【11月13日更新】神戸ソーシャルセミナー今後の予定!!

神戸市協働と参画のプラットホームが企画・実施する、神戸ソーシャルセミナーと、神戸ソーシャルセッション月一情報交換交流会について、本日時点での予定をおしらせします。(一部のイベントについては、いつもと開催日時が異なっております!!)


▲今後の実施予定(画像のクリックでPDFが開きます)

上記PDFファイルを随時更新してまいりますので、早く情報を知りたい!という方は、このページをブックマークしていただければ幸いです。なお、誠に恐縮ですが、PDFに予定の登壇者さま、日時は予告なく変更する場合がありますので、あらかじめご了承ください。


▲これまでの実績(画像のクリックでPDFが開きます)

確定したセミナーにつきましては、これまで通り、公式Facebookページにて、イベントページを立ち上げ、公開・参加募集を行ってまいりますので、本ページと合わせて、ブックマークなどをして最新の情報をご確認いただければ幸いです。

神戸市協働と参画のプラットホーム
住 所 神戸市中央区雲井通5-3-1サンパル2階
電 話  078-241-9797(神戸ソーシャルキャンパスにつながります)
メール plat@123kobe.com
サイト https://platform.city.kobe.lg.jp
Facebook https://www.facebook.com/kobeplatform/
Instagram https://www.instagram.com/kobe_plat/

開館時間‣14:00~20:30
定休日‣月曜・祝日・年末年始
私たちは、多様な主体が連携・交流できる場を開設しています!
担当/坪田・矢野

【神戸ソーシャルセミナーwithフードバンク関西 浅葉めぐみ氏(2019.10.2)】

10月初めのゲストは、余った食べ物を預かって、必要なところに届けるフードバンク関西の浅葉さんにお話をいただきました。

まず初めに、80名ほどおられるというボランティアさんの中でも映像関係のお仕事をされている方が作られたという活動紹介を見て、フードバンク関西の取り組みについてご紹介いただきました。

 

毎月30人前後のボランティアさんが交代で、企業との交渉から、食料品の受け取り、検品、仕分けなどを拠点となる神戸市東灘区の倉庫で行い、阪神間の福祉施設を中心に月のべ100回ほど食料の無償配布を行っておられるそうです。

さらに別のNPOと協働した食のセーフティーネット事業「子ども元気ネットワーク」では母子家庭の特に困窮したご家庭に月に1回食料を宅配されたり、「ひょうご子ども食堂ネットワーク」の事務局として、兵庫県沿岸地域で活動する子ども食堂を中心に食料配達もおこなってられます。

 

・食べ物は「命の糧」。なのに、、、

日本の食料自給率はここ2年でさらに落ちカロリーベースで37%。しかも日本の食料輸入額は中国に次ぐ2位(2013年582億ドル)。人口が急増している中国ならその輸入額に納得いくのですが、その人口差にもかかわらずこれだけ輸入しているのは、それだけ大量廃棄が生じていると考えられます。平成22年と少し前のデータではありますが、約9000万トンの食資源のうち、廃棄物は約35%の3000万トン。そのうち約4分の1にあたる500~800万トンはまだ食べられる食品、いわゆる「食品ロス」だと言われています。

この約3000万トンうち事業系廃棄物は2000万トン。食品リサイクル法により、半分は飼料になるなど再活用が進んでいますが、残り約1000万トン家庭系廃棄物はゴミ箱に入ってしまえばそのまま焼却・埋め立て処分となってしまいます。その量はなんと94%!国連が毎年難民支援を行っている食料量は360万トン、日本のお米の総収量が800万トンだといわれているそうで、それ以上とは、、、

 

○2019年5月には食品ロスの削減推進に関する法律が成立したばかり。これからどうなるかは未知数とのことです。

 

・日本の常識は世界の非常識!?「3分の1ルール」という商習慣

皆さんは買い物をするとき賞味期限をどこまで気にしますか?実はこの賞味期限、メーカーが任意で決めることができるのです。そして最近あまり見なくなった消費期限、これは5日以内に品質劣化が起こる期限で、これを超えるとおなかを壊す可能性があるのですが、賞味期限を超えてもまだまだ食べられるものはほとんどだそうです。実際日本の缶詰の賞味期限は3年と業界的に決まっているそうですが、調味液に漬けて缶詰められた魚介類は、3~5年ほどしてからの方が味が馴染んででおいしいそうです。

そして、メーカー、卸売業者は賞味期限の3分の1を超えると小売業に買ってもらえず、廃棄、小売業者も賞味期限期間の3分の2が過ぎると、店頭からおろしてしまうという「3分の1ルール」という商習慣が日本にはあるそうです。また、賞味期限直前の商品に割引ラベルを付けて販売しているお店も見かけますが、ラベルを貼り付けるアルバイトを雇うコストと廃棄コストを比べると後者の方が割安であることを理由に賞味期限前でも破棄されてしまうことも多いそうです。

ちなみに「3分の1ルール」は日本独特のようで、アメリカ・カナダでは2分の1、イギリスでは4分の3の時点でメーカー・卸売業者が廃棄するそうで、他国と比べとても短いことがわかりました。

さらに京都大学の研究によると、一般家庭では手付かず賞味期限以前で廃棄した食料品の割合は廃棄量の2割を超えるというデータもあり、これは一世帯で年6万円、全世帯で年10兆円分も廃棄されている計算になるそうです。日本人の過敏な食の安全性へのこだわりは食品ロスが増える一因になっているのかもしれません。

 

○神戸市では、利用しなくなった賞味期限前の食料品をスーパーなどの店頭などで回収する「フードドライブ」の取り組みがここ最近増えている

 

・食品ロスを減らせば、みんなが「お得」?

現在の食品の価格には廃棄する分のコストまで乗ってしまっています。また現在先進国では大量生産大量消費が当たり前となっており、その調達コストが減ることは、途上国も自国分の食料を確保することにつながります。食糧事情の改善、無理な大規模耕作を控える、自給率を挙げ自国で生産された農作物や食料を消費することは、輸送による環境負荷なども抑えることにもつながるといわれています。

しかし、過剰生産・販売を抑制することは、企業側では利益確保の視点から難しいといわれており、消費者としての我々が過剰に食料品を買わない、できる限り捨てない、できるだけ国内産の農作物を選択することがカギとなってくるそうです。

 

・「食品ロス」と食べ物に困っている人たちをつなぐ「フードバンク」

昨今非正規就労人口が増加し、経済格差が広がっている日本。特に母子家庭の世帯の半分が非正規就労で生活し、平均年収は130万円。これは月12万円の生活保護レベル以下で子育てもしている世帯がいるということで、相対的貧困状態に陥ている子どもたちが7人に一人にもなっていることの一因。一方フードバンク関西に集まる食料は、例えばラベル印字ミスや配送用の外箱が壊れたカレー、皮の破れた豚まん、検疫で開けられて流通に乗らない焼き鳥などまだまだ賞味期限すら十分にあるのに破棄が決まったもの。これらを子ども食堂へ配布するほか、社会福祉協議会と連携し生活保護申請に来られた方に1週間分の食事として提供もされています。

 

○生活保護申請はどんなに急いでも支給されるまでに2週間かかる。申請に来る人は今日食べるお金もなくぎりぎりの人も多いそうです。

 

<ツボの目>

今月のテーマはSDG2「飢餓をゼロに」。普段は食品ロスをなくすということでSDG12「つくる責任 使う責任」の中でも特にターゲット12.3「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食品廃棄物を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品の損失を減少させる」というテーマを中心にお話しいただくことが多いフードバンクの取り組みですが、フードバンク関西では子ども食堂への支援やDVを受けた母子家庭への支援などにも力を入れておられるということで、今回ご登壇いただきました。

それにしても、フードバンクの仕組み自体は素晴らしい取り組みにもかかわらず、まだまだ日本では公的支援がまだまだ乏しく、その運営は厳しいそうです。全員がボランティアで行っても、倉庫代や流通させるためのガソリン代などの経費は掛かり、その金額は年間1000万円超!さらに収益性のない事業であることから、寄付に頼る経営はとてもスリリングとお話しされていました。食品ロスを減らしていくことももちろん重要ですが、食のセーフティーネットとして続けていくために、例えば企業活動の中で配送後空になった配送車の帰路を活用するなど資金以外の連携も仕組みによって進めることもできるのではと考えています。食、貧困、企業活動など複雑に絡み合った社会課題を解決するためにフードバンクの持続可能なモデルを作ることはSDGsをキーワードに連携し、「だれ一人取り残さない」持続可能な社会をつくる一つのケースになる可能性を感じます。

 

【神戸ソーシャルセミナーwith 森林保全 黒田慶子氏(2019.9.25)】

9月2人目のゲストは、日本の国土の約7割を占める「森林」を主なテーマに、神戸大学の黒田慶子先生にお話しいただきました。

・「里山」とは?

豊かな「森林」や「自然」と聞いて皆さんはどんなイメージを持たれるでしょうか?

原生林、田園風景、日本庭園・・・?そんな質問から、もともと森林総合研究所におられた黒田先生のお話は始まりました。

時と場合によりその意味が異なり、混乱のもとにもなる理由として、例えば欧米の「自然」とは「wilderness」という原野や荒野のイメージがあり、「自然保護」とはその状態をそのまま保つという意識が強いとのこと。また、「森林」の種の多様性についても日本より高緯度のヨーロッパにはその種の多様性も日本と大きく異なり、例えばドイツは日本の3分の2程度しか木々の種類がないそうです。一方、日本にはこのような原生林をイメージする場所はほとんどないそうで、千年以上前から山林を資源としての「里山」を利用しつつ持続させている歴史もあるそうです。このように一口に「自然」や「森林」といっても国や地域、時代などが違うとそのイメージも様々のようです。

「里山」とは「農用林」とよばれ、日本の森林面積の3割ほどにもなるそうで、伐採し熱源となる薪や炭、枝や落ち葉を肥料などに長年利用されてきたアカマツ林のこと。また、いわゆる「ドングリ」などが採れるコナラやカシ、シイ類の広葉樹林は「天然林」と呼ばれていますが、「自然に生えた天然の林」ではなく、人の手で植えたものだそうです。

そして、これとは別に、スギ、ヒノキなどの針葉樹林は全国平均で森林面積の4割にあたり、里山とは別の育林手法が定まった「人工林」と呼ばれるものとのこと。

○パッと見では同じ緑の山の木々も厳密にみると異なるもので、それがまた混乱を生んでいるようです…ちなみに「WOOD JOB~神去なあなあ日常~」という映画はオススメだそうです。

 

・持続可能な里山保全に欠かせない「林業」という生業

林業が劣っているわけではなく、管理しないようになっていることが近年土砂災害や倒木などの災害につながっていると黒田先生。林業は木を育てて切って、売るというまさに農作物と同じサイクルで進めていきます。そして、本来の里山は15年~30年周期で伐採・収穫しているのですが、社会の変化により1950年代からエネルギー革命により山の資源がどんどん使われなくなり、一見緑豊かな山林も良く見るとヤブ状態。効率的で、循環する資源活用の知識や経験を持っている職人は現在80代、90代の方だけになってしまっていることも日本の林業、森林保全の大きな問題だそうです。

 

・季節外れの紅葉?

一見赤茶色に紅葉しているように見える山々も良く見るとそれは松くい虫による「松枯れ」が起こっている状態かもしれません。いまから100年ほど前、日露戦争の物資輸送の梱包で使われた松の木により北米から長崎日本に入ってきたマツノマダラカミキリと呼ばれる「松くい虫」は、30~40年近く切られずに育ってしまった木々で繁殖しやすいそうです。ですので、里山を利用されなくなった1950年代から50年ほどたち、ちょうど松くい虫が繁殖しやすい太さに育った近年、2000年ごろから全国的に松枯れによる倒木問題などが顕著に出てきた、その時期と重なります。

○江戸時代の絵図を見るとその山々に生えた木々はほとんどが幹が細めのアカマツ。(その描き込みでわかるそうです)つまり人の手が入って管理された「里山」だった証拠だそうです。

 

・「木を切る=自然破壊」「木を植える=自然回復」??誤解の多い「森林保全」

本来の里山林は、植林不要。アカマツは幹を伐った後の切り株から「萌芽更新(ほうがこうしん)」と呼ばれ、芽が生え、再生するを繰り返すことができる、とても効率的な資源だそうです。一方スギやヒノキは植林が必要なのですが、これも植林ばかりではなく、きちんと間伐も行い伐って利用していかないと、森の生態系を崩してしまうことになるそうです。そうなると、イノシシやシカなどが人の住むエリアへ出てくることで獣害被害も増えてきます。木を育てて、伐って、きちんと活用することが「健康な森林」の第一歩となるそうです。また、森林に対する誤解や無知を解消するため、黒田先生は単に教育を行うだけではなく、自治体、地域、活動団体と連携しながら最近はグリーンツーリズムやジビエ等での食とつなげる活動、伐った木の加工利用など様々な取り組みも進められています。

 

<ツボの目>

実家が仏像修復をしているもので、松やヒノキには親しみがあったのですが、確かに江戸後期の仏像は松材が、しかも細かく刻まれたものが多く、その時代は木々が不足していたと聞いていました。また逆に戦国時代や江戸初期などは木材も豊富だったようで、輿石のパーツが大きなものが多いことを思い出しました。

日本の彫刻技術は仏像彫刻を中心に木彫が発展しており、そこからも木々とのつながりが深い印象です。日本の伝統工芸を持続可能にしていくためにも、森林保全の正確な取り組みが必要と感じます。

それにしても、江戸時代の寺社仏閣周りの絵図から生えている木々が見分けられるその精巧さにビックリでした!

【神戸ソーシャルセミナーwith Climate Youth Japan 今井絵里菜氏(2019.9.18)】

今年も暑い夏が続きましたが、まだまだ暑い9月初めの神戸ソーシャルセミナーはSDG13

「気候変動」をテーマに、Climate Youth Japanの共同代表の現役神大生、そして最近Fridays For Future Kobeの活動を始め、第1回の「気候マーチ」を企画中の今井さんからお話を伺いました。

○当日は、これまで数十年環境関連の活動をされてこられたベテランの方もご参加いただきました

 

・「気候変動問題」とは

「気候変動」というと一般的には「地球温暖化」といわれる問題で、20年間様々な手立てが取り組まれていきましたが、その状況はますます進んでいるといわれています。

この要因は大きく太陽活動の変化や海洋の変動などの「自然要因」と温室効果ガスの増大や森林破壊などの「人為的要因」に分かれています。国際的には懐疑論も議論されていますが、主に後者の影響が大きいことを前提にお話しいただきました。

国際的な専門家でつくるIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change/気候変動に関する政府間パネル)の報告によると、気候変動によって引き起こされる問題は主に8つ「海面上昇・高潮」「洪水・豪雨」「インフラ(電機、医療などのサービス)機能停止」「熱中症」「食料不足」「水不足(飲料水、かんがい用水)」「海洋生態系損失(漁業への打撃)」「陸上生態系損失」があるといわれています。そして、このままの状態で2050年まで進むと2050年9月中旬には、東京で真夏日連続50日、熱帯夜は連続60日、最高気温は8月に40.8度にはなると予想されているそうです。

 

・気候変動への関心の高まりの歴史

1980年代から砂漠化や酸性雨の影響、またオゾン層の破壊の現実化、温暖化の影響が顕著になってきたことから、1992年環境と開発に関する国際連協会議(一般的には「地球サミット」「リオ・サミット」)から始まり、1997年京都議定書では先進国が温室効果ガスの削減義務を負う形になりました。しかし、その他の国の削減義務はなく、2015年COP21(第21回気候変動枠組条約締約国会議)のパリ協定はこの京都議定書に代わる取り組みとして、すべての締結国が産業革命以前から平均気温を2度以上上げないことを目指すこととなりました。

○国際会議にも参加されてきた今井さん。京都議定書が採択されたのはなんと1歳の時!

 

COP23,24にユースのオブザーバーとして参加された際、特に海面上昇などで一番に温暖化の影響を受けるフィジーなどの島嶼(とうしょ)諸国の呼びかけが印象的だったそうです。またCOP24では特に脱炭素の実現等実施指針が採択され、ちょうどセミナー開催の翌週に開催される「国連機構行動サミット」では核国に今後10年間で温室効果ガス排出量を45%削減、2050年までに正味ゼロ排出を達成する、具体的現実的計画を持ってくるように呼びかけられました。

○「メタン・ハイドレードによる影響は?」「日本の場合人口急減することは加味されているのか」「脱炭素社会に向けたダイインベストメントは世界的には進んでいる」など、様々な知見から熱い議論が交わされました。

 

・立ち上がる若者たち

そしてこの一年で欧州を中心にFridays For Future(未来のための金曜日)と呼ばれる学生たちを中心とした活動が注目されています。スウェーデンの高校生グレタ・トゥーンベリさんが2018年8月から始めたこの学校ストライキは、世界的な広がりを見せ、教育現場の中には、校外学習の一環として参加するところも出てきているそうです。日本では2019年2月25日に東京で始まったそうで、その時は20名ほど。2回目には中学生を含む300人ほどが参加したそうです。もともと青年環境NGOネットワークClimate Youth Japanで活動していた今井さんも9月20日の世界中で同時開催される「グローバル気候マーチ」に合わせて、神戸でもFridays For Future Kobeを立ち上げ、その活動を先導。当日は日本全国10数か所でマーチが行われました。

○マーチ当日は雨。それでもセミナー参加者も参加し、その後の活動にもつながっているようです。

 

 

<コーディネーター坪田の「ツボの目」>

「2100年アナタは何歳ですか?」

「大人たちは『未来のために勉強しなさい』と言う。

でも、今のまま気候変動が進めば、まともな未来なんてないかもしれない。たくさん勉強して気候変動の危機を訴えても政府はまったく声に耳を貸さないのなら、どうして一生懸命勉強していられる?」

これはFridays For Futureの学校ストライキや気候マーチ(デモとは言わないようです)に参加する子どもたちの声だそうです。人生100年時代といわれるなかで、80年後今の子どもたちは十分その世界に生きている可能性がある。だからこそ、気候対策に真剣に取り組まない大人たちに子どもたちから行動を起こしているようにも見えます。なかには、学校が校外学習の一環としてマーチに参加するところも出てきているようです。

そう考えると、自分の世代よりも若い10代20代のユースたちがより自分事として声を上げることに納得します。まずは世界を含めた最先端の情報収集…までは追い付かなくとも、マイ箸、マイバックをできるだけ使ってみたり、普段の買い物にプラスチックが使われているものを避けたり、有機栽培の食品を選んでみたりとできることから行動に移していきたいです。

【神戸ソーシャルセミナーwith海洋保全 小島理沙氏(2019.7.17)】

みなさんこんにちは!

学生ライターの下尾です。

 

月2回のソーシャルセミナー、

今回はSDG課題14「海の豊かさを守ろう」がテーマです。

廃棄物の抑制や環境政策がご専門の小島先生に、持続可能な循環経済などの研究についてはもちろん、最近話題のプラスチックをはじめとする「海ゴミ」や身近な生活用品の容器包装削減などについてもお話を伺いました。

 

世界中でプラゴミが問題になっていることを知り、どうにかプラゴミを減らせないか考えている私にタイムリーなトピックで、前のめりで聞いておりました!

 

  • なぜ自然保護は大切なのか?~環境の持続可能性について考えてみよう~

なぜ環境は大切なのでしょうか?セミナーはそんな問いかけから始まりました。小島先生によると、環境の価値は利用価値非利用価値に分けられます。例えば、森林の利用価値は木材や食料の生産を指し、間接的な利用価値としては、土砂災害を防いでくれることが挙げられます。一方で、見えない非利用価値もあります。それは2つに分けられており、1つ目は遺産価値と呼ばれます。現在の環境を残すことで将来世代が得られる価値のことを指します。2つ目は存在価値です。存在するという情報によって得られる価値を指し、例として、野生動物の保全などが挙げられます。

 

同じように、海の豊かさについて考えてみましょう!

・地球の70%は海

・魚などの天然資源を作っている

・汚染物質を破壊、排除する機能がある

・気候変動の緩和能力がある

・レジャーとしての楽しみ

ex)釣り

・漁獲量→収入の向上

 

以上のように、見える価値も見えない価値もあるけれど、海は人類にとって非常に大切なものであるということがわかります。つまり利用価値としての海も、非利用価値としての海もどちらも大切なものだという共有の価値観のもと、海を守ろうということが世界共通の価値認識であるということですね。

 

 

  • どうして環境は破壊されていくのか

 

私たちは環境の利用価値も非利用価値もなんとなくは理解をしているはずなのに、どうして環境は破壊されていくのでしょうか。

それには、以下のような要因がが考えられます。

 

・人口増加、資源消費量の拡大

→世界規模で見ると人口は増えているため、資源の消費量も増えている。

 

・農林水産業の貿易品目の小品目化(比較優位による影響で生物多様性に影響)

 

・環境や資源に正しい価値を与えない経済体系や政策(外部性)

→環境や資源に対する正しい価値が分からないため、破壊されてしまう。

ex)富士山の入山料:富士山に上る価値は1000円なのか?

・生物資源の所有、管理、それに利用と保全から生ずる利益の不公平さ

 

・非持続的開発を促進する法律や制度

 

・知識の欠如

→3R*1(Reduce(発生抑制), Reuse(再利用), Recycle(有効活用) に対する認知度の低さ

 

<3R*1について知ろう>

①Reduce(リデュース)は、使用済みになったものが、なるべくごみとして廃棄されることが少なくなるように、ものを製造・加工・販売すること

②Reuse(リユース)は、使用済みになっても、その中でもう一度使えるものはごみとして廃棄しないで再使用すること

③Recycle(リサイクル)は、再使用ができずにまたは再使用された後に廃棄されたものでも、再生資源として再生利用すること

(3R推進活動フォーラムhttps://3r-forum.jp/3r/index.htmlより引用)

 

 

 

 

  • 海ゴミの問題(海洋プラスチック問題)

 

次に、世界中で話題になっている海洋プラスチック汚染ですが、問題は主に以下の4つに集約されます。

 

  1. 大型海洋生物への影響

→動物愛護の観点-カメの甲羅に魚網が絡まる、カメの鼻にストローがはさまるなど

 

  1. 大洋表層、深海海底のごみ漂流・散乱

→環境の存在価値-海にプラゴミが浮遊していても日常生活には直接影響はないが、どこか嫌な感じがする→海という存在価値を脅かしている

 

  1. 生態系ピラミッドでの有害物質を吸着したマイクロプラスチックの濃縮

→生物影響 マイクロプラスチックを飲み込んだ魚を人間が食べるとどうなるのか、科学的な人体への影響はまだ明らかでない

 

  1. 多量の沿岸漂着ゴミ

→景観問題-魚網、レジ袋の浮遊

 

海ゴミについてもう少し見ていきましょう。

<わかっていること>

人間起源のゴミが分布している。1950年ごろから人類は爆発的にプラスチックを使うようになりました。中でも、包装や漁具が多いとのことです。

 

<わかっていないこと>

プラスチックが海の中にどれくらいたまっているのか。人間の生活からどの程度海に流入しているのか。また、マイクロプラスチックの生物影響の程度も不明だそうです。

 

 

  • 消費者主導、供給側主導、どちらか一方では上手くいかない?!

上記で挙げたような問題に着手したいとき、どのような方法をとればいいのでしょうか。

供給側主導の場合、企業側には仕組みや制度の規制がありますが、市場のニーズによってインセンティブやルールの変更は往々にしてあります。また、政治的な意思決定の影響をかなり受けます。一方で、消費者主導の場合は消費者の需要を市場がとらえて回っていく形です。消費者主導では、啓発や普及が課題となっています。ところが、2016年の3000人に対する環境問題への意識調査で驚くことが明らかになりました。調査によると、3Rの意味を知らない人が約47.5%と、およそ半分の人が3Rの意味を理解していません。日本の環境教育は小学校で3Rについて習うはずですが、調査ではそれが見受けられませんでした。小島先生は考えました。供給側の対策も消費者側の対策もどちらか一方では足りないのではないか。両者が主導し、アクションを起こしていけば循環型に出来るのではないかと。そこで、小島先生と神戸大学の学生たちが所属するNPO法人ごみじゃぱんが考え出したのが、容器包装ゴミ削減を目指した減装(へらそう)ショッピングです。

 

  • 減装ショッピング-ゴミの問題を「捨てる」ときではなく「買う」ときから考える

 

小島先生と学生さんたちはまず、社会全体のゴミが減るようなモデルを作りました。消費者にゴミが少ない商品に気付いてもらい、価値を認めてもらった上でその商品を選んでもらう。供給側はその需要を察知して容器包装が少ない方をどんどん選択していく、といったモデルです。初めに、どれが容器量が少ない商品なのか分かるように、スーパーやコープで販売されている商品の容器をすべて計量しました。計測した数値をデータ化し、上位30%程度を推奨商品としているそうです。

 

減装商品の目印(NPO法人ごみじゃぱんホームページhttps://gomi-jp.jimdo.com/ より)

 

減装商品という印をつけるだけでは広まらないので、減装マークがどのような意味なのかという説明を神戸のスーパーやコープで地道に行いました。消費者とのコミュニケーションを大事にしながら活動を続けていたそうです。

山崎製パン株式会社さんとの共同での取り組み、減装マークパンの販売「ヤマザキパンプロジェクト」では、1年間を経て販売総数がおよそ1200万個に達しました。その結果、容器包装の発生抑制量は24トンにまでのぼりました。多くの容器包装量の削減に貢献されたことが分かります。

 

単なる啓蒙活動だけだと、企業さんは耳を貸してくれない、と小島先生は言います。全体のインセンティブ設計を考え、消費者にニーズがあるということをしっかりと企業側にアピールしていくことが大切だということでした。

 

 

 

○小島先生のお話しを聞いて

 

環境意識が高くない消費者も減装商品を選ぶという話を聞いて、非常に驚きました。セミナーのあと、気になってどうしてなのか小島先生に質問へ行きました。企業は包装を減らす分、コストを下げることが出来るという仕組みになっている。値段が安い方が消費者は嬉しいので、減装商品は環境意識が高くない方へもリーチ出来る施策になっているとのことでした。双方にとってメリットがあるから成り立つ減装商品。その仕組みに驚くとともに、少し重い気持ちにもなりました。それは、私が関心を持ち続けてきたフェアトレードのことを思い出したからです。フェアトレード製品は、価格が比較的高いものが多く、多くの消費者にとって手に届きにくいものです。消費者にとってフレンドリーであるとはとても言えません。そのため、社会的意識の高い消費者にしか響かないのではないかという話を友人と何度もしてきました。やはり企業側にも、消費者にもメリットがないと成り立たないのでしょうか。それでもなんだか、価格の安さが大きな訴求点になっているのはどこか悲しい気持ちになります。とはいえ、私も金銭的に厳しい学生の身です。無理せず環境に配慮したアクションをとれる減装ショッピングを知ることが出来て、大変うれしく思いました。

 

「消費側と供給する側、どちらか一方の対策ではダメ」という言葉が印象に残っています。私は、ちょうど去年の今頃から、「プラゴミを自分の生活からどうすれば少しでも減らせるか」ということを友人と相談し、実践していました。その1つに、マイボトル(水筒)を持ってカフェに行く、というものがあります。これは、身近なプラゴミについて話していた時、「カフェの飲み物ってプラカップ提供のところが多いよね」という話になり、自分の水筒を持っていったら、そこにドリンクを入れてくれるんだろうか?そんな疑問からスタートしました。

その実験によってわかったことがあります。カフェ側は提供するドリンクの量に合わせてコップを規格化しています。そのため、私たちがマイボトルを持っていっても、それぞれボトルによって容量が異なるため、スムーズにドリンクを提供することが難しいのです。実際私がよく利用するカフェにマイボトルを持っていたところ、「ボトルの容量が分からないので一旦既存のプラカップに入れたものを移すという形になります」と言われました。一方で、計量カップで持参したボトルの容量を図ったうえで、ドリンクを入れてくださるカフェもありました。でも、混雑している時にこれをお願いするのは憚られますよね。こういったことから、現在の日本のカフェのドリンク提供スタイルでは、マイボトルを持ち歩こうという行動を起こしにくいなと感じました。もっと消費者側がマイボトルを持ち歩くというアクションをとるようになれば、カフェ側も変わったりするのでしょうか…?

それからは、なるべくリユースカップでドリンクが提供されるカフェを意識的に選ぶようにしています。そんな中、先日韓国に行った際、カフェで新たな気づきがありました。ドリンクを注文した時に、店員さんがプラカップが良いかガラスカップが良いか聞いてくださったのです。テイクアウトしたいひとはプラカップを選ぶでしょうし、その場で飲むならガラスカップでいいですよね。このように、カップを自ら選択できるスタイルは非常に良いなと思いました。

何かを変えたいと思ったとき、意識すること。「企業、消費者、いろんな人を巻き込んでいくために全体のインセンティブ設計をまず行う」これからも覚えておきたい視点です。

 

 

 

森林、海、富士山のイラスト https://www.irasutoya.com/

【神戸ソーシャルセミナーwithシン・エナジー 乾正博氏(2019.6.12)】

神戸ソーシャルセミナー、2019年6月のテーマは「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」

今回はシン・エナジー株式会社社長の乾さんから、「エネルギーと人類」と題して、再生エネルギーの可能性についてお話を伺いました。

参加者からも次々と質問がなされ、さらに参加者同士のやりとりも行われるなど、終始和やかな雰囲気で、密度の濃い時間が流れていました。

◎会社概要

シン・エナジーさんでは、「未来の子どもたちからの『ありがとう』のため生きとし生けるものと自然が共生できる社会を創造します」を経営理念とされています。社名の「SymEnergy」は「Symbiosis(共生)」と「Energy(エネルギー)」の組み合わせによるものです。エネルギーを基軸に、自然との共生を目指す思いが込められています。

事業領域としては、エネルギーを基軸に、持続可能な地域社会をデザインすることです。地域ごとに最適なエネルギーの活用方法を提案するなどといった、地域ごとのエネルギーのプロデュースとエンジニアリングを主にされています。

 

◎エネルギーの歴史と問題

産業革命以前では、主なエネルギーは熱でした。その後の産業革命以降では、蒸気機関などエネルギーの大型化が起こり、石炭が資源として使用されるようになります。

そして、1879年エジソンが白熱電球を実用化したのをきっかけに、電気が都市のインフラとなり、火力発電が開始され、そして1970年代以降、電力の大量消費時代へと突入していきました。1973年のオイルショック以降、原発開発も加速しましたが、安心安全のリスクなどが現在でも懸念されています。

そして、2012年、固定買い取り制度(FIT制度)がスタートしたと同時に、再生可能エネルギーの時代へと突入していきました。パリ協定や、SDGsなどをはじめとして、政府も企業も環境目標を立て、その環境目標を開示する時代となりました。再生エネルギーについては、第5次エネルギー基本計画で2010年度では約10%であった再生可能エネルギーを2030年度には22%から24%にするといった、再生可能エネルギーを将来の主力電力の一つにする目標がたてられました。

産業革命・電気社会が始まってからの200~150年で産業はこれまで経験したことのないスピードで発展してきました。それに伴って、自然・資源・環境のキャパオーバーが生じ、生態系が崩壊し始めているのです。

 

◎カーボンニュートラルについて

カーボンバジェットとは、2℃上昇までに残されているCO2排出量のことです。1861年~1880年からの気温上昇を66%以上の確率で2℃に抑えるには、2011年以降の人為起源の累積CO2排出量を約1兆トンに抑える必要があります。もともと2℃上昇させるために必要なCO2排出量は3兆トンですが、現在2兆トンは使われてしまいました。

また、カーボンプライシングとは、CO2の排出に対して炭素価格と呼ばれる価格を付与することで、化石燃料消費などのCO2を排出する行為を抑制する施策の総称のことです。これにより、日本でも、脱酸素を目指す動きが起こっています。その中の一つが、再生可能エネルギーというわけです。

 

◎エネルギーを考える

再生可能エネルギーには、太陽光発電、水力発電、地熱発電、風力発電、バイオマス発電があります。これらすべてに共通するのは、発生するカーボンが0であるという点です。特にバイオマス発電は、木材や家畜排せつ物などの再生可能な生物由来の有機資源によるもので、焼却などしても大気中のCO2を増加させない、カーボンニュートラルな発電方法です。その点でバイオマス発電は、エネルギー問題、地球温暖化の解決に加え、山林の活性化、廃棄物問題の解決、資源循環型社会の実現を可能にするエネルギーであると言えます。また、風力発電、地熱発電は、行うことができる地域が限られていますが、水力、太陽光発電、バイオマス発電はどこでも行うことのできる可能性があります。そのため、これらをいかに地方の国土をつかってバランスよく増やし、エネルギーを作っていくのかがこれからの課題であると伺いました。

 

◎未来設計をご一緒に!事例をまじえ

未来設計をするためのポイントとして、次の二点を挙げられました。

ひとつは、国産エネルギー開発によるエネルギー自給率の向上、もう一つは、地域循環型社会の設計です。

日本は2012年以降、エネルギー自給率が10%未満で推移しています。また、日本全国の1724市町村の約9割でエネルギー収支が赤字となっています。それはなぜかというと、日本は化石燃料に国家予算の30%に匹敵する年間27兆円を海外に支払っているからです。

バイオマス発電計画も例外ではありません。なぜなら、燃料となるPKS(パームヤシ殻)、パーム油、木材を国外からの輸入に頼る、バイオマス発電計画が非常に多いからです。このバイオマス発電計画は、国民負担による賦課金は海外流出し、運搬には船の燃料となる石油が必要となります。そのため、結局お金は海外に流出し、地域経済に貢献せず、バイオマス産業都市構想に反します。

また、世界の森林は減少していますが、日本の森林は増えています。それは日本で一次産業が発達していないためです。昭和30年代は0.8億㎥の伐採実績がありましたが、現在では成長率が1億㎥/年に対して伐採量は0.3㎥/年(平成24年)になっており、日本の森林の十分な量が利用可能なのです。

地元の間伐材などを使用した場合、地元への経済効果としては(1MW規模の発電の場合)木材1万t、約7000万円分が、売電する際には約3億円になります。

 

◎シン・エナジーさんが取り組んでおられる事例

飛騨高山しぶきの湯バイオマス発電所では、近隣のペレット工場と連携をして、バイオマス発電を行い、しぶきの湯へ熱を販売、さらに中部電力に電気を売るというモデルができています。このことにより、排熱を温浴施設で加温することで、灯油を削減する効果があります。このような小さな発電所を全国各地にちりばめることによって、雇用経済を回す効果もあります。

内子バイオマス発電では、材木市場、ペレット工場、バイオマス発電所を一か所に集め、運搬の効率化をはかられています。さらに、地元のパートナーが主体で行われているため、地元に利益が還元され、また燃料供給事業者も事業に参加することで、長期安定的な燃料供給が実現されています。さらに、熱の有効活用も行われています。

 

このように大型発電所からバイオマス発電をはじめとして、太陽光、地熱、風力などが地域ごとに導入されることによって、国内循環経済が大きくなります。海外の化石燃料を国内資源に代替することで、地域活性化を行うことができるのです。

シン・エナジーさんでは、活用できていない再生可能エネルギーを使い切るエネルギーの自立分散型コミュニティが形成され、さらに、域内再生可能エネルギーを他地域へ供給する「再生エネルギーリッチ」なエネルギー社会となることが目指されています。

再生エネルギーを取り入れた生活を地域ごとに創ることが持続可能な共生社会を実現し、地域ごとの自立と永続性を達成できるのです。

 

学生所見

私は、今回の神戸ソーシャルセミナーを恐れていました。「エネルギー」の話なんて、ゴリゴリの文系、文学部の私にはまったくわからない、そう思っていました。しかし、今回のソーシャルセミナーは思わぬところで私の興味関心につながっており、一瞬でシン・エナジーさんのファンになりました。

私は、地方創生にとても関心を持っています。今、少子高齢化のあおりを受け、各地で過疎化が進み、元気のない地域が多く出てくる中、そんな地域が自立し発展していくためには、いかに地域内で経済を回し、地域内で持続的な発展をするかが大切であると語られるようになってきています。いかに、地域独自の商売を生み出すのか、雇用を生み出すのか、そのような視点で、私は地方創生を追っていました。

しかし、今回のお話では「エネルギー」を地域で生み出すことによって、地域の経済を潤し、地域ごとの自立と永続性を達成する、というものでした。地域活性化の一つのアプローチとして、エネルギーが用いることができるという視点が私には大変に驚きで、感銘を受けました。

私たちが日ごろ当たり前すぎて気づかないほどに使用しているエネルギーは、確かに海外に依存しきっているものです。電気を使うこと、車に乗ること、料理をすること。その行為ひとつひとつが、海外にお金を払っている、ということを意識して生活したことがありませんでした。しかし、シン・エナジーさんの手にかかれば、電気を使い、車に乗り、料理をするなど、私たちが生きていく上でせざるを得ない行為が、地域の経済を潤し、地域を自立させ、永続的な発展をさせることができる。なんて素敵なんだろう。

このシステムが全国各地に広がり、環境問題の解決、地域の持続的発展、山の問題など、様々な問題を私たちが「生きる」ことで解決し、日本社会が大きく変わっていくことがとても楽しみです。

【神戸ソーシャルセミナーwith 社会福祉法人すいせい 岸田耕二氏(2019.5.29)】

神戸ソーシャルセミナー、5月のテーマは「働きがいも、経済成長も」

今回は「社会福祉法人すいせい」の岸田耕二さんから主にすいせいさんの取り組みについて、お話をお聞きしました。

 

◎通所事業(ひきこもり~働き続ける)

すいせいさんは、ストレスマネジメントの技術を精神病者の支援から、そして適職マッチングの技術を発達障害の認知特性から得て、様々なプロジェクトを行っておられます。

すいせいさんの支援の方法の一つである、「Suisei Step Style」では、一人一人に合わせた、オーダーメードの支援が行われており、様々な経験を積み、成長、前進を実感できるようなプログラムが用意されています。

まず、地域活動支援センターで生活訓練を行い、次に社会訓練、自立訓練、そして実習を通して、就労に移行していきます。このように、まずは居場所を作り、生活、仕事へと段階を踏んで支援を行っておられます。

このようなすいせいさんの就労支援を受けた方の90%は1年間、70%は3年間、就労しし続けておられます。

 

◎脳には癖がある?

以下の写真を見てください。

写真のワンピースとスニーカーは何色に見えるでしょうか?私は、ワンピースは青と黒、スニーカーはピンクと白に見えます。しかし、その一方で、金と白、グレーと緑に見える方もいるそうです。

このように、人それぞれ認知情報処理の方法が異なるのです。人の脳には癖があり、特に幼少期に好んでいた遊びによって脳の癖がわかり、適職がわかることも教えていただきました。

 

◎すいせいさんの取り組まれているプロジェクトについて

すいせいさんの現在、取り組まれているプロジェクトを7つ紹介されました。

 

Project1 超短時間就労 働き方改革

これは、今まで行われてこなかった超短時間就労を支援するサービスです。

現在の日本の障害者法定雇用率制度で定められている算定基準は週20時間以上であるため、企業が20時間より少ない時間で人を雇うことはそれまでなかなかありませんでした。しかし、障がい者の方には、週に20時間も働けなくても、超短時間であれば働ける人もおられます。

その一方で、現在、中小企業をはじめとした企業の多くは人手不足です。

このような障がい者の方、企業の互いのニーズをマッチングするのが、この取り組みです。

その方法は、事業者の仕事を細かく洗い出し、本人しかできない仕事、他の人手も可能である仕事に分類し、障がい者の方のできること、向いていることに合わせて、障がい者の方を雇用します。

例えば、タイピングが得意な人とデータ入力に手が回らない企業、手作業とスピードに自信がある働きたい人と出荷作業をしてほしいなどのニーズを持った人手が欲しい企業をマッチングします。

また、業務が完全に終了すれば、それ以上雇用する必要はなく、決められたこと以外はやらなくてもよい、というシステムになっています。

しかしここで、障がい者のやれる仕事と、やれそうな仕事には乖離があります。障がい者の中にはTOEICで800点をとられるなど、私たちの想像もしないような能力を持っている方もおられるのです。そのため、障がい者の方の職域を広げることは今後の課題でもあります。

 

Project2 大学生支援

現状・将来を悩んでいる学生が多いという社会的な問題に目をつけ、すいせいさんの持っておられる就労支援のノウハウを生かした取り組みが行われています。そのためすいせいさんのオフィスは大学生が来やすいように、おしゃれであるそう。

現在では、県や市から委託を受けて大学ネットワークづくりや社会の中で暮らしていくためのスキルを身につける訓練である、SST(ソーシャルスキルトレーニング)を行っておられます。

 

Project3 生活困窮者支援

生活困窮者の支援、就労支援準備の事業も行っておられます。

この事業の目的は、生活保護にならないように予防をすることと、社会復帰ができるようにフォローすることです。

活動としては、これまでの就労支援ノウハウと事務所を活用して就労を目指しておられます。

 

Project4 ひきこもり支援

ひきこもりの方と社会との接点を作る活動を行われています。

ひきこもりの方は、将来について聞かれるのが苦しい、このままじゃいけない、自分が子どもであるのが親に申し訳ないと思いながら、ひきこもっておられる方が多数います。

その一方で、ひきこもりの家族の方は、ひきこもりの方との接し方がわかりません。そのため、両者の思いを翻訳する、家族以外の介入が求められているというニーズがありました。

あるひきこもりの方は、自分の希望と適職を診断した後、すいせいさんでのアルバイトを週に2日から始め、現在は週5日勤務を目指しておられます。

 

Project5 企業×教育

企業と、主に特別支援学校のお互いのニーズをマッチングさせる取り組みもあります。

特別支援学校では、生徒にいろんな体験を積ませたい、生徒の雇用先を確保したいなどといったニーズがあります。また企業の側には、学校の実習先がない、地域貢献をしたい、人材が不足しているというニーズがあります。

実際に2つの学校に50社以上の会社が訪問されており、現在では教育委員会と話し合いが行われている最中であるそうです。

 

Project6 ほっとかへんネットたるみ

ほっとかへんネットたるみにも関わっておられます。

ほっとかへんネットたるみとは、垂水区内にある社会福祉法人(保育園・こども園・高齢者施設・障がい者施設・児童施設)が集まり、垂水区民の方がいつまでも安心して暮らせるよう、住みよい「垂水」を創っていこうという連絡協議会のことです。

ここでは、高齢者の集う場を作る、子どもが高齢者の方と遊べるイベントを行う、障がい者の方とつながりの再構築するなどといった活動を行っておられます。

地域の福祉活動のそれぞれの担う領域を拡大させ、混ざり合わせることで、誰も取りこぼさない支援、地域貢献を行っておられます。

Project7 社長の知能検査

社長の知能検査を行うプロジェクトにも取り組まれています。

社長には個性的な人が多いと気づかれたすいせいさんは、社長に発達障害の診断を受ける時に使うテストであるWAISテストをするとどうなるのか、について検証されました。

その結果、経営者の中には、発達障害の方と同じような結果が出る方もある程度おられることがわかりました。ある経営者の方は、学校教育の「勉強」「人間関係」「同調圧力」がはまらない結果が得られました。しかし、ひきこもりになったりせずに社会で活躍されているのは、幼少期に「違い」を認めてくれる、応援してくれる大人がいた、からだそうです。

このことから、大切なことは能力だけではなく、「違い」を本人や周りの人が理解し、認め、褒められ、「自分でいいんだ」という自信を持たせることが大切であると述べられました。

 

◎なぜ違いが生まれるのか

では、なぜこのように人間には違いが生まれるのでしょうか。アリの生存戦略から、その答えについて教えていただきました。

アリはお尻からにおいを出して、行列を作ります。しかし、一部のアリにおいがかげないために列を作りません。それは、すべてのアリが同じ能力を持ち、同じところに行列を作ると、絶滅をしてしまうためです。そう、すべての能力には意味があるのです。

 

◎A society where all people function

「ちがう自分」を「いいね」できる、社会もちがいを理解し活用できる。みんながギアとなり、みんなが機能する仕組みづくり、「A society where all people function」がこれから大切になっていくでしょう。

 

 

所感

「福祉」と聞くと、学生の私にはどこか固いイメージが浮かび、「福祉」はなじみの薄い単語でした。しかし、今回のお話を通じて私の「福祉」のイメージが大きな音を立てて崩れ去っていきました。

誰もがありのままでよくて、誰もがありのままで素晴らしくて、誰もがありのままで活躍できる世界がここにはある。人との違いが社会の歯車となって、社会を動かす大きな力になる。

そんなことを、身をもって教えてくれる存在が「福祉」であることを知りました。今まで堅苦しい「福祉」が柔らかくて、カラフルな印象に変わりました。

この社会ではこれからも必ず、この社会の持続のためににおいがかげない多くのアリが社会に生きづらさを感じてしまうに違いありません。そんな時に、「福祉」は必ずそのアリたちに寄り添ってくれることでしょう。

そんな優しく柔らかな福祉は、いつでも私たちの拠り所としてあり続けてほしい。そしてもっとたくさんの人に触れてほしいと感じました。一緒に触れてみませんか?

 

【神戸ソーシャルセミナーwith 公益財団法人PHD協会 坂西拓郎氏と研修生(2019.5.8)】

みなさんこんにちは!

学生ライターの下尾です。長い長ーいGWが終わりましたね。いかがお過ごしでしょうか。

そんな5月最初のソーシャルセミナーはSDG課題8「働きがいも経済成長も」をテーマにPHD協会の坂西さんと、ミャンマーからの研修生モーママさんにお話し頂きました。

〈平和と健康を担う人づくり―PHD協会とは?〉

“ともに生きる社会の実現”を目標に掲げ、アジア、太平洋地域からの研修生の招へい、研修後のフォローアップを通して人々による自立した村づくりと生活向上に協力しています。また、日本の人々も同地域の人々との交流を通して学び、自らの価値観、生活様式の見直しを図ることで、平和(Peace)と健康(Health)を担う人材を育成(Human Development)している、それがPHD協会です。

―1分間、スライドをお見せします。セミナーはそんな坂西さんの言葉からスタートしました。スクリーンには、笑顔や真剣な顔をした子どもたちの顔が1人ひとり映し出されます。1分間で映し出されたのは12人。そして、坂西さんから次の問いが。

「1分間の間で子どもたちの身の上に不幸なことが起こりました。それはなんでしょう?」

宗教的迫害、家族を亡くした、参加者から答えが飛び交います。もちろん、それらも十分に考え得ることなのですが、坂西さんからの答えは、“子どもたちの死”。現在、1分間で約12人の子どもが亡くなっているとのこと。20年前は1分に20人亡くなっていた、つまり3秒に1人の計算です。年々その数は減ってきているとはいえ、未だに死を余儀なくされる子どもたちは存在します。特に5歳未満の子どもは肺炎や下痢、マラリアといった予防可能な病気で命を失ってしまうことが多いそうです。「ちょっとした知識があれば予防できる病気で命を落とす子どもたちを少しでも減らしたい。村の最前線で子どもたちの健康を守る、PHDではそんな人づくりをしている」と坂西さんは語ってくださいました。

〈人とのつながり―人づくり〉

約20年前、もともとフェアトレードで生産者の収入向上プロジェクトに携わっていた坂西さん。ベトナムの農村から手工芸品を公正な価格で買い付け、日本で販売を行っていました。当時はアジア雑貨が流行っており、飛ぶように売れたといいます。しかし、日本での反応や売り上げを報告するために村を訪れた際、坂西さんはある違和感を抱きます。初年度訪れた際は、村人たちは伝統的な村の踊りや料理で歓迎してくれたそうですが、3,4年と時を経るにつれ、道が出来たり、村人たちがバイクを購入していたり、村の様子に大きな変化が表れました。そしてあるとき、坂西さんは村人に「テレビを見よう」と声をかけられました。つまり、結果としてプロジェクトは成功し、彼らの収入は向上しました。もちろん、村の伝統的なものも、完全に廃れたわけではありません。しかし、坂西さんはさみしい気持ちを隠し切れなかったといいます。

坂西さんは村の人たちの選択肢を増やすことに関わりたいと考えていました。収入向上プロジェクトが成功した結果、村の人々にお金はまわりました。ですが、当時所属していた団体におけるフェアトレードは、収入を増やすための手段でしかなかったため、それ以上の関わりが出来ないことに違和感を感じていました。また、現地から製品を買い取り、日本で販売するというプロセスで、消費を促しているだけの自分自身にももやもやを募らせていたといいます。私はこれを聞いて、村は物質的に豊かになりましたが、それ以外の問題、村の人々の他の困りごと、もっと言えば、村の人々と深く関われていないことから、フェアトレードという手段に疑問を感じたのではないかと想像します。「現地を訪れられるのは年に1回、もっと期間が空いてしまう時もあった。(中略)―PHDは1年間にたった3人だけ受け入れを行う。フェアトレードの方が受益者は多いかもしれないけれど…」という発言から、坂西さんは、現地の人たちが作ったものを日本で売る、ということではなく、もっと深く、その地域のこと、その地域の人々との関わりに重きを置いていた、そして、その地の人々が自分自身で村の問題に対処できるようにサポートする、そんなことを目指していたのかなと感じました。

坂西さんはその後、熊本県水俣市で水俣病患者の支援や地域づくりへの関わりを経て、PHDの活動につながっていったといいます。

〈チャーミングなモーママさん〉

黄色と紫の素敵な衣装に身を包んでいるモーママさん。これはモーママさんの出身であるミャンマーの伝統的な衣服だそうで、結婚式やお祭りの際に着るものだと教えてくださいました。モーママさんは2013年に日本にやってきた研修生。日本で保健衛生、主に健康のことを学び、村に帰ってそれらを伝え続けています。現在は大学事務員という本職のかたわらで、地域のために毎日奮闘しています。

  • 必須アイテム 日焼け止めは木…?!

ミャンマーで日焼け止めとして使われているタナカという木を見せてくださいました。年間を通して熱いミャンマーでは必須アイテム!臼のようなもので削って顔などにつけるそうです。木の根っこには薬としても服用されるみたいです。坂西さんの「美味しいですか?」という問いかけに「苦いよ!」とモーママさん。会場が笑いで包まれました。

  • 驚き ミャンマーと日本の仏教の違い

「日本のお坊さんは結婚してて、子どももいる!夕食も食べる!」

日本に来て少ししたころ、モーママさんは名古屋のお寺に研修に行く機会がありました。そこで自国と日本の仏教の違いに驚いたと言います。ミャンマーの仏教は主に「上座部仏教」で、五戒をしっかりと守らなければなりません。お坊さんの妻帯も禁止。髪も、ツルツルに整えており、夕食も食べないそうです。モーママさんは日本に来る前、自ら20歳ごろに出家して尼さんになった経験もあるほどの、熱心な仏教徒なんです。(上記写真参照)

  • モーママさんの村での取り組み

①食事改善

なんと、モーママさんたちは1日に料理で油を約500ml(およそペットボトル1本分!)も使うと言います…!その影響で高血圧や糖尿病などの健康被害が出ているとか。そんな状況を変えるため、モーママさんは日本で保健衛生のことを学び、村で伝え続けています。「油を少なくしましょう」初めはなかなか受け入れられなかったようですが、3年程言い続け、少しずつ分かってくれる人が増えてきているそうです。

②ゴミ集め

「村に溢れるゴミをなんとかしよう!」モーママさんの呼びかけでゴミ拾いが始まりました。最初は手で拾っていたのが、トラックを使うようになったりと、協力者が増えてきたのが分かります。それでもやはり、村の約半分の人はまだまだゴミ拾いに理解を示してくれないと言います。

他にもシュエグニという地域にある、内戦被害を受けた孤児が集う孤児院での公衆衛生の取り組み、24時間体制で食事から勉強まで孤児のお世話をする女性、モーモーさんのお話など、たくさん聞かせてくださいました。(なんと、その孤児院には90名から100名の孤児が生活しているそうです…!)

村のために尽力しているモーママさん。村の仲間に考えを伝えるうえで、大切にしていることはなんなのでしょうか。

「自分がやっているところを見せる。料理も油を使わないでやってますよ~。ゴミ拾いも、まず自分がやる」

正しいことをただ訴え続けるだけではなく、それに自ら対処し続け、他の人に行動で示していく姿勢が素晴らしいですよね。

「いつか私が頑張ってることみんな、分かる」これは、モーママさんの苦労がにじみ出るような言葉でした。それでいて、決して暗い雰囲気でなく、終始明るい笑顔でお話ししてくださるモーママさん。心から、村のために動きたい!という気持ちがひしひしと伝わってきます。村の人々のことを真剣に考え、楽しく伝え続けているから、人がついてくるのだろうなと感じました。

  • 坂西さんとモーママさんのお話を聞いて〇

長い間フェアトレードに関心を持ち続けている私としては、坂西さんの違和感はとても興味深かったです。フェアトレード製品を“日本で販売する”、ということに力を入れていると、生産地の人たちとの直接的なコミュニケーションが制限されてしまうのは想像できます。密にその地域と、地域の人々と関わっていくには、PHDの取り組みはとても素敵だと感じました。

モーママさんのリーダーシップにも感激です。今までと異なることを提案することは、いくら目指すべき姿が明確でも、分かってもらうには苦労するもの。また、正しいと分かっていても、なかなかすぐに変えられないこともしばしば…。料理にたくさん油を使うこともその一例だと思います。長年慣れ親しんでいて、美味しいと感じている料理をどうして辞めなければいけないのか、モーママさんの苦労が目に見えるようです。それでも、自ら実践し続け、村の人々に伝え続けているモーママさんの姿勢は、心から見習いたいと思います。

【神戸ソーシャルセミナーwith 公益財団法人PHD協会 坂西拓郎氏と研修生(2019.5.8)】

神戸ソーシャルセミナー、5月のテーマは「働きがいも経済成長も」

今回は公益財団法人PHD協会の坂西卓郎さんとPHD協会の海外研修生だったミャンマーのモーママさんを迎え、坂西さんからは主にPHD協会が取り組まれている活動を、モーママさんからは主にミャンマーやモーママさん自身のことについてお話を伺いました。

 

◎1分間のスライド

1分間、スライドに次々と現れる、子どもたちの写真。その数、12人。

坂西さんは、これは何の数字でしょうか、と私たちに問いかけられました。飢餓になった子どもたちの数、戦争に巻き込まれた子どもたちの数、など参加者からさまざまな回答が出されたのち、これは1分間で5歳未満の子どもが亡くなる数であることがわかりました。

現在は4.8秒にひとり子供の命が奪われているそう。20年前は3秒にひとりだったため、以前に比べれば、状況は改善しているけれども、現在でも、肺炎などの予防可能な病気で失われる命がたくさんあることを述べられていました。

 

◎PHD協会の活動について

PHD協会の組織の目的は、PHD協会のホームページによると、「アジア・南太平洋地域からの研修生の招聘、研修後のフォローアップを通して、草の根の人々による自立した村づくりと生活向上に協力すること。日本の人々もアジア、南太平洋地域の人々との交流を通して学び、そこから毎日の生活を問い直し、平和(Peace)と健康(Health)を担う人材を育成(Human Development)し、『ともに生きる』社会をめざすこと。」とあります。

 

このように、PHD協会では草の根の交流による人材育成により、アジア・南太平洋では、自立した村づくりの推進による生活の向上、日本では価値観・生活様式の見直しを行い、ともに生きる社会の実現を目指し、活動しておられます。

 

また、PHD協会の研修生は草の根の農村の人たちを連れてくることが特徴です。特に農村の人たちには海外で研修を受ける機会が極端に少なく、今回来ていただいたモーママさんには、この機会にしか、海外で研修を受けるチャンスがないほどでした。

 

PHD協会では支援を行う際、金銭的な支援は行わず活動されています。支援には「魚をあげるか、魚の釣り方を教えるか」という2種類があり、前者は必要な物資を提供すること、また後者は考え方ややり方を提供することであると教わりました。そして、PHD協会では、後者の支援を大切にしておられます。

 

そして、PHD協会は「ないものねだりではなく、あるもの探しを!」を大切に活動されています。モーママさんは「私の村に良いところは何もないと思っていた。でも今わかります。私の村いいところいっぱい」という言葉を残されています。隣の人と話さなかった日本でのホームステイで、モーママさんの村では、みんなのことを知っている、みんな親戚のようであるという良さに気づいたそうです。

 

◎NGOの人手不足について

NGOは東京一極集中で、東京以外は人材不足の傾向があるそうです。NPOも人材不足の傾向はあると思いますが、「お金よりもやりがいを」求めて従事するようになる人も増えては来ていることもあり、国内の方がダイレクトにその活動の成果を知ることができる傾向があることや、神戸のNPOが活発なこともあり、NGOの人材不足を感じることが多いようです。

 

◎坂西さんがPHD協会に参加したきっかけ

坂西さんは、高校生の時に阪神淡路大震災を経験されました。その際、自宅が半壊となり、学校で寝泊まりの生活のなかで、地域の人たちと炊き出しやバケツリレーを行ったことが初めて地域に触れる経験だったそうです。坂西さんは、その輪に触れることが楽しく、地域に興味を持つようになり、また高校の生徒会でユニセフ募金を行ったことがきっかけで、国際協力にも興味を持たれるようになりました。そして、収入よりもやりがいを求めて、商社を経て、PHD協会に携わられるようになられ、現在に至ります。

 

◎ベトナムでの国際協力について

坂西さんが経験された国際協力のひとつに、ベトナムでのフェアトレードがあります。しかしそこには、ビジネスの成功と同時に葛藤がありました。

20年前、ベトナムの雑貨ブームが起こったため、ビジネスとしてその雑貨をベトナムの農村で作ることとなりました。すると、そのビジネスは大成功。しかし、その事業がうまくいった後、その村を訪れると、以前は伝統的な踊りなどでもてなしてもらっていたにもかかわらず、その踊りはなくなり、代わりに日本製のテレビを見る娯楽が生まれ、「テレビを見ようよ」と言われたそうです。

坂西さんは、これでよかったのだろうか、と葛藤されました。そして結局、その村は後にすることになりました。

 

◎モーママさんのお話

坂西さんのお話のあと、モーママさんのお話を聞きました。モーママさんは現在27歳で、6年前研修生として、日本で活動されていました。

ミャンマーでは、おしとやかで、自分の意見を言わない女性が多い中で、モーママさんのはきはきとした、自分の意見を言う女性がいることに坂西さんが驚かれたという話も印象的でした。

 

◎タナカ

タナカ、日本人の苗字ではありません。タナカという木のことです。タナカを石で擦り、日焼け止めや化粧品のように肌につけて使用するようです。実践していただきました。

◎ミャンマーの宗教について

ミャンマーは上座部仏教であり、モーママさんも五戒(殺生をしない、お酒を飲まない、うそをつかない、不倫をしない、盗みをしない)を守っておられます。また、ミャンマーのお坊さんは結婚せず、お酒も飲まず、12:00以降はご飯を食べないために、日本のお坊さんを見たときには大変驚いた、という話が印象的でした。モーママさんも20歳ころに10日間出家をしたそうです。

◎ミャンマーの料理

ミャンマーでは、料理をするたびに油を毎回500mlは使用するほど、油っこく、また塩辛い料理が多いそう。それが原因で高血圧、糖尿病の人が多くいるため、自分の身体は自分で守ろうと、モーママさんは啓発運動に取り組まれています。

そのため、ベトナムでの油っこく、塩辛い料理に慣れ親しんだモーママさんにとって、日本の味噌汁は、味がなく、まずかったとおっしゃっていました。

◎ミャンマーでのスラムの拡大

ミャンマーでは、スラムが拡大していることも問題です。貧困の中、15,6歳で子供を産み、その子供も児童労働に従事することになるというスパイラルが生まれていると知りました。また、ミャンマーでは、たくさんの児童労働がおこなわれ、貧困から抜け出せない状況にあります。

 

◎モーママさんの活動

モーママさんの活動は多岐にわたり、小さい子供たちのための図書館を開いたこと、HIVが問題になっているために避妊などの家族計画について教えること、学校の勉強を教えること、ごみ問題を解決しようと呼びかけ、回収することなどさまざまです。

普段、モーママさんは夜間大学の事務員の仕事を16:00まで行い、その後自分の村を中心に活動をされています。

 

 

 

このセミナーが終わった後、モーママさんとお話しするチャンスがありました。モーママさんは大学まで進学されているのですが、大学へ進学しようと考えたきっかけについて尋ねると、「家族は誰も大学に行かなかったが、行く、と言って行った。行かないと世界が広がらないと思った。行ったら実際に世界が広がった。」と答えられました。大学で自分の世界を広げ、さらにモーママさんは、大学で学んだことを自分の村で実践しています。

その事実が、強烈に私の心の中に残ることとなりました。なぜなら、私は今まで、大学で世界を広げる、そしてそれをどこかで生かす、ということができていただろうか、と反省させられたからです。なんとなく、大学生になって、与えられた授業をこなして満足し、大学生になっても、お客様気分でこの世を生きてきたことを痛感させられました。

もちろん、モーママさんのように生きることができるだけがすべてではありません。しかし彼女からあふれ出す力強さは、実際に周りの人間に影響を与え、動かせるほどに強く、魅力的なものでした。

私もそれにひとつでも近づきたい、と思いました。本当に私にとって大切な出会いでした。

【神戸ソーシャルセミナーwith 認定NPO法人テラ・ルネッサンス 栗田佳典氏(2019.4.10)】

神戸ソーシャルセミナー4月のテーマは「公正と平和」。今回はNPO法人テラ・ルネッサンス栗田佳典さんに、コンゴ民主共和国での活動と平和についてお話して頂きました。

〇テラ・ルネッサンスの理念

世界で6人に1人、3億5700万人の子ども達が紛争の影響を受ける地域に住んでいるといいます。テラ・ルネッサンスはSDGsのテーマでもある「誰一人取り残さない」を理念に世界中の人が安心して暮らせる世界を目指し活動しています。キーワードは「レジリエンス」。アメリカ同時多発テロからの復興の際、合言葉として広まったといいます。現在では本のカテゴリにも使われているそうです。テラ・ルネッサンスは「困難な状況に直面しても、自らに内在する多様なチカラと周囲との関係性の中でそれらを乗り越えていく適応能力」という解釈をしており、活動の鍵となる言葉だといいます。

 

〇「平和への一歩はなんですか」

栗田さんがよく聞かれる質問だといいます。栗田さんは「三つへの関心。知る、考える・感じる、関わる」ことが重要だとおっしゃいます。先入観にとらわれずその問題、国の事を知り、そこに関わる人々のことを考え感じ、そして実際に関わってみる。自身の関心を興味だけで終わらせず、実際に行動する事が平和への一歩だといいます。

テラ・ルネッサンスが取り組む課題は「地雷」「小型武器」「子ども兵」、この3つの課題に対して日本を含めたアジア3か国、アフリカ3か国で活動を行い、日本国内では現地の課題を伝えるとともに日本でできることを学ぶ「平和教育」を行っています。

 

〇コンゴ民主共和国の現状

今回のセミナーではアフリカのコンゴ民主共和国での活動のお話をしていただきました。コンゴは「平和以外なんでもある国」と揶揄されてしまうといいます。食料資源や天然資源は豊富ですが、11人に1人が5才までに亡くなってしまうといいます。武装勢力に襲われる危険性や、支援物資が届きにくい環境、病院が近くになく十分な治療が受けられないなど過酷な状況にあるためです。今回は多々ある問題の中でも「紛争鉱物」について教えていただきました。

「紛争鉱物」とはレアメタルなどの電話やパソコンなどの電子機器に使われる天然資源を、現地の武装勢力が小型武器を手に入れるための資金として採掘する鉱物をいいます。 コンゴの武装勢力は「小型武器」を手に入れるためにレアメタルを採掘し、そのレアメタルは私たちの使用する電話やパソコンなどの電子機器に使われています。紛争鉱物の恩恵を受けているのは先進国に住む人々であり、コンゴの紛争に知らず知らずのうちに関わっていました。現在は企業が現状を変えるために紛争鉱物を使わないよう改良しているため紛争鉱物の普及は減少しているそうですが、紛争鉱物の問題は他人事ではない事がわかります。

 

〇紛争と子どもたち

栗田さんが実際にコンゴへ足を運んだ際、子ども達から「ニーゴ」と頻繁に声をかけられたといいます。挨拶かと思い、返そうとすると通訳の方から「ニーゴ」とは国連平和維持軍の兵士を呼ぶ言葉だと伝えられ、外国人は全員兵士に見える現状、武器を持っていない自分まで兵士と認識したことがショックだったといいます。穏やかな日々が1日でも早く来ればとおっしゃっていました。また他のテラ・ルネッサンスのスタッフが現地の子どもに「将来何になりたい」と問いかけると「大人になりたい」と返ってきたといいます。日本では大人になる事は大前提で、そんな返答をしたら冗談だと思われ笑われてしまうかもしれません。コンゴの子ども達は紛争に巻き込まれたり、子ども兵として消費されてしまったりと、いつ紛争の被害を受けるかわからない世界で生きています。子ども達自身が健やかに育つ事を何よりも望んでいることを痛感しました。

 

〇「現地の人々がそこに住み続けられるまちづくり」

テラ・ルネッサンスはコンゴの人たちが自分達の力で、より安全に豊かに暮らせるように「お手伝い」していると栗田さんはいいます。ここで「支援」という言葉を使わないところに全てが詰まっているように思いました。具体的な例として溶接の技術を教えたり、洋裁をしてもらったりと現地の人々の可能性を広げていくといいます。溶接を自分達でできるようになったことで武装勢力のいる山を通らずにバイクを自分達の力で修理できるようになったり、洋裁を覚えることで「自分はなにもできない」という自己肯定感の低さが改善されたりしていくそうです。冒頭でもお話していただいた「レジリエンス」、自分達は無力ではないということを思い出し、居心地のいい環境をつくってゆくきっかけになればと栗田さんはおっしゃっていました。

 

〇イチ学生の所感。

将来の夢を「大人になりたい」と言った子どもの事を考えます。私も、大人になりたいとは思っていたけど、それは「早く」大人になりたいという事で、そのまま黙っていれば成長できることが前提の話でした。生まれ育つ環境は選べず、それぞれの基準があります。だから安全な場所で育った私が「命を落とさずに大人になれる事に感謝する」「戦争に行かずに学べる事は幸せなこと」と紛争地域と比べてみても、根本的な部分が異なりすぎてしまっているので意味がないように思います。そもそもこれらは他国と比べて自国を優位に立たせるためだけのような、突き放した言葉にも聞こえます。そう思うと、やっぱり栗田さんのおっしゃるように「知る」「感じる・考える」「関わる」が一番対等に考えていけると思いました。「大人になりたい」と言う言葉の裏に「平凡な毎日を過ごしたい」という願いが込められていたと思うと胸が痛くなります。(学生ライター関口)