanで活動していた今井さんも9月20日の世界中で同時開催される「グローバル気候マーチ」に合わせて、神戸でもFridays For Future Kobeを立ち上げ、その活動を先導。当日は日本全国10数か所でマーチが行われました。

○マーチ当日は雨。それでもセミナー参加者も参加し、その後の活動にもつながっているようです。

 

 

<コーディネーター坪田の「ツボの目」>

「2100年アナタは何歳ですか?」

「大人たちは『未来のために勉強しなさい』と言う。

でも、今のまま気候変動が進めば、まともな未来なんてないかもしれない。たくさん勉強して気候変動の危機を訴えても政府はまったく声に耳を貸さないのなら、どうして一生懸命勉強していられる?」

これはFridays For Futureの学校ストライキや気候マーチ(デモとは言わないようです)に参加する子どもたちの声だそうです。人生100年時代といわれるなかで、80年後今の子どもたちは十分その世界に生きている可能性がある。だからこそ、気候対策に真剣に取り組まない大人たちに子どもたちから行動を起こしているようにも見えます。なかには、学校が校外学習の一環としてマーチに参加するところも出てきているようです。

そう考えると、自分の世代よりも若い10代20代のユースたちがより自分事として声を上げることに納得します。まずは世界を含めた最先端の情報収集…までは追い付かなくとも、マイ箸、マイバックをできるだけ使ってみたり、普段の買い物にプラスチックが使われているものを避けたり、有機栽培の食品を選んでみたりとできることから行動に移していきたいです。

【神戸ソーシャルセミナーwith海洋保全 小島理沙氏(2019.7.17)】

みなさんこんにちは!

学生ライターの下尾です。

 

月2回のソーシャルセミナー、

今回はSDG課題14「海の豊かさを守ろう」がテーマです。

廃棄物の抑制や環境政策がご専門の小島先生に、持続可能な循環経済などの研究についてはもちろん、最近話題のプラスチックをはじめとする「海ゴミ」や身近な生活用品の容器包装削減などについてもお話を伺いました。

 

世界中でプラゴミが問題になっていることを知り、どうにかプラゴミを減らせないか考えている私にタイムリーなトピックで、前のめりで聞いておりました!

 

  • なぜ自然保護は大切なのか?~環境の持続可能性について考えてみよう~

なぜ環境は大切なのでしょうか?セミナーはそんな問いかけから始まりました。小島先生によると、環境の価値は利用価値非利用価値に分けられます。例えば、森林の利用価値は木材や食料の生産を指し、間接的な利用価値としては、土砂災害を防いでくれることが挙げられます。一方で、見えない非利用価値もあります。それは2つに分けられており、1つ目は遺産価値と呼ばれます。現在の環境を残すことで将来世代が得られる価値のことを指します。2つ目は存在価値です。存在するという情報によって得られる価値を指し、例として、野生動物の保全などが挙げられます。

 

同じように、海の豊かさについて考えてみましょう!

・地球の70%は海

・魚などの天然資源を作っている

・汚染物質を破壊、排除する機能がある

・気候変動の緩和能力がある

・レジャーとしての楽しみ

ex)釣り

・漁獲量→収入の向上

 

以上のように、見える価値も見えない価値もあるけれど、海は人類にとって非常に大切なものであるということがわかります。つまり利用価値としての海も、非利用価値としての海もどちらも大切なものだという共有の価値観のもと、海を守ろうということが世界共通の価値認識であるということですね。

 

 

  • どうして環境は破壊されていくのか

 

私たちは環境の利用価値も非利用価値もなんとなくは理解をしているはずなのに、どうして環境は破壊されていくのでしょうか。

それには、以下のような要因がが考えられます。

 

・人口増加、資源消費量の拡大

→世界規模で見ると人口は増えているため、資源の消費量も増えている。

 

・農林水産業の貿易品目の小品目化(比較優位による影響で生物多様性に影響)

 

・環境や資源に正しい価値を与えない経済体系や政策(外部性)

→環境や資源に対する正しい価値が分からないため、破壊されてしまう。

ex)富士山の入山料:富士山に上る価値は1000円なのか?

・生物資源の所有、管理、それに利用と保全から生ずる利益の不公平さ

 

・非持続的開発を促進する法律や制度

 

・知識の欠如

→3R*1(Reduce(発生抑制), Reuse(再利用), Recycle(有効活用) に対する認知度の低さ

 

<3R*1について知ろう>

①Reduce(リデュース)は、使用済みになったものが、なるべくごみとして廃棄されることが少なくなるように、ものを製造・加工・販売すること

②Reuse(リユース)は、使用済みになっても、その中でもう一度使えるものはごみとして廃棄しないで再使用すること

③Recycle(リサイクル)は、再使用ができずにまたは再使用された後に廃棄されたものでも、再生資源として再生利用すること

(3R推進活動フォーラムhttps://3r-forum.jp/3r/index.htmlより引用)

 

 

 

 

  • 海ゴミの問題(海洋プラスチック問題)

 

次に、世界中で話題になっている海洋プラスチック汚染ですが、問題は主に以下の4つに集約されます。

 

  1. 大型海洋生物への影響

→動物愛護の観点-カメの甲羅に魚網が絡まる、カメの鼻にストローがはさまるなど

 

  1. 大洋表層、深海海底のごみ漂流・散乱

→環境の存在価値-海にプラゴミが浮遊していても日常生活には直接影響はないが、どこか嫌な感じがする→海という存在価値を脅かしている

 

  1. 生態系ピラミッドでの有害物質を吸着したマイクロプラスチックの濃縮

→生物影響 マイクロプラスチックを飲み込んだ魚を人間が食べるとどうなるのか、科学的な人体への影響はまだ明らかでない

 

  1. 多量の沿岸漂着ゴミ

→景観問題-魚網、レジ袋の浮遊

 

海ゴミについてもう少し見ていきましょう。

<わかっていること>

人間起源のゴミが分布している。1950年ごろから人類は爆発的にプラスチックを使うようになりました。中でも、包装や漁具が多いとのことです。

 

<わかっていないこと>

プラスチックが海の中にどれくらいたまっているのか。人間の生活からどの程度海に流入しているのか。また、マイクロプラスチックの生物影響の程度も不明だそうです。

 

 

  • 消費者主導、供給側主導、どちらか一方では上手くいかない?!

上記で挙げたような問題に着手したいとき、どのような方法をとればいいのでしょうか。

供給側主導の場合、企業側には仕組みや制度の規制がありますが、市場のニーズによってインセンティブやルールの変更は往々にしてあります。また、政治的な意思決定の影響をかなり受けます。一方で、消費者主導の場合は消費者の需要を市場がとらえて回っていく形です。消費者主導では、啓発や普及が課題となっています。ところが、2016年の3000人に対する環境問題への意識調査で驚くことが明らかになりました。調査によると、3Rの意味を知らない人が約47.5%と、およそ半分の人が3Rの意味を理解していません。日本の環境教育は小学校で3Rについて習うはずですが、調査ではそれが見受けられませんでした。小島先生は考えました。供給側の対策も消費者側の対策もどちらか一方では足りないのではないか。両者が主導し、アクションを起こしていけば循環型に出来るのではないかと。そこで、小島先生と神戸大学の学生たちが所属するNPO法人ごみじゃぱんが考え出したのが、容器包装ゴミ削減を目指した減装(へらそう)ショッピングです。

 

  • 減装ショッピング-ゴミの問題を「捨てる」ときではなく「買う」ときから考える

 

小島先生と学生さんたちはまず、社会全体のゴミが減るようなモデルを作りました。消費者にゴミが少ない商品に気付いてもらい、価値を認めてもらった上でその商品を選んでもらう。供給側はその需要を察知して容器包装が少ない方をどんどん選択していく、といったモデルです。初めに、どれが容器量が少ない商品なのか分かるように、スーパーやコープで販売されている商品の容器をすべて計量しました。計測した数値をデータ化し、上位30%程度を推奨商品としているそうです。

 

減装商品の目印(NPO法人ごみじゃぱんホームページhttps://gomi-jp.jimdo.com/ より)

 

減装商品という印をつけるだけでは広まらないので、減装マークがどのような意味なのかという説明を神戸のスーパーやコープで地道に行いました。消費者とのコミュニケーションを大事にしながら活動を続けていたそうです。

山崎製パン株式会社さんとの共同での取り組み、減装マークパンの販売「ヤマザキパンプロジェクト」では、1年間を経て販売総数がおよそ1200万個に達しました。その結果、容器包装の発生抑制量は24トンにまでのぼりました。多くの容器包装量の削減に貢献されたことが分かります。

 

単なる啓蒙活動だけだと、企業さんは耳を貸してくれない、と小島先生は言います。全体のインセンティブ設計を考え、消費者にニーズがあるということをしっかりと企業側にアピールしていくことが大切だということでした。

 

 

 

○小島先生のお話しを聞いて

 

環境意識が高くない消費者も減装商品を選ぶという話を聞いて、非常に驚きました。セミナーのあと、気になってどうしてなのか小島先生に質問へ行きました。企業は包装を減らす分、コストを下げることが出来るという仕組みになっている。値段が安い方が消費者は嬉しいので、減装商品は環境意識が高くない方へもリーチ出来る施策になっているとのことでした。双方にとってメリットがあるから成り立つ減装商品。その仕組みに驚くとともに、少し重い気持ちにもなりました。それは、私が関心を持ち続けてきたフェアトレードのことを思い出したからです。フェアトレード製品は、価格が比較的高いものが多く、多くの消費者にとって手に届きにくいものです。消費者にとってフレンドリーであるとはとても言えません。そのため、社会的意識の高い消費者にしか響かないのではないかという話を友人と何度もしてきました。やはり企業側にも、消費者にもメリットがないと成り立たないのでしょうか。それでもなんだか、価格の安さが大きな訴求点になっているのはどこか悲しい気持ちになります。とはいえ、私も金銭的に厳しい学生の身です。無理せず環境に配慮したアクションをとれる減装ショッピングを知ることが出来て、大変うれしく思いました。

 

「消費側と供給する側、どちらか一方の対策ではダメ」という言葉が印象に残っています。私は、ちょうど去年の今頃から、「プラゴミを自分の生活からどうすれば少しでも減らせるか」ということを友人と相談し、実践していました。その1つに、マイボトル(水筒)を持ってカフェに行く、というものがあります。これは、身近なプラゴミについて話していた時、「カフェの飲み物ってプラカップ提供のところが多いよね」という話になり、自分の水筒を持っていったら、そこにドリンクを入れてくれるんだろうか?そんな疑問からスタートしました。

その実験によってわかったことがあります。カフェ側は提供するドリンクの量に合わせてコップを規格化しています。そのため、私たちがマイボトルを持っていっても、それぞれボトルによって容量が異なるため、スムーズにドリンクを提供することが難しいのです。実際私がよく利用するカフェにマイボトルを持っていたところ、「ボトルの容量が分からないので一旦既存のプラカップに入れたものを移すという形になります」と言われました。一方で、計量カップで持参したボトルの容量を図ったうえで、ドリンクを入れてくださるカフェもありました。でも、混雑している時にこれをお願いするのは憚られますよね。こういったことから、現在の日本のカフェのドリンク提供スタイルでは、マイボトルを持ち歩こうという行動を起こしにくいなと感じました。もっと消費者側がマイボトルを持ち歩くというアクションをとるようになれば、カフェ側も変わったりするのでしょうか…?

それからは、なるべくリユースカップでドリンクが提供されるカフェを意識的に選ぶようにしています。そんな中、先日韓国に行った際、カフェで新たな気づきがありました。ドリンクを注文した時に、店員さんがプラカップが良いかガラスカップが良いか聞いてくださったのです。テイクアウトしたいひとはプラカップを選ぶでしょうし、その場で飲むならガラスカップでいいですよね。このように、カップを自ら選択できるスタイルは非常に良いなと思いました。

何かを変えたいと思ったとき、意識すること。「企業、消費者、いろんな人を巻き込んでいくために全体のインセンティブ設計をまず行う」これからも覚えておきたい視点です。

 

 

 

森林、海、富士山のイラスト https://www.irasutoya.com/

【神戸ソーシャルセミナーwithシン・エナジー 乾正博氏(2019.6.12)】

神戸ソーシャルセミナー、2019年6月のテーマは「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」

今回はシン・エナジー株式会社社長の乾さんから、「エネルギーと人類」と題して、再生エネルギーの可能性についてお話を伺いました。

参加者からも次々と質問がなされ、さらに参加者同士のやりとりも行われるなど、終始和やかな雰囲気で、密度の濃い時間が流れていました。

◎会社概要

シン・エナジーさんでは、「未来の子どもたちからの『ありがとう』のため生きとし生けるものと自然が共生できる社会を創造します」を経営理念とされています。社名の「SymEnergy」は「Symbiosis(共生)」と「Energy(エネルギー)」の組み合わせによるものです。エネルギーを基軸に、自然との共生を目指す思いが込められています。

事業領域としては、エネルギーを基軸に、持続可能な地域社会をデザインすることです。地域ごとに最適なエネルギーの活用方法を提案するなどといった、地域ごとのエネルギーのプロデュースとエンジニアリングを主にされています。

 

◎エネルギーの歴史と問題

産業革命以前では、主なエネルギーは熱でした。その後の産業革命以降では、蒸気機関などエネルギーの大型化が起こり、石炭が資源として使用されるようになります。

そして、1879年エジソンが白熱電球を実用化したのをきっかけに、電気が都市のインフラとなり、火力発電が開始され、そして1970年代以降、電力の大量消費時代へと突入していきました。1973年のオイルショック以降、原発開発も加速しましたが、安心安全のリスクなどが現在でも懸念されています。

そして、2012年、固定買い取り制度(FIT制度)がスタートしたと同時に、再生可能エネルギーの時代へと突入していきました。パリ協定や、SDGsなどをはじめとして、政府も企業も環境目標を立て、その環境目標を開示する時代となりました。再生エネルギーについては、第5次エネルギー基本計画で2010年度では約10%であった再生可能エネルギーを2030年度には22%から24%にするといった、再生可能エネルギーを将来の主力電力の一つにする目標がたてられました。

産業革命・電気社会が始まってからの200~150年で産業はこれまで経験したことのないスピードで発展してきました。それに伴って、自然・資源・環境のキャパオーバーが生じ、生態系が崩壊し始めているのです。

 

◎カーボンニュートラルについて

カーボンバジェットとは、2℃上昇までに残されているCO2排出量のことです。1861年~1880年からの気温上昇を66%以上の確率で2℃に抑えるには、2011年以降の人為起源の累積CO2排出量を約1兆トンに抑える必要があります。もともと2℃上昇させるために必要なCO2排出量は3兆トンですが、現在2兆トンは使われてしまいました。

また、カーボンプライシングとは、CO2の排出に対して炭素価格と呼ばれる価格を付与することで、化石燃料消費などのCO2を排出する行為を抑制する施策の総称のことです。これにより、日本でも、脱酸素を目指す動きが起こっています。その中の一つが、再生可能エネルギーというわけです。

 

◎エネルギーを考える

再生可能エネルギーには、太陽光発電、水力発電、地熱発電、風力発電、バイオマス発電があります。これらすべてに共通するのは、発生するカーボンが0であるという点です。特にバイオマス発電は、木材や家畜排せつ物などの再生可能な生物由来の有機資源によるもので、焼却などしても大気中のCO2を増加させない、カーボンニュートラルな発電方法です。その点でバイオマス発電は、エネルギー問題、地球温暖化の解決に加え、山林の活性化、廃棄物問題の解決、資源循環型社会の実現を可能にするエネルギーであると言えます。また、風力発電、地熱発電は、行うことができる地域が限られていますが、水力、太陽光発電、バイオマス発電はどこでも行うことのできる可能性があります。そのため、これらをいかに地方の国土をつかってバランスよく増やし、エネルギーを作っていくのかがこれからの課題であると伺いました。

 

◎未来設計をご一緒に!事例をまじえ

未来設計をするためのポイントとして、次の二点を挙げられました。

ひとつは、国産エネルギー開発によるエネルギー自給率の向上、もう一つは、地域循環型社会の設計です。

日本は2012年以降、エネルギー自給率が10%未満で推移しています。また、日本全国の1724市町村の約9割でエネルギー収支が赤字となっています。それはなぜかというと、日本は化石燃料に国家予算の30%に匹敵する年間27兆円を海外に支払っているからです。

バイオマス発電計画も例外ではありません。なぜなら、燃料となるPKS(パームヤシ殻)、パーム油、木材を国外からの輸入に頼る、バイオマス発電計画が非常に多いからです。このバイオマス発電計画は、国民負担による賦課金は海外流出し、運搬には船の燃料となる石油が必要となります。そのため、結局お金は海外に流出し、地域経済に貢献せず、バイオマス産業都市構想に反します。

また、世界の森林は減少していますが、日本の森林は増えています。それは日本で一次産業が発達していないためです。昭和30年代は0.8億㎥の伐採実績がありましたが、現在では成長率が1億㎥/年に対して伐採量は0.3㎥/年(平成24年)になっており、日本の森林の十分な量が利用可能なのです。

地元の間伐材などを使用した場合、地元への経済効果としては(1MW規模の発電の場合)木材1万t、約7000万円分が、売電する際には約3億円になります。

 

◎シン・エナジーさんが取り組んでおられる事例

飛騨高山しぶきの湯バイオマス発電所では、近隣のペレット工場と連携をして、バイオマス発電を行い、しぶきの湯へ熱を販売、さらに中部電力に電気を売るというモデルができています。このことにより、排熱を温浴施設で加温することで、灯油を削減する効果があります。このような小さな発電所を全国各地にちりばめることによって、雇用経済を回す効果もあります。

内子バイオマス発電では、材木市場、ペレット工場、バイオマス発電所を一か所に集め、運搬の効率化をはかられています。さらに、地元のパートナーが主体で行われているため、地元に利益が還元され、また燃料供給事業者も事業に参加することで、長期安定的な燃料供給が実現されています。さらに、熱の有効活用も行われています。

 

このように大型発電所からバイオマス発電をはじめとして、太陽光、地熱、風力などが地域ごとに導入されることによって、国内循環経済が大きくなります。海外の化石燃料を国内資源に代替することで、地域活性化を行うことができるのです。

シン・エナジーさんでは、活用できていない再生可能エネルギーを使い切るエネルギーの自立分散型コミュニティが形成され、さらに、域内再生可能エネルギーを他地域へ供給する「再生エネルギーリッチ」なエネルギー社会となることが目指されています。

再生エネルギーを取り入れた生活を地域ごとに創ることが持続可能な共生社会を実現し、地域ごとの自立と永続性を達成できるのです。

 

学生所見

私は、今回の神戸ソーシャルセミナーを恐れていました。「エネルギー」の話なんて、ゴリゴリの文系、文学部の私にはまったくわからない、そう思っていました。しかし、今回のソーシャルセミナーは思わぬところで私の興味関心につながっており、一瞬でシン・エナジーさんのファンになりました。

私は、地方創生にとても関心を持っています。今、少子高齢化のあおりを受け、各地で過疎化が進み、元気のない地域が多く出てくる中、そんな地域が自立し発展していくためには、いかに地域内で経済を回し、地域内で持続的な発展をするかが大切であると語られるようになってきています。いかに、地域独自の商売を生み出すのか、雇用を生み出すのか、そのような視点で、私は地方創生を追っていました。

しかし、今回のお話では「エネルギー」を地域で生み出すことによって、地域の経済を潤し、地域ごとの自立と永続性を達成する、というものでした。地域活性化の一つのアプローチとして、エネルギーが用いることができるという視点が私には大変に驚きで、感銘を受けました。

私たちが日ごろ当たり前すぎて気づかないほどに使用しているエネルギーは、確かに海外に依存しきっているものです。電気を使うこと、車に乗ること、料理をすること。その行為ひとつひとつが、海外にお金を払っている、ということを意識して生活したことがありませんでした。しかし、シン・エナジーさんの手にかかれば、電気を使い、車に乗り、料理をするなど、私たちが生きていく上でせざるを得ない行為が、地域の経済を潤し、地域を自立させ、永続的な発展をさせることができる。なんて素敵なんだろう。

このシステムが全国各地に広がり、環境問題の解決、地域の持続的発展、山の問題など、様々な問題を私たちが「生きる」ことで解決し、日本社会が大きく変わっていくことがとても楽しみです。

【神戸ソーシャルセミナーwith 社会福祉法人すいせい 岸田耕二氏(2019.5.29)】

神戸ソーシャルセミナー、5月のテーマは「働きがいも、経済成長も」

今回は「社会福祉法人すいせい」の岸田耕二さんから主にすいせいさんの取り組みについて、お話をお聞きしました。

 

◎通所事業(ひきこもり~働き続ける)

すいせいさんは、ストレスマネジメントの技術を精神病者の支援から、そして適職マッチングの技術を発達障害の認知特性から得て、様々なプロジェクトを行っておられます。

すいせいさんの支援の方法の一つである、「Suisei Step Style」では、一人一人に合わせた、オーダーメードの支援が行われており、様々な経験を積み、成長、前進を実感できるようなプログラムが用意されています。

まず、地域活動支援センターで生活訓練を行い、次に社会訓練、自立訓練、そして実習を通して、就労に移行していきます。このように、まずは居場所を作り、生活、仕事へと段階を踏んで支援を行っておられます。

このようなすいせいさんの就労支援を受けた方の90%は1年間、70%は3年間、就労しし続けておられます。

 

◎脳には癖がある?

以下の写真を見てください。

写真のワンピースとスニーカーは何色に見えるでしょうか?私は、ワンピースは青と黒、スニーカーはピンクと白に見えます。しかし、その一方で、金と白、グレーと緑に見える方もいるそうです。

このように、人それぞれ認知情報処理の方法が異なるのです。人の脳には癖があり、特に幼少期に好んでいた遊びによって脳の癖がわかり、適職がわかることも教えていただきました。

 

◎すいせいさんの取り組まれているプロジェクトについて

すいせいさんの現在、取り組まれているプロジェクトを7つ紹介されました。

 

Project1 超短時間就労 働き方改革

これは、今まで行われてこなかった超短時間就労を支援するサービスです。

現在の日本の障害者法定雇用率制度で定められている算定基準は週20時間以上であるため、企業が20時間より少ない時間で人を雇うことはそれまでなかなかありませんでした。しかし、障がい者の方には、週に20時間も働けなくても、超短時間であれば働ける人もおられます。

その一方で、現在、中小企業をはじめとした企業の多くは人手不足です。

このような障がい者の方、企業の互いのニーズをマッチングするのが、この取り組みです。

その方法は、事業者の仕事を細かく洗い出し、本人しかできない仕事、他の人手も可能である仕事に分類し、障がい者の方のできること、向いていることに合わせて、障がい者の方を雇用します。

例えば、タイピングが得意な人とデータ入力に手が回らない企業、手作業とスピードに自信がある働きたい人と出荷作業をしてほしいなどのニーズを持った人手が欲しい企業をマッチングします。

また、業務が完全に終了すれば、それ以上雇用する必要はなく、決められたこと以外はやらなくてもよい、というシステムになっています。

しかしここで、障がい者のやれる仕事と、やれそうな仕事には乖離があります。障がい者の中にはTOEICで800点をとられるなど、私たちの想像もしないような能力を持っている方もおられるのです。そのため、障がい者の方の職域を広げることは今後の課題でもあります。

 

Project2 大学生支援

現状・将来を悩んでいる学生が多いという社会的な問題に目をつけ、すいせいさんの持っておられる就労支援のノウハウを生かした取り組みが行われています。そのためすいせいさんのオフィスは大学生が来やすいように、おしゃれであるそう。

現在では、県や市から委託を受けて大学ネットワークづくりや社会の中で暮らしていくためのスキルを身につける訓練である、SST(ソーシャルスキルトレーニング)を行っておられます。

 

Project3 生活困窮者支援

生活困窮者の支援、就労支援準備の事業も行っておられます。

この事業の目的は、生活保護にならないように予防をすることと、社会復帰ができるようにフォローすることです。

活動としては、これまでの就労支援ノウハウと事務所を活用して就労を目指しておられます。

 

Project4 ひきこもり支援

ひきこもりの方と社会との接点を作る活動を行われています。

ひきこもりの方は、将来について聞かれるのが苦しい、このままじゃいけない、自分が子どもであるのが親に申し訳ないと思いながら、ひきこもっておられる方が多数います。

その一方で、ひきこもりの家族の方は、ひきこもりの方との接し方がわかりません。そのため、両者の思いを翻訳する、家族以外の介入が求められているというニーズがありました。

あるひきこもりの方は、自分の希望と適職を診断した後、すいせいさんでのアルバイトを週に2日から始め、現在は週5日勤務を目指しておられます。

 

Project5 企業×教育

企業と、主に特別支援学校のお互いのニーズをマッチングさせる取り組みもあります。

特別支援学校では、生徒にいろんな体験を積ませたい、生徒の雇用先を確保したいなどといったニーズがあります。また企業の側には、学校の実習先がない、地域貢献をしたい、人材が不足しているというニーズがあります。

実際に2つの学校に50社以上の会社が訪問されており、現在では教育委員会と話し合いが行われている最中であるそうです。

 

Project6 ほっとかへんネットたるみ

ほっとかへんネットたるみにも関わっておられます。

ほっとかへんネットたるみとは、垂水区内にある社会福祉法人(保育園・こども園・高齢者施設・障がい者施設・児童施設)が集まり、垂水区民の方がいつまでも安心して暮らせるよう、住みよい「垂水」を創っていこうという連絡協議会のことです。

ここでは、高齢者の集う場を作る、子どもが高齢者の方と遊べるイベントを行う、障がい者の方とつながりの再構築するなどといった活動を行っておられます。

地域の福祉活動のそれぞれの担う領域を拡大させ、混ざり合わせることで、誰も取りこぼさない支援、地域貢献を行っておられます。

Project7 社長の知能検査

社長の知能検査を行うプロジェクトにも取り組まれています。

社長には個性的な人が多いと気づかれたすいせいさんは、社長に発達障害の診断を受ける時に使うテストであるWAISテストをするとどうなるのか、について検証されました。

その結果、経営者の中には、発達障害の方と同じような結果が出る方もある程度おられることがわかりました。ある経営者の方は、学校教育の「勉強」「人間関係」「同調圧力」がはまらない結果が得られました。しかし、ひきこもりになったりせずに社会で活躍されているのは、幼少期に「違い」を認めてくれる、応援してくれる大人がいた、からだそうです。

このことから、大切なことは能力だけではなく、「違い」を本人や周りの人が理解し、認め、褒められ、「自分でいいんだ」という自信を持たせることが大切であると述べられました。

 

◎なぜ違いが生まれるのか

では、なぜこのように人間には違いが生まれるのでしょうか。アリの生存戦略から、その答えについて教えていただきました。

アリはお尻からにおいを出して、行列を作ります。しかし、一部のアリにおいがかげないために列を作りません。それは、すべてのアリが同じ能力を持ち、同じところに行列を作ると、絶滅をしてしまうためです。そう、すべての能力には意味があるのです。

 

◎A society where all people function

「ちがう自分」を「いいね」できる、社会もちがいを理解し活用できる。みんながギアとなり、みんなが機能する仕組みづくり、「A society where all people function」がこれから大切になっていくでしょう。

 

 

所感

「福祉」と聞くと、学生の私にはどこか固いイメージが浮かび、「福祉」はなじみの薄い単語でした。しかし、今回のお話を通じて私の「福祉」のイメージが大きな音を立てて崩れ去っていきました。

誰もがありのままでよくて、誰もがありのままで素晴らしくて、誰もがありのままで活躍できる世界がここにはある。人との違いが社会の歯車となって、社会を動かす大きな力になる。

そんなことを、身をもって教えてくれる存在が「福祉」であることを知りました。今まで堅苦しい「福祉」が柔らかくて、カラフルな印象に変わりました。

この社会ではこれからも必ず、この社会の持続のためににおいがかげない多くのアリが社会に生きづらさを感じてしまうに違いありません。そんな時に、「福祉」は必ずそのアリたちに寄り添ってくれることでしょう。

そんな優しく柔らかな福祉は、いつでも私たちの拠り所としてあり続けてほしい。そしてもっとたくさんの人に触れてほしいと感じました。一緒に触れてみませんか?