【神戸ソーシャルセミナーwith 公益財団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 伊藤愛氏(2019.4.3)】

みなさんこんにちは、初めまして!学生ライターの下尾です。

新年度初めのソーシャルセミナーはSDGs課題16「平和と公正」をテーマに、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの伊藤愛さんにお話しいただきました。

  • Save the Childrenとは

Save the Childrenは、日本を含む世界約120か国で子ども支援の活動をしている民間・非営利の国際NGOです。海外では緊急・人道支援をはじめとし、日本国内では災害時における心理社会的支援等を行っています。

 

  • 子どもたちを学校に呼ぶには?―アフガニスタンにおける教育支援

教育支援に関して、人口3000万人のうち1600万人、約51%を子どもが占めるというアフガニスタンを例に挙げてお話してくださいました。

そんな、子どもの数が多い国や地域でも、学校があっても子どもたちが学校に来ない!という例が少なくないようです。それはなぜなのでしょうか。

伊藤さんによると

・働いている

・親が教育の大切さを理解していない

・(学校はあっても)先生がいない

・経済的余裕がなく文房具が買えない

等の理由から、そのような事態が起こってしまうようです。

そこで、これらの理由を踏まえたうえで、「子どもが学校に行けるようになるプロジェクトを考えよう」というテーマのもと、案を出し合いました。

参加者の皆さんは、支援内容に関して“持続可能性”-その場限りで終わらせない というところに着目されていました。例えば、子どもの親をいかに巻き込んでいくか、という論点では、「地域と先生の関わりを作るために、学校をコミュニティの場にしてはどうか」といった案が挙げられました。物資支援においても、ただただ文房具を寄付するのではなく、教科書など何度も使えるものにしてはどうかという提案もありました。

各案を共有した後、伊藤さんから、Save the Childrenが実際に行っている支援内容の説明がありました。先生たちが教え方を知らない、という問題を解決するための『教員研修』や、公立の学校に編入するための読み書きの能力をつけるため、村の集会所等で『識字教室』を開催しているとのことでした。その他に、とても面白い取り組みだなと思ったのが、『子ども劇』です。その名の通り地域の子どもたちが劇をするのですが、なんと、そのテーマが「学校に行けないとどうなるか」とのこと!実際、娯楽があまりない農村部では、子どもの親をはじめたくさんの大人たちが見に来るそうです。支援者である外国人だけで対象に働きかけるのではなく、地域の人々も巻きこみながら、また劇という“楽しい”要素も交えての取り組みは、一方的な押し付けに終始せずコミュニティへの働きかけを含んでいるという点で素敵だなと思いました。

  • SDG16 「平和と公正」との関わり

平和構築という観点から、制度を整えることの重要性に触れられました。例えば、Save the Childrenだけでは法律を作ることは困難ですが、現場に行き子どもの声を集め政府に政策提言をすることは出来ます。制度への働きかけを行っているという点で、SDG16との関連性を説明してくださいました。

  • Be inclusive

伊藤さんのお話の中で、“問題解決のために他の組織と協働する”という点が強く心に残っています。例えば、西日本豪雨の際には、避難所に隣接した施設で子どもたちが安心・安全に過ごすための空間『こどもひろば』の実施において、行政機関や他の団体と調整をとったとお話ししてくださいました。

「Save the Childrenだけで100%を達成しようと思っているわけではない」という伊藤さんの言葉が心に残っています。それは支援活動を行う上で、どのように現地の人たちに引き継いでいくのかということはもちろん、上記で挙げたように、他の組織との連携が大切であるということに他なりません。これはまさに、SDG17の「パートナーシップで目標を達成しよう!」にも繋がることであるなと思ったのです。

様々なセクターの人たちが関わりあってこそ、協力しあってこそ、平和で公正な社会、ひいてはSDGsが目指す社会の達成に繋がるのだと思いました。

立場やバックグラウンドが異なる人々との関わりの中での達成、様々な人や組織を巻き込みながら、というプロセスの中で大切になのは「インクルーシブ」という視点です。「インクルーシブ」とは、直訳すると“包摂的な”という意味で、SDG16の説明にも用いられている言葉です。ですが、少し分かりづらいですよね。

ここで、伊藤さんの冒頭のお話を紹介したいと思います。ある時、国籍の異なる3人の子どもたちが一緒に遊んでいた時、英語がわかる2人の子どもたちだけで話を初めてしまい1人の子どもがきょとんとしてしまったことがあったそうです。その様子を見ていた大人の一人が、[S5] 子どもたちに向けて「Be inclusive」と言ったそうです。つまりは、「仲間外れを出しちゃいけないよ、みんなで話そうよ」ということです。どうでしょうか。“包括的な”という言葉よりもずっと分かりやすいですよね。

以上からわかるように、「インクルーシブ」とは、一人ひとりの違いを排除するのではなく価値あるものとして高く評価し、社会全体で包み込むように迎え入れることを指します。そうすれば、それぞれの能力やスキル、経験、強みを最大限に活かし協働出来るからです。

○伊藤さんのお話を通して、自分自身を振り返る●

「他の組織と共に活動することもある」という伊藤さんのお話を聞いたことが、自分自身の関わってきた組織を振り返る機会になりました。

わたしは現在大学4年生ですが、ついこの間までフェアトレードに関心のある学生を繋ぐネットワークの運営に携わっていました。関西だけでも、フェアトレードを推進している、もしくは何らかの形でフェアトレードに関わっている学生団体は15ほどあります。運営をする中で、各団体を繋ぐ意義・ネットワークの役割について頭を抱えることが多々ありました。なぜなら、それぞれの団体(サークル・部活)は当たり前ですが、いち組織として独立しており活動理念も団体ごとに異なります。言うなれば、それぞれの理念に基づいたやりたいことの多くは団体内で達成できてしまうわけです。そのような状況下におけるネットワークの意義とはなんなのか、また、その意義を感じてもらえるような場を設けるためにはどうすればいいのか、ということに関して長らく悩んでいました。

15ある団体ごとの活動を例に挙げると、団体自らフェアトレード製品の仕入れ、販売を行っているところもあれば、途上国の生産現場を見に行けるスタディツアーをコーディネートしている団体、フェアトレード製品の委託販売のみを行っている団体、勉強会メインの団体、フェアトレードだけにとどまらず、子ども支援や大学地域付近でクリーンナップ活動を行っている団体など、それぞれに特色があります。

もちろん、先ほども述べたように団体ごとに理念や活動は異なるわけですが、フェアトレードという手段をとって、目指したい社会があることは共通していると思います。ですからわたしは、せっかくのその考えや多様な手法を自分の団体だけに留めておくのではなくて、出来るならば外に出していってほしい。活動する中での困りごとや、これから目指していることを共有してほしい、という風に考えていました。なぜなら、そのことが活動内容を見直すきっかけになったり、新たな取り組みのヒントを得たりということに繋がっていくと思っていたからです。もしかすると、コラボしてなにかイベントを行おうという話も出てくるかもしれません。また、少なくとも仲間がいるとわかることだけでも活動のモチベーションに繋がっていくと考えていたからです。

今回の伊藤さんのお話を通して自身の活動を振り返り、目指す社会の達成のために集い協働すること、いろんな人たちを巻き込みながら動いていくこと、その大切さについて改めて考えさせられました。完全に個人的なイメージですが、NGOというと国内外問わず数多く存在しているため、それぞれがそれぞれの理念を曲げる気はさらさらなく、「私たちなりのやり方がある!」と肩ひじを張ってるイメージで、正直に言うとNGO間において協力的な印象は抱いていませんでした。ですが、肩ひじを張る必要はなく、専門としている分野であったり、強みとしている部分をそれぞれが出し合って連携すれば良いのですね。共通の目標に向かった協働のために理念を曲げる必要はなく、むしろ出来ること出来ないこと含め、お互いがお互いを認め合っているからこそ、必要に応じて補完できるような体制があるのだろうなと思いました。(これも、インクルーシブという考えが根底にあってのことですよね!)

長々と書いてしまいましたが最後に、「インクルーシブ」という視点を持つ上で、こうなったらいいなという社会を共に作っていく仲間や機会を見つける場として、このプラットホームが皆さんにとって(もちろん私にとっても)そのような場であればと願っています。

※記事に含まれるコメントはいち学生の所感です。

【神戸ソーシャルセミナーwith ウィメンズネット 正井禮子氏、ひょうごコミュニティ財団 実吉威氏(2019.3.27)】

神戸ソーシャルセミナー、今月のテーマは「ジェンダー平等」。今回は正井さんと実吉さんお二人から暴力とジェンダー、またその支援団体についてお話していただきました。

 

*正井禮子さん

NPO法人女性と子ども支援センターウィメンズネット・こうべの代表正井禮子さん。阪神淡路大震災の際に「女性支援ネットワーク」をつくり女性のための電話相談で6割が震災のさなかに夫や恋人からの暴力に悩んでいるという内容であったため、疲弊した電話の向こうの声に「ここへおいでよ」と言える場所をと、2004年に設立。2007年には正式にNPO法人として認証されました。男女共同参画ではなく、男女平等社会を築きたいと活動しています。

今回正井さんには中学校や高校での講演でも使っているという資料を用いてDVの現状について教えてくださいました。

 

〇DVについて

現在国の法律でDVとは「配偶者からの暴力」と定められています。正井さんはそれに加え恋人からの暴力もDVであるといいます。アンケートの結果から日本では女性の3人に1人がDV被害を受けたことがある事がわかっており、その中でも15%の人たちが命の危険を感じる程の被害を受けたことがあると回答しているそうです。またDVの被害を受けた女性の40%が誰にも相談せず、多くのひとが「相談することでもないと思った」と回答していることからも問題の根深さが分かります。

 

〇パワーとコントロール

暴力をふるう人は暴力の対象となる人物に対して「自分の所有物」だと思っていることが根底にあると正井さんは言います。更に「自分の方が偉い」という主従関係を勝手につくり、それが「相手をコントロールするための暴力」という行動に出るそうです。DVは「力による支配」「パワーとコントロール」のことであると教えていただきました。また暴力は自分が見下している相手にしかしないため、加害者は社会的に評判もよく、きちんとした人が多いそうです。「誰にも相談できない」という被害者が多い理由のひとつだといいます。

 

〇言葉の暴力もDV

DVと聞くと殴られたり蹴られたりするなどの、直接的な暴力を連想する人が多いと思いますが、正井さんは「相手の言動に恐怖を感じたらそれは暴力、DVである」という事実の危険性をおしゃっていました。自身が相手からの言動や行動によって「自由がない」「窮屈」と感じることは全て暴力に繋がることであり、恋人や配偶者からの「束縛」、言葉の暴力はDVにあたるといいます。

 

〇暴力のある環境で育つ子どもたち

DV「家庭内暴力」はそのまま児童虐待になることも忘れてはいけないと正井さんは強くおっしゃいます。お母さんが、お父さんが、殴られている、酷い言葉を浴びせられている。そのような環境で育つ子どもは本来心身ともに休息できる場所でなければならない家庭で安心できません。直接的な影響の例として自尊感情の低下、多動・学習困難、暴力でものごとを解決しようとするなどの問題行動があげられます。更にDV環境で育った子どもたちは「自分もお父さん/お母さんのようになるんだ」「だから、自分は家庭を持てない。持ってはいけない」と思いこんでいる事が多いといいます。正井さんはそんな子どもたちに学校での講演会などを通して「自分の意思で温かい家庭は築くことはできる」と、その呪縛を解くきっかけになるように、真っすぐな言葉で伝えています。

 

〇子どもを救うには

DVで植え付けられてしまった価値観(他者に暴力を与えてもいい、大人は信頼できないなど)を変える、自分の苦しみに寄り添ってくれる大人が、その子どもの傍にたった一人でもいたらいいといいます。「世の中には恐ろしい事をする大人もいるけど、それが全てではない」と教えてくれるような、自分を気遣って見てくれる大人の必要性をおっしゃっていました。

 

*実吉威さん

ひょうごコミュニティ財団、実吉威さん。ひょうごコミュニティ財団は阪神・淡路大震災をきっかけに始めた活動が前身で、市民の多様な自発的な活動を支える「資金的な基盤」と「社会に貢献したい寄付者」を繋ぐ活動を行っています。今回のセミナーでは主に「有園博子基金」についてお話していただきました。

〇有園博子基金

2017年に逝去された有園博子さんは生前、臨床心理士、精神保健福祉士として性暴力やDVなどの虐待を受けた、深い傷を負った方々にカウンセラーとして支援をし続けた方です。「遺贈」とは「自分が亡くなった後、資産を〇〇へ寄付します」と遺言書で贈与する仕組みのことです。有園さんは病の中、亡くなる三日前に実吉さんを病室に呼び、弁護士数人を介して知った「ひょうごコミュニティ財団」に寄付を任せたそうです。

対象となる助成分野は「DV被害者への支援」「虐待を受けた子どもへの支援」「性暴力による被害者への支援」「JR福知山線脱線事故ご遺族への支援」です。基本は現場で活動しているNPOへの支援となっています。有園さんはその団体がなくなったら多くのひとが困るような、現場でかけがいのない活動をしている団体を支援したい。また組織の活動の専門性を高めたり、もっと厚みを持った成熟した団体になるようにと、そんな想いから寄付をされたそうです。

この基金はお金を提供するだけではなく、共通での人材育成や横のつながりをつくり、一つの団体ではできないことができるようになるきっかけになればと活動を進めているといいます。これから十年弱続く予定の「有園博子基金」。団体同士のネットワークを築き、より良い社会の基盤になったらと、そんな基金を目指しているそうです。

 

 

〇イチ学生の所感。

「言葉の暴力もDVになる」これはDVという問題がかなり身近であることを認識させられた話でした。言葉での暴力は目で見える形の傷にならないため、そのひとにしか痛みは分かりません。だからこそ「自分が弱いから」「自分でなんとかできる」と思いがちだと感じます。直接的な暴力を含めて、「自分」がどう感じたか、感情の基準は常に自分であってほしいと思います。

家庭のことは本人にしかわかりません。変に相談をして、自分の両親や配偶者が悪者扱いされるのは違うし、でも自分が傷ついた気持ちを誰かに伝えたい。そんな思いを吐露できる場所が社会にあるのは、非常に心強く思います。正井さんのように現場で働くひとがいて、実吉さんのようにその活動を支えるひとたちがいる。この事実がDVによる被害で孤独を感じている人たちに届き救いになればと思います。(学生ライター関口)

【神戸ソーシャルセミナーwith 株式会社NOTICE 布谷由美子氏、灘中学校・高等学校教諭 片田孫朝日氏(2019.3.6)】

今月のテーマは「ジェンダー平等」。今回は片田さんと布谷さん、お二人のゲストをお招きし、ジェンダーと仕事のあり方についてお話して頂きました。

 

*布谷由美子さん

民間企業を退職後、宝塚市男女共同参画センターにて女性活躍推進専門員として女性の能力開発・就労支援に力を注いでいた布谷由美子さん。現在は株式会社NOTICE代表取締役、WLB(ワークライフバランス)コンサルタントとして活動しています。

 

○「自分で選択したつもり」

大学での履修を終え27年前に就職したという布谷さん。当時は結婚すると女性は退職することが当たり前だったといいます。自身も結婚する際に仕事を辞めたそうですが、そのことについて「自分で選択したつもりなんですよ」とおしゃっていました。選択したのは自分であるはずなのに、抗えない社会のルールが存在する。そんな違和感がこの言葉に込められていると感じました。再度働く願望があった布谷さんは再就職を試みますが「子どもがいてどうするん?」「夫にまかせればいいじゃない」などの言葉を受け、なかなか採用をもらえなかったといいます。

 

○「働いて幸せになる人を」

布谷さんは民間企業を退職後、宝塚市で専門員として働きます。しかし非正規であることや、責任ある仕事を任されにくい事に不満と疑問を感じ、「働いて幸せになる人を増やしたい」と2012年に株式会社NOTICEをたちあげました。「男は70点80点でも採用するけど、女は100点じゃないと採用しない」といった女性に不利な就職活動を支援するために「女子限定中小企業合同説明会」も開いています。やる気のある女子生徒と、従業員を大事にする優良企業を結ぶ会となっています。第一回を開催した当初は「女子しかいないなんて企業はこない」などと言われたそうですが、布谷さんは「必ず需要がある」と続け、昨年8回目を行いました。女性が不利にならない就職活動支援を行っています。

 

〇ワークライフシナジー(相乗効果)

誰もが活躍できる会社は「ワークライフシナジーができている会社」だといいます。仕事をする母親は会社の重荷になるどころか、保育園に子どもを迎えに行く時間までに自身の仕事を片付けたり、仕事の引継ぎが上手い人が多く、「決められた時間内で高い成果を出す」優秀な人が多いと布谷さんはおっしゃいます。

「家庭での自分」と「職場での自分」、両方で無理なく過ごせる環境を。今は女性だけでなく男性が両親の介護のために退職するという例も多くなっているそうです。少し前までの「男性は外で労働を」「女性は主婦業を」という風潮は大きく変わり始めています。布谷さんはより多くの人が「仕事」と「家庭」を両立させ、負担の少ない生活ができる会社になるように活動しています。そのためには今までと違った基準での評価と育成が必要であると、現在の社会を取り巻く風潮や規範を変える必要性をおしゃっていました。

 

*片田孫朝日さん

灘校で公民の教師を務める片田孫朝日さん。片田さんは自身の生まれ育った家庭環境から「仕事観」が幼い頃から他と違っていたといいます。社会に多くある形での、「男性が家庭を支える」「女性は専業主婦」という観念はなく、仕事と生活の両立を男性も女性もができる社会になるように研究を続けています。

 

〇片田さんの仕事観

片田さんの父親は活動家で社会活動を行い、家庭の経済を支えているのは母親だったそうです。自由に好きなことをしていた父は若々しく楽しそうだったといいます。母親も50歳の時に「学びたい!」と留学を希望、父親も片田さんも母親の希望に同意し応援したといいます。母親はそれからやりたい事を我慢して勤務していた時よりも明るくなったそうです。そんな家庭環境から「仕事=忍耐になることがある」「楽しく、やりがいがあり、人の役にたつことも、お金になると限らない」、「仕事(お金・自由のための労働)は仕事」辞める事ができなくなるため「カップルの片方だけが稼ぐのは危険」などの仕事観を早いうちから持っていたそうです。

 

 

〇「仕事だけではない生活」

片田さんは学校勤務当初、自身の行う授業の種類とコマ数が多いことで「働くために生きる」かのような生活を強いられました。授業の質の低下にはじまり、飲酒量増加、体調悪化など生活に支障をきたしたといいます。そこで片田さんは「給料をへらしてもいいので授業数を減らしてほしい」と希望を出し、話し合いの末、無理のない範囲での授業数にしてもらったといいます。この片田さんの行動のおかげで他の先生方も家庭の時間を取りやすくなり、職場に子どもを連れてきやすくなったりと学校の働き方の方針が変わったそうです。

片田さんの「お金・自由のための労働」をする上でも自己を尊重する姿勢は幼い頃から「自由にやりたい事をしていた父親」と「長い間家庭の経済を支えていた母親」を見ていたからだと感じました。この片田さんの意思と行動は「人間として当たり前」のことでありながら、現在の日本では浸透していない現状もあります。

 

〇「男性の自由と男女平等と」

日本の社会で「仕事優先」という固定観念を外し、自分のしたいように時間を設計する。「男の労働時間が減り、私生活の時間をもつこと」と「男女が平等になること(賃金、家事・育児・介護の分担、趣味)」は別のことであるといいます。布田さんはこれから、男女共に時間に余裕をもった働きやすい社会のために男性に届く言葉での本を書きたいとおしゃっていました。

 

〇イチ学生所感。

行動できるひとは強い。企業した布谷さん、管理職に自身と仕事量のバランスの改善を要求した片田さん。自身の疑問や不満をきちんと理解し社会に飲み込まれることなく行動している点に、これから社会に出る身として頼もしく思う。自身の気持ちを優先してもいいのである。それを知っているのと知らないのでは天と地の差があると思う。

今回お二人の話を聞き「女性だから」「男性だから」と考えることの無意味さを改めて感じた。「目の前にいるひと」の得意不得意を理解し、尊重する必要がある。「性別」は付属の情報くらいにとらえたいと思う。布谷さんも片田さんも自身の「行動」に「自分が男性/女性であるから」という不平等な力が働くことは許さない。社会では当たり前として処理されている、でも確実におかしいこと(「育メン」という言葉はあっても「育ウーマン」なる言葉はないなど!)に敏感でありたいと思う。社会に流されない、自分の言葉を持ち大切にする必要があると学んだ。

【神戸ソーシャルセミナーwith 株式会社NOTICE 布谷由美子氏、灘中学校・高等学校教諭 片田孫朝日氏(2019.3.6)】

【神戸ソーシャルセミナー】『ジェンダー平等』(2018. 03. 06) 

 

毎月1回、そのテーマのゲストを迎え、セミナー参加者が地域社会の問題発見・解決について考える「神戸ソーシャルセミナー」、3月のテーマは『ジェンダー平等』です。

 

「ジェンダー平等ってなんだろう?」

「ワークライフバランスって聞くけど、ジェンダーとどう関係があるの?」

という疑問をもたれている方はいらっしゃるのではないでしょうか。

 

今回のゲストは、株式会社NOTICE 布谷 由美子氏

灘中学校・高等学校 教諭 片田 孫 朝日 氏

このお二人をゲスト講師として迎え、

前半は布谷さんがジェンダーとワーク・ライフ・バランスの関係について、

後半は片田さんが男性学の視点からジェンダーを語っていただきました。

更にセミナー後、お二人にインタビューし、「実社会とのギャップ」などを中心にお話をお聞きしました。

 

□ワーク・ライフ・バランスとジェンダー

“宝塚市男女平等共同参画センターにて女性の就労支援をしていたという経歴の布谷さん。2012年には会社を設立し、ワーク・ライフ・バランスや女性活躍推進の観点から女子限定の「中小企業合同説明会」も主催されています。”

 

――“女性”に力を入れて活動されていますね。

布谷)女性が働くことが疑問視された前の時代。今では、多くの女性も働いています。にもかかわらず、就活などで女性差別が行われています。また、「育児・家庭は女の仕事」といった社会通念が女性に対して残っています。

 

――社会は変わりつつあるが、価値観が変わらないという現実。

布谷)大介護時代に突入し、介護離職など時間制約を抱えた男性社員も増えている日本社会で、男性も女性も働きやすい社会をつくることが重要です。少子高齢化社会が抱える課題に「人口・労働力バランスが崩れる」ことが挙げられます。ノルウェーでは、女性が働きやすい社会環境を実現させ、出生率の向上・女性の継続就業を実現しました。

 

――なんのために女性が働きやすい社会をつくるのか、ということですね。今後求められる社会の形とは?

布谷)時間制限があっても誰もが活躍できる社会が求められています。日本は労働生産性がなんと21位です。女性登用などの*アファーマティブアクションが必要です。評価の基準を「時間当たり生産性」にしなければなりません。成果制だと、際限なく働ける人だけが評価されてしまいます。今後は、男女ともに働きやすい社会にしなければなりません。

*アファーマティブアクションとは、人種・性別などによる社会的差別を改善し雇用や教育などにおいて優遇処置をとること。

 

――社会が変われば、人々もそれに合わせた働き方に変えなければならない。

布谷)労働力人口として外国人労働を拡大していますが、これは男性型の働き方を助長してしまい、長期的な視点で考えると「誰もが活躍できる社会」への根本的な解決策ではありません。これらを背景に、「なぜ女性が働きやすい社会が必要なのか」を社会全体で考える必要があります。

 

――ありがとうございました。

 

 

「男らしさのアップデート」 灘中学校・高等学校 教諭 片田 孫 朝日 氏

 

□男性のワーク・ライフ・バランス

男性学とは、もともと女性学をベースにしていると言われています。「(女性への)社会の抑圧」が同じように男性にもあてはまることから、「男性の解放/自由」を研究する分野です。抑圧され方は違っても、社会から抑圧されることは男性も女性も共通するということです。

 

――なぜ男性学だったのでしょうか?

活動家の父と、移民の母に育てられました。主に家計を支えていたのは教師である母でした。

 

――幼いころから、「男は仕事、女は家庭」という一般的な概念がなく、「働く父の姿」を見ずに育った家庭環境だったんですね。

学部生時代に田中美津さんの著書を読み、『個人的なことは政治的なことだ!』ということに感銘を受けました。

 

□アンビヴァレントな(相反する感情をもつ)男たち

男性のライフステージ(就職・仕事・結婚・家庭)が一般化され、大衆にもそれが受け入られ、「男性の生き方」が規定されてすぎている日本では、“仕事”を引き受けることが男性の役割と考えられ、男性自身もそのことを内面化しています。そうした男性の生き方を規定する「男性モデル」は危険性を抱えています。

 

――男性学を研究するキッカケはなんでしたか?

わたしの仕事観は「仕事は労働。労働だけが人生ではない。短い時間で済むなら、その方がいい。仕事だけで人生を終えず、人生を自由に生きたい。」と考えています。

 

――「仕事=人生」仕事が人生の全てではなく、「人生≠仕事」人生の一部が“仕事”と考えられているのですね。

 

――型にはまらない家庭で育った幼少期。子供のころから「型にはまらない父親像(=男性像)」を見てきた一方で、自分が社会の男らしさ像にギャップを感じたことはありませんでしたか?

子供の頃から身体が細く、男らしさに何らかのコンプレックスは感じていた。ただ、自分には勉強ができた。「ある・ない」論ではなく、自分の個性として考えるかどうかが大事。

 

――「しなければいけない」を男性が背負いすぎている。

今は人も物も十分なほどあふれている。男性だけの労働は必要ではなくなってきている。

「男はつらい」(もちろん男性だけが働いている訳ではないので、男もつらいですが)ということを話せる社会が必要である。

 

――「男らしさ」の危険性とは何でしょうか?

男性同士はお互い話さないことが多い。交際していた彼女がとても話すので驚いた。男性の場合、話すことは弱さをみせることだと考える。

自らの男らしさに縛られ身動きがとれないのが今の現状であり、若い世代の価値観ではもうない。

 

――話したいのに話せない、アンビヴァレントな男たちということですね。30代男性の自殺率が上がっているのも、「男は〇〇であるべき。」ということが男性の首を絞めているということですね。

なぜ男ばかりがここまで働くのか。日本とドイツを比較すると、ドイツ人が仕事に効率性を求めるのに対して、日本人は“時間をかけてより良いものを作る国民性”があるからです。

 

ドイツでは「仕事は楽しいが、家族が一番大切。」と考えます。そういった仕事観に対しては日本とドイツでは大きく異なります。

 

――日本の法律は男性を世帯主として作られています。家事代行・育児代行が十分ではない社会では男性が労働に専念し、女性が家事労働に専念するため性別分業が発生しやすいそうですが。

男性には自立が求められます。それは家族を養うためです。なので、道を外すことができない男性が増える、というコンプレックスを抱えています。

 

 

 

講演終了後、セミナーに参加していた学生にインタビューしました。

 

――登壇者のお二人に質問されていた内容について少しお聞かせください。

高松)“生産性”という能力に評価基準が置かれていることに疑問を感じ、生産性だけではない、その他の評価基準があってもいいのではと感じお二人に質問しました。片田さんが言うように、そこは公平性であると認める。それよりも、会社以外にコミュニティをもつことが大事だと。会社の評価は生産性のみ。生産性以外で承認(評価)を得ることが大事。

 

――評価基準と承認の関係性はとても大事ですね。ありがとうございました。

 

□セミナーに参加してみて

学生ライターのカタノです。今回のテーマはジェンダーということで、この記事を読んで初めて知ったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。ジェンダーとは、「男女の関係性」と定義されていますが、最近では、男女に限定せず「社会的・文化的な性別のあり方」と考えられるようになっています。登壇者お二人も、ジェンダーを通じて、「社会と男性/女性のあり方」を再提示されたのではないでしょうか。私も日本人の男女を対象に卒論のテーマを「就労価値観に反映されたジェンダー観の調査」にしました。今回は、貴重な話を聞けてよかったです。

【神戸ソーシャルセッション 『産業、技術革新、インフラ』(2019.2.23)】

今年2度目の神戸ソーシャルセッション。今回はSDGs課題9「産業、技術、インフラ」をテーマとして、お馴染み、関西フューチャーセンターの成松秀夫さんに進行をお勤めいただきました。

 

○インプット~現代のテクノロジーを知る~

まずは成松さんより、現代の新技術のご紹介。

たとえば、「パワー半導体」。半導体といえば、家電やコンピュータなどに用いられる部品として知られていますが、従来の半分のエネルギーで動作が可能な「パワー半導体」は、人体から出ている微弱な電流にも反応するため医療機器にも用いることができるそうです(https://www.msn.com/jajp/news/techandscience/%e4%b8%96%e7%95%8c%e3%82%92%e4%b8%80%e5%a4%89%e3%81%95%e3%81%9b%e3%82%8b%e6%97%a5%e6%9c%ac%e7%99%ba-%e7%94%bb%e6%9c%9f%e7%9a%84%e5%8d%8a%e5%b0%8e%e4%bd%93/ar-BBTItbf?ocid=ob-fb-jajp-782)。

そして、「コミュニケーションスティック」。高齢者など歩行は可能でも施設を出ることが難しい方のために開発された杖なのですが、ボタンを押して話しかけることで、携帯やパソコンなどの端末を使わず簡単にメールのやりとりをすることができます。転倒時には位置情報を自動通知するという便利な機能も(http://hero-x.jp/article/6207/)。

その他にも、モニターからの遠隔操作で作業を行える「無人トラクター」(http://tokai-tv.com/tokainews/article.php?i=73628&date=20190130)、より快適で気軽に利用できる「航空機」などなど、今までになかった便利な技術をたくさん知る事が出来ました。

 

 

 

○ワーク~見て聞いて感じて話して創る~

私たちは成松さんのお話を元に、現代の「技術」(例:パワー半導体)、それらが使用されている「ステージ」(例:医療現場)を整理して付箋に書き込んでいきました。

そして…シャッフル!先ほどとは異なる組み合わせの「技術」「ステージ」の付箋が各々の手元へ。今度はこれらをもとにあらたなアイディアを生み出していきます。

 

 

○ 共有タイム~新たな利用案~

個人ワークが終わり、各々が考えたアイディアを共有する時間に。「無人トラクターやドローンを里山保全に利用できるのではないか」、「コミュニケーションスティックのような機能は車いすにも利用できるのではないか」など多種多様なアイディアが集まりました。

そして、発表をうけてさらなる意見交換に。「ドローンには里山保全のついでに墓掃除もしてもらえるのではないか」というユニークな意見も出ました。

 

○ 伊藤メモ(というよりただの感想)

実は私は今回初めてフューチャーセッションへ参加しました。正直、技術系の話には疎く不安でしたが、参加してみるとそれもどこへやら。大学時代、面白い講義を受けていたあの時のように、頭を使いつつも楽しい時間となりました。技術はどんどん進歩していて、想像を超えるようなものが日々生み出されているけれど、こうして活用法を考えてみると、どんなものも人が人のためを思ってつくっているのだという当たり前のことに気づきます。何事も「じぶんごと」にして考えなければいけないなとつくづく思ったのでした。

【神戸ソーシャルセミナーwith actcoin(2019.2.13)】

ソーシャルアクションカンパニー株式会社、代表取締役、佐藤正隆さん。リタワークス株式会社の代表取締役も務めています。今までにリタワークスの取り組みとして、NPO・NGO助成プログラム「SOCIALSHIP」やNPO向けの資金調達、支援者管理システム「congrant」の運営などを行っています。今回は昨年2018年に始動した注目の「actcoin」についてお話して頂きました。

○ブロックチェーンとは?

今回のセミナーは「日本初!ブロックチェーン技術で社会貢献活動を可視化!」というタイトルのついたセミナーでした。「ブロックチェーン」とは「分散型台帳」とも言い換えられ、簡単に言えば「台帳(お金のやり取りを記録するもの)を持っている人同士で台帳の運営・管理を行う」というものです。佐藤正隆さんはその技術を用いて「社会貢献活動を可視化」させるツールを運営しています。

 

○「全然知らないひとと繋がれた」というユーザーの声

アクトコインを実際に使用しているひとの言葉だそうです。「actcoin」は貧困、ジェンダー平等、教育支援、災害ボランティアなどの「社会貢献活動」を、付与されるポイントによって可視化する取組です。この取り組みで最も大切な事は「3つの見える化」だといいます。「個人の社会貢献を見える化」「企業とNPOの活動を見える化」「参加者全員で起こすインパクトの見える化」。この「見える」「見せる」ことによって報酬のないボランティア活動に見返りをもたらす、それが「actcoin」です。

この「actcoin」、自身のアカウントを作成し人と繋がるという点を見ればFacebookやTwitterなど他SNSと変わらないように思えます。しかし明らかに違う点は発信するものが自身の創作ではないというところです。「自身の行動によって」貯まったポイントが誰にでも見られる状態になっている。ユーザー分の数の台帳があり、それを自由に見る事が可能です。運営側からのみポイントが付与される仕組みのため不正な書き換えは行われません。今までは暗黙の了解として見返りを求めることはタブーとされてきたボランティア活動に、評価がつく。さらに同じ方向を向いている仲間にも出会えるという今までになかった革新的なサービスです。

 

○「世界観から作成した。あるのは設計だけだった」

これは特に印象に残った話です。セミナーにて「actcoin」がどのようなものであり、何を目的として運営しているのかを説明した、言わば広告のような動画が再生されました。佐藤さんはその動画が終わると「この動画からつくったんです」とはにかみました。参加者たちもこれには驚きの声をあげ、私も例外なくその一人で「そういうやり方もあるのか!」と感心しました。世界観をはじめに決めてしまえば、あとはそれに忠実になればいいのであって、軸が定まります。新しい事を取り込み発信してゆくひとの発想は柔軟であると改めて感じました。

 

○「プラットホームとしての価値を高めていきたい」

社会貢献活動に興味のある労働人口は50%というアンケート結果があるそうです。社会貢献活動に関心のある人同士が気軽に繋がれる場の提供。「actcoin」はそういった側面を持っています。ユーザーが増えれば増えるほど、その繋がりは活発的になり価値が高まります。またその分、より多くの活動に対する不安、「ボランティアに対する情報不足」や「一緒に参加するひとがいない」などといった悩みの解決策も生まれるとおしゃっていました。情報を他SNSに共有するだけでもコインは貯まり、ささいなことでも自分の行動が認められてゆく達成感があります「actcoin」によって今まで社会貢献活動に関わってきた人はより範囲を広げ、参加する勇気の出なかった人は載せられている情報を見るだけでも大きく前進できると思います。

 

○イチ学生所感。

佐藤正隆さん。昭和55年生まれ、39歳。こういう三十代は世の中に多いのだろうか。実際にIT業界で活動している人を見るのは初めてだった。そんな動物じゃないのだからと怒られてしまいそう。でもそのくらい、私にとって新鮮で、新しい世界にいる人だった。

印象的だったのはその目で、楽しそうに弾ける瞬間があった。(自分は、こういう大人になれるだろうか。)内容そっちのけでそんなことをぼんやり思ってしまったことをここに懺悔したい。やりたいことが明確なひとは、自分の力量がちゃんとわかっていて、「自分でできる」「ひとに協力してもらう」のバランスがいいと思う。だから強く、新しい事にも物怖じせずに発展させてゆくことができる。『FRAU』2019年1月号にて佐藤さんは「actcoin」について「自分の愛と勇気を行動にして、目に見える形で残してほしい」と述べている。自分の「愛と勇気の行動」を目に見える状態にしておくというのは、自己への自信、輝きにも繋がり、それがまた誰かを照らすのだと私は思う。(学生ライター関口)

【神戸ソーシャルセミナーwith防災(2019.1.23)】

「防災」─東北復興支援と日ごろの備え─

 

神戸ソーシャルセミナー、年が明けて初めのテーマは「防災」でした。

今回は東北復興支援イベント「LOVEフェス3.11」の実行委員で防災士でもある小坂 宙(こさか ひろし)さんより、その活動をお話しいただきました。

「ラブフェス」は現在運営ボランティア大募集中だそうです!!

○同世代の集まりからイベントスタッフへ

普段はサラリーマンとして働く小坂さん。

これまで「大人の運動会」など様々なイベントを企画してこられた同世代の釜谷直人さんのイベントに参加する中で、釜谷さんが2011年12月設立した東北復興支援イベント「LOVEフェス3.11」(以下「LOVEフェス」)の実行委員会に第7回より参加したのが活動の始まり。

「LOVEフェス」は第1回は三宮南のみなとのもり公園(神戸震災復興記念公園)、第2回から5回は長田の鉄人広場で開催されていました。

(第6回は大阪うめきた広場、第7回はなんばリバープレイス)

音楽を中心にグルメブースや東北物産展もあり、ご当地キャラクターショーもあるとのこと。


バナーをクリックすると、フェスの趣旨や企画の詳細を見ることができます!

イベントの参加者は7年間で延べ7万人。1500人ものボランティアがかかわり、第8回目となる2019年3月9日、10日には昨年に引き続きなんばリバープレイスで開催されるそうです。

小坂さんは防災班として、このイベントにたずさわったそうですが、イベント後に年間を通じて活動ができないかと、防災士の資格を取得。今では大阪や仙台でのイベントでも防災チームとして活躍されているそうです。

 

○頻発する都市型災害

小坂さんの関心は地震だけでなく水害に関しても広がっていて、昨年7月には初めて、豪雨被害を受けた広島県三原市で被災地復興支援にたずさわられたとのことです。そこにはニュースでは感じ取れない雰囲気を体感されたそうです。

小坂さんの暮らす大阪も災害とは無縁ではなく、浸水被害を想定する防災マップを見ると、もし津波が発生すれば大阪湾から10㎞LOVEフェスの会場となる難波まで、浸水すると想定されていることがわかります。

普段から避難場所やそこへの経路、備蓄食料、水の備えがあると、いざというときに役立つのはみなさん想像できる範囲だと思いますが、さらに小坂さんからのポイントとして、水、食料は

①「いつも持ち歩くもの」

②「非常持ち出し用」

③避難後に取りに行く「ストック用」

と分けて準備するとよいとのこと。1日一人当たり3リットルの水を3日分くらい用意しておくのが目安だそうです。

そのほか、地震対策としては、覚悟突っ張り棒だけではなく壁に打ち付けることがおすすめだそうです。

 

○身近なものでつくる「防災アイテム」

後半は、ごみ袋サイズの大きなビニール袋を利用してポンチョ型のレインコートをつくったり、新聞紙を利用したスリッパ、キッチンペーパーと輪ゴムでマスクも実際に工作したりしながら防災グッズを作ってみました。

どれも5分もあれば作れるもので、こういったちょっとした知識もいざというときには役に立つのだと感じました。

この後参加者もポンチョやマスク、スリッパを作成。意外と簡単!

 

○ツボタメモ

私自信学生時代から水害の復興災害現場に行くこともあり、また東日本大震災の復興支援に岩手に行っていたこともあり、災害現場の埃っぽさや消毒剤と下水の上がったきつい臭いを思い出しながらお話を聴いていました。ちょうど半年前には大阪北部地震でタンスを止めていた突っ張り棒がずれかけていたり、情報が錯綜していたことも経験していたため今回経た情報はいざというときに役立てたり、知人・友人にも伝え広めていかねばと感じた。そして東北を忘れないためにも、まずはイベントを通じて現状を知ることも一つ非日常を日常にとどめておく工夫なのかもしれないなと思う機会でした。

(コーディネーター坪田)

【神戸ソーシャルセミナーwith環境経営(2018.12.26)】

「つくる責任 つかう責任」─環境経営─

 神戸ソーシャルセミナー12月のテーマは「つくる責任 つかう責任」。第三回目は神戸大学大学院経営学研究科・神戸大学経営学部の國部克彦先生をお招きし、環境と企業活動の関わりについて教えていただきました。

○CSRとSDGs

 CSR(Corporate Social Responsibility)「企業的責任」は人権を守る、環境を破壊しない、地域社会に貢献するといった、組織に社会への影響を考慮した上での活動を促すもので、2000年にEUが政策的に採用したものが始まりだそうです。その課題は多く、中でもSCP(Sustainable Consumption and Production)「持続可能な生産と消費」を今の経済構造のなかで行うのはほぼ不可能だといいます。利益を求める組織が「必要な分だけ買う」ことを推奨するはずがないからです。

 そこに2015年、SDGsが採択されます。CSRとSCPも含まれたものです。これによって対象や目標は明確化され、CSRで生じていた「企業の社会的責任に関する活動は、会社の利益が出た部分から取り組むもの」という意識は緩和されつつあるそうです。「企業活動」と「環境保全」をいかに両立させ、持続可能な社会を築けるかが問われる時代になっています。「SDGs」と「企業」の関わり方で大切なのは一点を深堀することだといいます。17つの項目は全て「課題である」ということを念頭におき、マネジメントそのものを考えてゆく重要性をおっしゃっていました。

○環境からみる経済。

 環境の視点でのロスは「廃棄されるもの」ですが、経済の視点では「売れていないもの」となります。この差異を埋めるためにも「環境と経済の同軸化」が必要だといいます。マテリアルフローコスト会計(MFCA)はそのための主要手段だそうです。

 セミナーではキャノンでの導入事例を挙げて説明してくださいました。この計算方法は「材料」に注目した原価管理を目的としたもので、加工する前の「原材料費+加工費」から「廃棄物」の値段を割り出す手段です。これによって経済的な面で「ゼロ円」とされていた廃棄物に環境的ロスとしての金額評価が行われ、どのくらいの無駄があるのか可視化する事が可能だといいます。

更にこの「ロスの金額」は「3R」の中でも「Rduce」に注目することにつながります。生産プロセスへの投入(原材料など)をいかに減らしていくか、問題を根本的なところから解決するきっかけになるといいます。しかし他二つ「Reuse」「Recycle」に比べて企業の本業に影響を与えるため難しい部分があり、策を考えてゆく必要もあるそうです。

○企業とSDGs

『SDG Compass』とは企業に向けられたSDGsの行動指針です。「SDGsを理解する」「目標を設定する」「経営へ結合する」など全部で5つのステップからなります。それぞれ細かく内容が書かれていますが、このSDGコンパスでは利益やコストなど会計的に具体的な企業活動にどう落とし込むかについては触れられていないといいます。そこでコンパスの内容にプラスして「マテリアルフローコスト計算」のようなコストや利益の情報を取り入れ、SDGコンパスをより具体的なものにしていくことが重要であるとおっしゃっていました。

○いち学生の所感。

 今回のお話を聞いて「ロス」が環境面と経済面で異なるという話が印象に残りました。前回のセミナーで「食品ロス」の話を聞いたばかりだったこともあり、食品ロスも経済面から言えばロスにならないという点に関心を持ちました。私の経済についての知識は高校の授業での「政経」くらいだったのですが、授業で学んでいたような「利益を追求する」という面だけではなく、「環境保護」からみる経済もあるのだという新しい側面を知ることができ勉強になりました。今回初めて経済について面白いと感じ、「経済は難しいもの」という偏見が自分の中にあったことに気づきました。「知ろうとすること」がいかに大切か再確認しました。(学生ライター関口)

【神戸ソーシャルセミナーwith食品ロス(2018.12.19)】

「つくる責任 つかう責任」─食品ロス─

 神戸ソーシャルセミナー12月のテーマは「つくる責任 つかう責任」。第二回目は循環経済学を専門とされ、NPO法人ごみじゃぱんの代表も務める神戸大学大学院経済学研究科の石川雅紀先生にお越しいただき「食品ロス問題」についてお話していただきました。

○NPO法人ごみじゃぱんの活動

 NPO法人ごみじゃぱんは2006年に創立されました。食品ロスの問題を扱う前は「包装」の廃棄を減らそうと、現在でも続いている活動「減装(へらそう)ショッピング」をメインに行ってきました。また「企業で新商品が出たことにより廃棄されてしまう旧製品」に新たな価値をつけて販売する「リバリュー」という活動も行っていたそうです。

『NPO法人ごみじゃぱん』〈 https://gomi-jp.jimdo.com/ 〉

○食品ロスについて

 食品ロスとは「本来食べることができた食品が廃棄されること」を意味します。世界での食品ロスは全体の3分の1とされ、その内訳は先進国では「消費段階」、途上国では「生産段階」が著しいといいます。何故そのようなことが起こるのか説明してくださいました。

○食品ロスの原因

 途上国の食品ロス「ポストハーベスト・ロス」について。直訳すると「収穫後のロス」となります。これは途上国で「段ボールやプラスチック容器などが供給されない」「収穫したものを保管しておく倉庫がない」ということから起こるそうです。せっかく収穫したものも輸送状態や保存環境の悪さからすぐに傷んでしまい、廃棄せざるを得なくなります。対して先進国の食品ロスは「デマンドドリブン・ロス」と呼ばれ、売れ残りや返品、食べ残しなど消費段階でおこるロスが問題視されています。

○先進国と食品ロス

 日本での食品ロスは世界の食料援助量を上回っているといいます。日本のエンゲル係数が13%なのに対し、途上国のある国では約59%。収入のほとんどを食に費やす「生きるため」の食料を捨てるということはまずありえません。しかし日本を含めた先進国ではものの値段も安く、途上国に比べれば食品に対して「貴重なもの」という意識は低い傾向にあります。これが「消費段階」でのロスが多い原因のひとつになっているそうです。

○日本における食品販売

 お店での売れ残り商品の廃棄も「消費段階」でのロスに深刻な影響を与えているといいます。日本では「3分の1ルール」「3分の2残し」という、納品の際製造日から3分の1を過ぎたら商品を受けとらない、販売期限は賞味期限の3分の2の時点までというものがあります。農林水産省がこの3分の1を2分の1に変更したらどのような影響がおこるのか調査したところ、「返品は減る」という結果になったといいます。しかし現状は変わらず、それどころか「賞味期限を延ばす」という策が広がっているといいます。根本的な問題は今も変わっていません。

○フードドライブ

 「フードドライブ」とは家で余っている食品を持ちより、それらを必要としている人々に寄付する取組です。食品廃棄の削減だけではなく誰かを支援することにもつながる活動となっています。石川先生はこれから進めるべき取組であるとおっしゃっていました。しかし「消費者は匿名で責任を果たすことが困難」「関係者が多く複雑化される」など課題も多く、解決策が必要とされています。

  • 小学生から社会人まで幅広い年齢の方におこし頂きました!

○食品ロスは世帯によって異なる

 食品ロスにおいて「手つかず食品」の割合が高い世帯は大家族だといいます。一度に多くの食品を買う傾向にあるため在庫の管理がおろそかになり、賞味期限を切らしてしまう傾向にあります。賞味期限が長いものを買う傾向にある人も手つかず食品のロスが多く、在庫管理の重要性をおっしゃっていました。また、売られているお惣菜の量が多すぎたり、一人暮らしではなかった時の量を作ってしまうなどの理由から「食べ残し」は高齢者のひとり暮らしに多いそうです。

このようにそれぞれの世帯によって食品ロスの傾向は異なります。まずは自身の「食品廃棄」の傾向を理解していることが大切です。現在では神戸市とNPO法人ごみじゃぱんが共同となって「食品ロスダイアリ―」という食品ロスを管理するためのアプリもつくられています。

『食品ロスダイアリー』〈 https://gomi-jp-foodloss.com/ 〉

○いち学生の所感。

 今回生活する上でどのくらい自分が食品を廃棄しているのか考えさせられました。例えば野菜の切り落とした部分や外で飲み切れなかったコーヒーなど、もったいないとは思いつつ「自分が捨てる量なんて限られている」と思っていました。しかしそれも長い期間で考えれば大きな数字になりますし、何よりも事前に防げることであるということを認識しました。食品を取り込むことにばかりに気をとられ、その後のことはあまり深く考えていなかったように思います。今回石川先生から食品に対する「別角度の視点」を教わりました。それは本来別の角度などではなく、当たり前に考えなければいけなかったことであるのですが、私にとって「食品ロス」の話題は新鮮でありました。消費行動は「自身以外への影響」にも目を向ける必要があると気づかされ、「生活と食品」「私自身と食」について改めて考えなおすきっかけとなりました。(学生ライター関口)

【神戸ソーシャルセミナーwithフェアトレード(2018.12.12)】

「つくる責任 つかう責任」─フェアトレード─

 神戸ソーシャルセミナー12月のテーマは「つくる責任 つかう責任」第一回目の今回はフェアトレードに力を入れる現役大学生、高松秀徒さんをお招きしフェアトレードの現状や課題などについて教えていただきました。

○高松秀徒さんについて。

 高松さんは現在神戸大学 国際人間科学部 環境共生学科で学業に励むかたわら、神戸大学NGO「PEPUP」に所属しフェアトレードの活動にも力をいれています。

 「Fairで連想するものはなんですか?」そんな問いかけから始まった今回、参加者と積極的に意見交換をおこないながらの一時間半となりました。

○フェアトレードとは?

 フェアトレードとは「公正」を一番に考える貿易のことです。受けてきた教育や経済格差などから生じる能力の差、国際的にみた国の状況や生産力の差などがあるにも関わらず、同じ資本主義の世界で競争させられることは「公正」とはいえません。その「アンフェア」を考えていくのがフェアトレードの意義であり、一番の目的だといいます。

○なぜ「フェアトレード」を行う必要があるのか。

 世界的にも有名な大企業に雇われているひとたちを例にあげて説明してくださいました。フィリピンで企業への輸出のために栽培されているパイナップル。そこで働くひとびとは「farmer」ではなく賃金労働者を意味する「worker」とよばれているそうです。育てた果物をお金にしているわけではなく、あくまで「労働力」をお金に変えているのです。この「雇い雇われる」ことによって資本主義的関係が形式上は成り立っています。しかしプランテーションで働く労働者は一日約250円という現地でハンバーガーひとつ買えるかどうかの賃金で働き、基本的人権としての生活ができない状況にあるといいます。生きてゆくための労働に「人間らしさ」を奪われていては意味がありません。

○PEPUP活動。

 次に大企業における労働のアンフェアに対し、PEPUPのパートナー団体でのパイナップルを事例に考えていきました。大企業の行っているものとは根本的な考え方が異なる点がポイントとなるそうです。資本主義社会における上下関係ではなく、対等に取引をする。生産者に支払われる賃金の改善や、対話を通じた取引をこころがけるため生産者に「選択する機会」が増えるのだといいます。

 また、フェアトレードにおける10原則には「経済的弱者である生産者に機会を与える」にはじまり、「環境保全」や「ジェンダー平等」などもあります。高松さんはこの原則には広義にとらえればSDGs17の目標すべてが含まれているとおっしゃっていました。

○フェアトレードにおける矛盾。

 各商品、または認証を受けた団体にはフェアトレードの原則を守っている証拠としてラベルが貼られています。このラベルを受け取るためにはWFTO(World Fair Trade Organization)の監査が必要です。しかし、このWFTOの監査にかかる費用はすべて生産者側の負担となるそうです。現地まで行く航空券、すべての生産者を訪れる費用、宿泊費。経済的に貧しい人々を救うはずの活動であるのに、このような巨額の負担を背負わせている現状があるといいます。

 このような問題から独自で現地共通のラベルの作成もおこなわれているそうです。コストはかかりません。しかし正式な監査を通していない商品にラベルをつけることは「何のためのラベルであるのか」という疑問も残ります。しかし消費者にとっては「フェアトレードを意味するもの」は必要であり、この件はかなり不透明で課題も残ります。

○平和とは?

 「戦争がない状態」を「平和」とすることは消極的平和とよばれています。戦争がなくとも暴力問題、女性差別、貧困などがある状態では社会的に「平和」とは言い切れないからです。日々の消費活動での商品が、ある種の「暴力」によって製造されていたら、またそれを知る可能性はどのくらいでしょうか。高松さんはフェアトレードの「フェア」は生産者に対してであるのか、消費者に対してであるのか「フェア」の範囲を考えていくが大切だといいます。「ラベルの乱立」問題のようにフェアとうたわれているものにも矛盾が生じていたりします。常に疑いの視点をもって、たくさんの選択肢を持ち消費活動を行っていくことが重要であるとおっしゃっていました。

 生産者と消費者の距離を近くすること。フェアトレードを通してお互いを考える状況が生まれることが理想であり、実際には会っていなくても「対話」のように「相手の立場になる」「気持ちを掬う」ということを行ってゆくことが平和への第一歩でもあり、消費者の目指すべきところだといいます。

  • 当日多くの学生が参加してくださいました!

○いち学生の所感。

 今回セミナーで「あなたの思う平和とはなんですか?」と問われた際、私はノートの端に「朝ふとんの中で目がさめること」と書きました。社会では日々多くのことが目まぐるしく変わっていて、喜ばしいできごともあれば、痛ましい事件もあります。自分が平凡な朝をむかえたとき、誰かはどうしようもなく悲しい夜をすごしているかもしれません。今回「すべてはできない、どれを掬うか。どこを見つめるか」ということを再確認しました。

「フェアトレード」を選び「消費活動」というものを通して、実際に見ることのできる範囲の向こう側へ思考を巡らせる。「選び」「見つめ」「考える」。平和という漠然としたものを身近にするために必要なことだと考えます。相手について考えることが自分の立場を明確にし、次にすべき行動を知るきっかけにもなると感じました。(学生ライター関口)